疾患解説
フリガナ | デンセンセイタンカクキュウショウ |
別名 | |
臓器区分 | 感染性疾患 |
英疾患名 | Infectious Mononucleosis |
ICD10 | B27.9 |
疾患の概念 | Epstein-Barr virus(ヒトヘルペスウイルス4型)の感染で引き起こされる急性感染症で、思春期以降の感染では半数が発症するとされている。幼児期の感染では一般的に無症状である。唾液または性行為で感染し、数ヶ月に亘ってウイルスを放出する。感染初期に上咽頭で増殖したウイルスはB細胞に侵入し、感染症に反応するCD8陽性T細胞から発生した異型リンパ球が末梢血中に出現する。初感染後、EBVは宿主内のB細胞に終生残り、症状を伴わないまま中咽頭から間欠的に排出される。EBV血清反応陽性の健康成人の15~25%は中咽頭分泌物中にウイルスが検出される。EBVは、バーキットリンパ腫、易感染性患者で見られるB細胞腫瘍、および上咽頭癌と関連が認められるので、原因ウイルスの可能性が高い。 |
診断の手掛 | 殆どの幼児で、EBVの初感染は無症状に経過し、伝染性単核球症の症状は、より年長の小児および成人で見られる。感染後、30~50日の潜伏期を経て、易疲労感が数日から1週間以上続いた後に、午後または夕方がピークの発熱、有痛性の咽頭扁桃炎、頸部リンパ節腫脹が見られたら本症を疑う。頸部リンパ節腫脹は必須であるが、腋下、鼠蹊部リンパ節も腫脹することが多い。半数以上の患者で、発症10~21日後に脾腫を認めるが、無理な触診は脾臓破裂の危険があるので注意する。 |
主訴 |
易疲労感|Fatigue 咽頭痛|Pharyngodynia 嚥下障害|Dysphagia 悪寒戦慄|Chill with shivening 肝腫大|Hepatomegaly 感冒様症状|Symptomes of common cold 高熱|High fever/Hyperthermia 食欲不振|Anorexia 頭痛|Headache/Cephalalgia 全身倦怠感|General malaise/Fatigue 発熱|Pyrexia/Fervescence/Fever 脾腫|Splenomegaly 発疹|Eruption/Exanthema リンパ節腫脹|Lymphadenopathy |
鑑別疾患 |
A型肝炎|Hepatitis A EBウイルス感染症|Epstein-Barr Virus Infection 悪性リンパ腫|Malignant Lymphoma 咽頭炎 肝炎 頸部リンパ節炎 血小板減少症|Thrombocytopenia 喉頭蓋炎 高尿酸血症 心筋炎|Myocarditis 腸チフス|Typhoid Fever ツツガムシ病 脳炎|Encephalitis 敗血症|Sepsis 風疹|Rubella Infection 扁桃腺炎 流行性耳下腺炎|Mumps サイトメガロウイルス感染症|Cytomegalovirus Infection ヒトヘルペスウイルス-6感染症 エイズ/HIV感染症|Acquired Immune Deficiency Syndrome(AIDS) 急性白血病|Acute Leukemia 成人発症スティル病 ウイルス性脳炎|Viral Encephalitis 麻疹|Measles ジフテリア|Diphtheria トキソプラズマ症|Toxoplasmosis |
スクリーニング検査 |
Alkaline Phosphatase|アルカリホスファターゼ/アルカリ性ホスファターゼ [/S] Alanine Aminotransferase|アラニンアミノトランスフェラーゼ/グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ [/S] Amylase|アミラーゼ [/S] Aspartate Aminotransferase|アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ/グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ [/S] Bilirubin-Total|総ビリルビン/ビリルビン [/S] Cholesterol|総コレステロール/コレステロール/コレステリン [/S] Erythrocyte Sedimentation Rate|赤血球沈降速度 [/B] Hematocrit|ヘマトクリット/赤血球容積率 [/B, /B] Hemoglobin|ヘモグロビン/血色素量 [/B, /B] Immunoglobulin A|免疫グロブリンA [/S] Immunoglobulin G|免疫グロブリンG [/S] Immunoglobulin M|免疫グロブリンM/マクログロブリン [/S] Leucine Aminopeptidase|ロイシンアミノペプチダーゼ [/S] Lactate Dehydrogenase|乳酸デヒドロゲナーゼ [/S] Leukocytes|白血球数 [/B, /B] Lymphocytes|リンパ球 [/B] Monocytes|単球 [/B] Neutrophils|好中球 [/B] Rheumatoid Factor|リウマチ因子測定/RAゼラチン凝集反応/リウマチ因子定量 [/S] VDRL|性病研究所梅毒検査法/VDRL法 [Positive/S] γ-Globulin|γ-グロブリン [/S] γ-Glutamyltranspeptidase|γ-グルタミルトランスペプチダーゼ/γ-グルタミルトランスフェラーゼ [/S] |
異常値を示す検査 |
Adenosine Deaminase|アデノシンデアミナーゼ [/S] Alkaline Phosphatase Isoenzymes|アルカリホスファターゼアイソザイム/ALPアイソザイム [/S] Anti-Mitochondrial Antibodies|抗ミトコンドリア抗体 [/S] Antibody Titer [/S] Antinuclear Antibodies|抗核抗体 [/S] BSP Retention|BSP test/ブロムサルファレイン試験 [/S] Cold Agglutinins|寒冷凝集反応/寒冷血球凝集反応 [/S] Epstein Barr Virus Antibodies|EBウイルス抗体/抗EBウイルス抗体 [Positive/S] Heterophil Antibody|異好抗体 [/S] Interferon-γ|インターフェロン-γ [/S] Interleukin-6|インターロイキン-6 [/S] Isocitrate Dehydrogenase|イソクエン酸脱水素酵素/イソクエン酸デヒドロゲナーゼ [/S] Lactate Dehydrogenase Isoenzyme-5|乳酸デヒドロゲナーゼアイソザイム/LDアイソザイム [/S] Lactate Dehydrogenase Isoenzymes|乳酸デヒドロゲナーゼアイソザイム/LDアイソザイム [/S] Lymphocyte T-Cells|T細胞 [/B] Monospot Test|モノスポットテスト [Positive/S] Neopterin|ネオプテリン [/S] Weil-Felix Reaction|ワイル・フェリックス反応 [Positive/S] β2-Microglobulin|β2-ミクログロブリン/β2-マイクログロブリン [/S] |
関連する検査の読み方 |
【CBC】 リンパ球の絶対的、相対的増加がみられ、10%以上の大型の異型リンパ球を伴う。血小板は感染初期に軽度の減少を認める。感染後1週は好中球の減少があるが、7~10日にリンパ球増加により白血球が10,000~30,000/μLに達する。好酸球の増加もしばしば認る。抗i特異抗体による溶血性貧血がみられることもある。 【T細胞】 増加する。T細胞はその成熟・分化に胸腺が重要な役割を果たしているリンパ球で、細胞性免疫機能の中心的役割を持つ。生理機能はヘルパーT細胞として免疫応答の活性化、サプレッサーT細胞として免疫応答抑制やキラーT細胞としてウイルス感染細胞や癌細胞の排除などであるる。臨床的にはヘルパー活性、サプレッサー活性、キラー活性などを調べる機能検査により、種々の疾患への関与が評価出来る。 【リンパ球サブセット】 T細胞は増加し、B細胞は基準範囲内である。リンパ球には細胞免疫を担当するT細胞と体液免疫を担当するB細胞の二つのサブポピュレーションがあり、この二者の比率を検査するのがT細胞・B細胞百分率である。この検査は自己免疫疾患、免疫不全症、血液疾患、アレルギー疾患などの診断や治療効果の判定に有用である。 【CD4:CD8比】 CD8が増加するのでCD4:CD8比は低下する。Tリンパ球はCD4(ヘルパー/インデューサー)を表出するものと、CD8(サプレッサー/細胞障害性)を表出するものに分けられる。CD4陽性Tリンパ球は、細菌感染や膠原病など免疫系が活動状態にあると増加する。一方、CD8リンパ球は末梢血中ではCD4リンパ球と相補的な関係にあり、両者は恒常性を保っている。免疫不全症や自己免疫疾患では、この恒常性が崩れるためCD4/CD8の比をとり病態を判断する。 【AST】【ALT】 アミノトランスフェラーゼ値の上昇(正常の約2~3倍,3~4週間かけて正常に戻る)は約95%の患者に発生する。黄疸またはより重度の酵素上昇があれば、肝炎の他の原因を確認する。 【ビリルビン】 ビリルビンと肝酵素の乖離を認める。多くの症例でAST、ALT、ALPが中等度に増加するが、ビリルビン値は2mg/dL以下である。軽度の肝炎像が高頻度に認められる。 【LD:AST比】 20以上である。 【膠質反応】 ZTTが基準範囲上限以上である。 【抗EBウイルス抗体】 EBウイルスは一般には唾液を介して伝播するが。新生児では母親からの移行抗体によるが、移行抗体が消失する生後6ヶ月頃から初感染が成立する。2~3歳までには70%が感染し、通常は不顕性感染のまま抗体を獲得するので、成人の抗体陰性は少ない。EBV感染症の診断はEBV特異抗体の検出により可能となるので、VCA、EA、EBNAに対する抗体価を測定する。VCA-IgM抗体は急性期のみ、EADR-IgG抗体は比較的早期に認められ以後低下、VCA-IgG抗体は終生持続、EBNA抗体は最も遅れ終生持続する。 【抗白血球抗体】 陽性である。 【抗平滑筋抗体】 弱陽性である。 【リウマチ因子】【抗核抗体】 一過性に偽陽性を呈する。 【髄液一般検査】 異型リンパ球が出現する。 【モノスポットテスト】 発症4週間以内に陽性になる。Monospot testはポールバンネル反応と臨床的意義は同じで、異好性凝集素に対する抗原にウマ赤血球を用いる。伝染性単核球症の診断に高い特異性(99%)と感度(86%)があり、しかも短時間で測定出来ることから、高い有用性を持つ。 【Davidsohn吸収試験】 ポール・バンネル反応で陽性となった血清病やフォルスマン抗体を持つ健常者と伝染性単核球症を鑑別するために用いる。ダビッドソン吸収試験はポール・バンネル反応で陽性を示す異好抗体を3種類(P-B抗体、H-D抗体、F抗体)に鑑別するための検査である。臨床的には学童期から青年期に高熱、全身リンパ節腫脹、異型リンパ球増加などの症状を発症した患者に検査する。 【Paul-Bunnel反応】 異好抗体凝集反応が陽性(1:224以上)である。小児と日本人では診断的価値は高くないので、現在はあまり利用されない。伝染性単核球症や血清病ではポール・バンネル抗体、Hanganatziu-Deicher抗体とForssman抗体が出現する。ポール・バンネル抗体は伝染性単核球症の発症後2週目頃から出現する異好抗体で50~80%の患者で陽性となる。ただし、伝染性単核球症は患者血清中の抗EBV IgM抗体価の上昇で診断出来るため、ポール・バンネル反応の臨床的意義は低下している。 |
検体検査以外の検査計画 | |