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疾患解説

フリガナ アナフィラキシー
別名
臓器区分 アレルギー疾患
英疾患名 Anaphylaxis
ICD10 T78.2
疾患の概念 急性で生命を脅かす可能性のある、IgE介在性のアレルギー反応で、侵入した外来物質に対する急激な生体反応の結果として循環器系、呼吸器系、消化器系、皮膚などが広範囲の障害を受ける病態をアナフィラキシー、また循環・呼吸不全に陥る重篤な状態をアナフィラキシーショックという。アナフィラキシーは抗原に感作され、その抗原に特異的なIgEが産生されることで起こる。抗原に再度暴露されると、肥満細胞や好塩基球表面のIgEが抗原と結合し、細胞が活性化され、ヒスタミンなどのメディエータを放出することで発症し急速に進行する、生命にかかわる全身性の反応である。軽症アナフィラキシー:皮膚と皮下組織のみに症状が限定されている。中等症アナフィラキシー:皮膚症状に加え、呼吸器、心血管、消化器への波及を示唆する症状が見られる。重症アナフィラキシー:上記の症状に加え低酸素血症、低血圧、神経症状が見られる。Pao2≦92%、収縮期血圧≦90mmHgになる。
診断の手掛 ペニシリン系薬剤を代表とする抗菌薬、破傷風抗毒素などの異種抗血清、ヨード造影剤などの使用後や蜂の刺傷、ヘビの咬傷やアレルギー反応を引き起こす食物の摂取後、5分以内に血圧低下や呼吸困難を訴える患者を診たら本症を疑う。一刻を争う重篤な疾患なので、検査に頼りすぎることなく、臨床症状から即座に診断を下す。診断は、1.何らかの物質の暴露歴がある 2.喉頭浮腫、気管支攣縮もしくは血圧低下に加えて、明らかなアレルギー症状を認めることで確定される。類似した症状を示す病態として、血管迷走神経反射、過換気症候群、ヒステリー球、遺伝性血管浮腫、カルチノイド症候群、全身性肥満細胞症、詐病などがある。症状は軽度から重度まで様々で紅潮、そう痒、蕁麻疹、くしゃみ、鼻漏、悪心、腹部痙攣、下痢、窒息感または呼吸困難、動悸およびめまいなどがある。ショック、呼吸器症状(呼吸困難、吸気性喘鳴,呼気性喘鳴)、アナフィラキシーの可能性がある複数の症状(血管性浮腫、鼻漏、消化管症状)のいずれかが突然発生し、原因不明の場合は、アナフィラキシーを疑うべきである。医療従事者に原因不明のアナフィラキシー症状が認められた場合はラテックスアレルギーを考える。
主訴 血管性浮腫
呼気性喘鳴
蕁麻疹
意識障害|Memory impaiment
嘔吐|Vomiting
悪心|Nausea
かゆみ|Itching
顔面蒼白|Pallor of face
血圧低下|Blood pressure decreased
口唇のしびれ|Numbness of Lip
呼吸困難|Dyspnea
四肢のしびれ|Sensory disturbance of Extremities
失神|Syncope
しびれ|Numbness
心悸亢進|Cardiopalmus
チアノーゼ|Cyanosis/Cyanopathy
頻脈|Tachycardia
腹痛|Abdominal pain
痙攣
鑑別疾患 血管迷走神経反射
血液製剤投与
造影剤アレルギー
麻薬
NSAIDs過敏症
亜硫酸塩摂取
薬物アレルギー
スクリーニング検査 Albumin|アルブミン [/S]
Alanine Aminotransferase|アラニンアミノトランスフェラーゼ/グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ [/S]
Aspartate Aminotransferase|アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ/グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ [/S]
Creatine Kinase|クレアチンキナーゼ/クレアチンホスホキナーゼ [/S]
Creatinine|クレアチニン [/S]
Erythrocytes|赤血球数 [/B]
Hematocrit|ヘマトクリット/赤血球容積率 [/B]
Protein-Total|総蛋白/血清総蛋白/血清蛋白定量 [/S]
異常値を示す検査 Histamine|ヒスタミン [/U]
Leukotriene E4|ロイコトリエンE4 [/U]
Tryptase|トリプターゼ [/S]
関連する検査の読み方 【AST】【ALT】【CK】
ショックによる心筋虚血で増加する。
【CBC】
血管内脱水により相対的に赤血球数とヘマトクリット値が高値となる。
【総蛋白】【アルブミン】
血液濃縮により総蛋白とアルブミン濃度が相対的に増加する。
【動脈血ガス分析】
アシドーシスと低酸素血症が見られる。
【ロイコトリエンE4】
アレルギーへの関与が疑われる時に測定する。本症では高値である。LTE4はロイコトリエンD4からディペプチダーゼの作用で産生される強力な気管支収縮作用、気道粘液分泌促進、線毛運動抑制作用を持つ物質である。
【トリプターゼ】
マスト細胞由来の、半減期が60~90分の中性プロテアーゼで、肥満細胞が活性化されると血中に放出される。アナフィラキシーのリスク評価、昆虫毒や術後の反応マーカーとして測定される。発症1時間後にピークになり、6時間にわたり検出されることがある。
【24時間尿中Nメチルヒスタミン】
高値になるので診断に有用である。
【誘発物質】
誘発物質として薬剤(β-ラクタム系抗菌薬、インスリン、ストレプトキナーゼ、アレルゲン抽出物など)、食物(ナッツ類、卵、海産物など)、破傷風抗毒素、動物毒、ラテックスなどがある。
【アナフィラキシー様反応】
この反応はアナフィラキシーとは臨床的に鑑別不能で、発症にIgEが関与せず、先行する感作なしに発症する。肥満細胞の直接刺激や補体を活性化する免疫複合体を介して発症し、最も多い誘因は、ヨウ素を含む放射線造影剤、アスピリン、NSAIDs、オピオイド、輸血製剤、免疫グロブリンおよび運動である。
検体検査以外の検査計画 心電図検査、血圧測定、プリックテスト、スクラッチテスト

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