疾患解説
フリガナ | ウィスコット-オールドリッチショウコウグン |
別名 | |
臓器区分 | 膠原病・免疫疾患 |
英疾患名 | Wiskott-Aldrich Syndrome |
ICD10 | D82.0 |
疾患の概念 | X連鎖劣性遺伝形式をとる、B細胞およびT細胞の複合欠損が原因の疾患で、湿疹、再発性感染、血小板減少症を特徴とする。悪性腫瘍、特にEBウイルスによるリンパ腫や急性リンパ芽球性白血病を併発するので、移植をしなければ、小児期を越えて延命することは困難である。B細胞およびT細胞の機能が損なわれているため、化膿性細菌および日和見病原体、特にウイルスおよびPneumocystis jiroveciiによる感染症が起こる。また、水痘/帯状疱疹ウイルスおよびヘルペスウイルスによる感染症もよくみられる。EBウイルスによるリンパ腫および急性リンパ芽球性白血病が、10歳以上の患者の約10%に発生するので注意する。 |
診断の手掛 | 初発症状の血性下痢に続いて再発性呼吸器感染、湿疹、血小板減少による症状を訴える患者を診たら本症を疑う。B細胞およびT細胞の機能異常があるので、Pneumocystis jiroveciiによる感染が初発症状となることが多い。診断は免疫グロブリン濃度、血小板数、血小板容積と好中球走化性、T細胞機能などの白血球機能検査で確定する。E・Bウイルスによるリンパ腫および急性リンパ芽球性白血病が10歳以上の患者の約10%に発症するので注意する。 |
主訴 |
易感染性|Susceptibility to infection 血性下痢|Bloody diarrhea 血便|Bloody stool/Hemorrhagic stool/Hematochezia 下痢|Diarrhea 湿疹|Eczema 紫斑|Purpura 出血傾向|Bleeding tendency/Hemorrhagic diathesis 点状出血|Petechiae |
鑑別疾患 |
リンパ腫 リンパ性白血病 EBウイルス感染症|Epstein-Barr Virus Infection 呼吸器感染症 ニューモシスチス症 |
スクリーニング検査 |
Creatinine|クレアチニン [/S] Immunoglobulin A|免疫グロブリンA [/S] Immunoglobulin G|免疫グロブリンG [/S] Immunoglobulin M|免疫グロブリンM/マクログロブリン [/S, /Platelets] Lymphocytes|リンパ球 [/B] Platelets|血小板 [/B] Protein-Total|総蛋白/血清総蛋白/血清蛋白定量 [/U] Urea Nitrogen|尿素窒素 [/S] |
異常値を示す検査 |
Immunoglobulin E|免疫グロブリンE/非特異的IgE/レアギン抗体 [/S] Lymphocyte Stimulation Test|リンパ球刺激試験/リンパ球芽球化試験/リンパ球幼若化試験 [/B] Lymphocyte T-Cells|T細胞 [/B] Natural Killer Cell Activity|ナチュラルキラー細胞活性/NK細胞活性 [/B] Neutrophil Function|好中球機能検査 [/B] Volume [/Platelets] |
関連する検査の読み方 |
【血小板】 血小板減少が特徴的な疾患である。脾での血小板破壊が亢進しているため、血小板は小さく、欠陥がある。 【CBC】 リンパ腫および白血病を発症するリスクが高いため、白血球分画を伴う血算を通常6カ月毎に行う。 【免疫グロブリン】 IgA,IgEは増加、IgMは減少、IgGは減少または基準範囲内である。 【T細胞数】 減少する。T細胞はその成熟・分化に胸腺が重要な役割を果たしているリンパ球で、細胞性免疫機能の中心的役割を持つ。生理機能はヘルパーT細胞として免疫応答の活性化、サプレッサーT細胞として免疫応答抑制やキラーT細胞としてウイルス感染細胞や癌細胞の排除などであるる。臨床的にはヘルパー活性、サプレッサー活性、キラー活性などを調べる機能検査により、種々の疾患への関与が評価出来る。 【NK細胞】 細胞障害性は低下する。ナチュラルキラー細胞は抗原感作や組織適合性抗原複合体の影響を受けずに、ウイルスや腫瘍細胞などを非特異的に障害するリンパ球系細胞で、表面マーカーとしてCD2、CD56、CD57、CD16aが発現している。この細胞はウイルス感染の初期の防御、腫瘍細胞の障害作用、真菌や細菌の殺菌など多彩な生理作用がある。臨床的にはNK細胞の機能異常を疑う疾患、悪性腫瘍、自己免疫疾患、免疫不全症などで測定される。 【リンパ球刺激試験】 PHA,ConA共に低値である。薬剤によるアレルギーを疑う患者のリンパ球に、原因と考えられる薬剤を加えて培養すると、もし患者のリンパ球の中に薬剤を異物と認識する感作リンパ球が存在すれば、感作リンパ球は薬剤の刺激を受けて幼若化する。この検査はアレルギー反応のうち細胞媒介型(IV型)アレルギー、すなわち肝障害、接触皮膚炎などにどの薬剤が関与しているかを知るために行う。 【好中球機能検査】 遊走能の異常が見られる。顆粒球機能検査は好中球の持つ貪食能、殺菌能などの生体防御作用をフローサイトメトリーを用いて測定するもので、遺伝的要因による先天性貪食能障害や殺菌能障害の診断に用いる。 【多糖類抗原】 血液型抗原AやBなどの多糖類抗原に対する抗体が選択的に欠損していることもある。 【遺伝子】 診断確定に遺伝子変異解析波有用である。第1度近親者には遺伝子検査が推奨される。 |
検体検査以外の検査計画 |