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疾患解説

フリガナ EBウイルスカンセンショウ
別名
臓器区分 感染性疾患
英疾患名 Epstein-Barr Virus Infection
ICD10 B33.8
疾患の概念 ヒトヘルペスウイルス4型が起因ウイルスで、伝染性単核球症、日和見リンパ腫、Hodgkinリンパ腫、Burkittリンパ腫、上咽頭癌、慢性活動性EBV感染症などを発症する。EBVは初感染後には宿主内の主にB細胞に終生残存し、症状を伴わないまま中咽頭から間欠的に排出される。このウイルスは、EBV血清反応陽性の健康成人の15~25%で中咽頭分泌物中に検出される。3歳迄に90%以上が初感染を受けるが、殆どは不顕性感染である。無症候性血清陽性の個体の90%以上が、唾液中にウイルスを排出しているとの報告があり、成人はキスによって感染が成立することが知られている。
診断の手掛 唾液との接触後、30~50日の潜伏期を経て数日から数週間疲労感が続き、発熱、咽頭炎、扁桃炎、頸部リンパ節腫脹、肝腫大、脾腫を呈する患者を診たら本症を疑う。初感染が学童期以降の場合は、伝染性単核球症を発症する確率が高くなるので、問診を慎重に行う。若年成人の75%は、伝染性単核球症を発症するとの報告がある。脾破裂、神経学的症候群、血液系の異常などの重度の合併症が時に起こるので注意する。また、診断の際の安易な脾臓触診も脾破裂の危険があるので注意する。
主訴 易疲労感|Fatigue
咽頭痛|Pharyngodynia
嚥下障害|Dysphagia
肝腫大|Hepatomegaly
感冒様症状|Symptomes of common cold
顔面神経麻痺|Facial paralysis/Facial palsy
高熱|High fever/Hyperthermia
食欲不振|Anorexia
頭痛|Headache/Cephalalgia
全身倦怠感|General malaise/Fatigue
発熱|Pyrexia/Fervescence/Fever
脾腫|Splenomegaly
発疹|Eruption/Exanthema
リンパ節腫脹|Lymphadenopathy
鑑別疾患 溶血連鎖球菌感染症
Burkittリンパ腫
悪性リンパ腫|Malignant Lymphoma
咽頭癌
エイズ/HIV感染症|Acquired Immune Deficiency Syndrome(AIDS)
サイトメガロウイルス感染症|Cytomegalovirus Infection
自己炎症性症候群
腺熱リケッチア症
伝染性単核球症|Infectious Mononucleosis
トキソプラズマ症|Toxoplasmosis
扁桃腺炎
リステリア症
スクリーニング検査 Alanine Aminotransferase|アラニンアミノトランスフェラーゼ/グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ [/S]
Aspartate Aminotransferase|アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ/グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ [/S]
Bilirubin-Total|総ビリルビン/ビリルビン [/S]
Ferritin|フェリチン [/S]
Lymphocytes|リンパ球 [/B]
Platelets|血小板 [/B]
異常値を示す検査 CD3|CD3 [/S]
CD4|CD4 [/S]
CD8|CD8 [/S]
Cryoglobulins|クリオグロブリン [Positive/S]
Deoxythymidine Kinase Activity|デオキシチミジンキナーゼ活性/チミジンキナーゼ活性 [/S]
Epstein Barr Virus Antibodies|EBウイルス抗体/抗EBウイルス抗体 [/S]
Epstein-Barr Virus Antigen|EBウイルス抗原 [/S]
Epstein Barr Virus-Early Antibody|EBV-EA-DR抗体/EBウイルス抗EA-DR IgG/抗EBA-EA-DR抗体 [/S]
Epstein Barr Virus-Associated Nuclear Antigen Antibody|EBNA抗体/抗EBNA抗体 [/S]
Epstein Barr Virus-Viral Capsid Antigen Antibody|EBV-VCA抗体/EBウイルス抗VCA IgG/抗EBV-VCA抗体 [/S]
Heterophil Antibody|異好抗体 [/S]
関連する検査の読み方 【CBC】
感染第1週に白血球減少と顆粒球減少がみられる。その後、白血球数はリンパ球の増加に伴い10,000~20,000/μLに増加し、50%の症例で血小板が中等度減少する。リンパ球増加のピークは7~10日で見られ、1~2ヶ月続く。しばしば杆状球が増加し、5%以上の好酸球増加が見られる。汎血球減少が見られたらEBV関連性血球貪食症候群の発症を考える。溶血性貧血は稀である。
【血液像】
異型リンパ球が増加し、リンパ球:単球比は60%以上になる。そのうちの10~20%以上は異型リンパ球である。
【フェリチン】
著増する。
【肝機能検査】
殆どの症例でAST、ALT、ALP、γ-GTが増加する。時にビリルビンが増加する。
【クリオグロブリン】
ウイルス疾患で出現するクリオグロブリンII型を認める。
【EBウイルス抗原】
EBウイルスは熱帯アフリカの小児に多発するBurkitリンパ腫の培養細胞から分離されたウイルスで、日本では大部分が2歳以内に感染し成人の80~90%は抗体を持っている。感染によりBurkitリンパ腫、上咽頭癌、鼻腔リンパ腫、伝染性単核球症などを発症する癌ウイルスである。
【EBウイルス抗体】
原因ウイルスであるVirus Capsid Antigen(VCA)、Early Antigen(EA)、Epstein-Barr Nuclear Antigen(EBNA)に対する抗体価測定は診断的価値が高い。このうちVCA抗体とEBNA抗体は終生持続するが、EBNA抗体は個人差が強く、陰性化することがある。
【EBNA抗体】
EBウイルス抗原のうちEBV核内抗原に対する抗体で、EBウイルスの潜伏感染の際に発現し、抗体は生涯にわたり持続する。臨床的には発熱、咽頭痛、肝機能障害などで伝染性単核症感染を疑う場合の確定診断、慢性活動性EBV感染症などに用いる。
【EBV-EA-DR抗体】
EBウイルス抗原のうち、早期抗原に対する抗体で、IgGとIgAの2種を測定する。臨床的にはEBV感染症とEBV関連の腫瘍を疑う場合に測定する。
【EBV-VCA抗体】
EBVの外殻抗原に対する抗体で抗IgG、抗IgM、抗IgA抗体を測定する。臨床的には発熱、咽頭痛、肝機能障害などの症状でEBV感染やEBV関連腫瘍が疑われる時に測定する。また、IgM抗体が陽性なら伝染性単核球症の確定診断となる。
【IgG EBV-VCA抗体】
抗体価は終生高い状態を維持し、急性の感染と過去の感染を区別できない。
【デオキシチミジンキナーゼ活性】
細胞質に存在するサイトゾル型が高値になる。TKは細胞のDNA合成期に上昇するため、細胞再生、ウイルス感染細胞など細胞回転が早くDNA合成の盛んな細胞で高い。この性質を利用し各種悪性腫瘍の細胞増殖の状態、治療効果判定などの指標として用いる。臨床的には各種悪性腫瘍、ウイルス感染症で高値になるが疾患特異性はない。
【ポール・バンネル反応】
小児と日本人では陽性反応が出にくいため、診断的価値は低い。
【PCR】
肝生検組織や血液からEBVの核酸検出が可能で、慢性活動性EBV感染症の診断に有用である。
【CD3】【CD4】【CD8]
CD3とCD8は増加、CD4は減少する。
【CD4:CD8比】
CD3とCD8が増加し、CD4は減少するので、CD4:CD8比は低下する。
【Monospot test】
異種親和性抗体で5歳未満では50%に出現するが、成人では90%の出現率である。感染が疑われるのに陰性なら、7~10日後に再検査が望ましい。4歳以下の小児では異種親和性抗体が検出されない可能性があるので、EBVカプシド抗原に対するIgM抗体を測定する。
【梅毒STS法】
症例の10%が偽陽性になる。
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