疾患解説
フリガナ | バンパツセイヒフポルフィリンショウ |
別名 | 遅発性皮膚ポルフィリン症 |
臓器区分 | 代謝性疾患 |
英疾患名 | Porphyria Cutanea Tarda(PCT) |
ICD10 | E80.1 |
疾患の概念 | PCTは、比較的頻度の高い肝性ポルフィリン症で、主に皮膚と肝が侵される。病因に鉄が重要な役割を果たしている疾患で、過剰な日光暴露、アルコール、エストロゲン、C型肝炎(85%が合併)、HIV感染などが誘因になり、皮膚の露光部に水疱を形成しやすい脆弱性がみられる。患者は、肝疾患の発生頻度が高い。この疾患は、ヘム生合成経路の酵素であるウロポルフィリノーゲン脱炭酸酵素の遺伝的欠損が原因で、肝に蓄積したポルフィリンが皮膚に運ばれ、日光過敏症を引き起こす。I型は散発性で、脱炭酸酵素欠損は肝に限定され、中年以降に発症し、遺伝的素因はない。II型は家族性で、脱炭酸酵素欠損が赤血球を含むすべての細胞で生じ、常染色体優性遺伝形式で遺伝し、I型よりも早期に、時に小児期に発症する。有病率はI型PCTよりも低い。 |
診断の手掛 | 露光部の皮膚脆弱性や水疱形成を訴える患者を診たら、本症を疑う。水疱は緊満性で自然に、又は小外傷後に生じる。有病率は散発性PCTよりも低い。酵素の欠損は、赤血球を含む全ての細胞で見られる。日光曝露は、時に、紅斑、浮腫、搔痒を伴うこともある。充血性結膜炎が見られることもあるが、それ以外の粘膜は正常である。皮膚に色素減少または色素沈着や、顔面の多毛症、偽性硬化性変化などが見られる場合もあるので注意する。 |
主訴 |
かゆみ|Itching 紅斑|Erythema/Rubedo 色素沈着|Pigmentation/Chromatosis 水疱|Bulla/Blister 浮腫|Edema/Dropsy |
鑑別疾患 |
異型ポルフィリン症 遺伝性コプロポルフィリン症 |
スクリーニング検査 |
ALT|アラニンアミノトランスフェラーゼ/グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ [/S] AST|アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ/グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ [/S] Hematocrit|ヘマトクリット/赤血球容積率 [/B] Hemoglobin|ヘモグロビン/血色素量 [/B] MCH|平均赤血球ヘモグロビン量 [/B] MCV|平均赤血球容積 [/B] |
異常値を示す検査 |
BSP Retention|BSP test/ブロムサルファレイン試験 [/S] Coproporphyrin|コプロポルフィリン [/Feces] Coproporphyrin I|コプロポルフィリンⅠ [/Feces] Isocoproporphyrin|イソコプロポルフィリン [/Feces] Porphyrins,Total|ポルフィリン [Positive/U,/P] Porphobilinogen|ポルフォビリノゲン [/U] Porphyrinogens [/U] Protoporphyrin|プロトポルフィリン [/Feces] Urobilinogen|ウロビリノゲン定性(尿) [/U] Uroporphyrin|ウロポルフィリン [/Feces] Uroporphyrin I|ウロポルフィリンⅠ [/U] Uroporphyrinogen Decarboxylase [/RBC] β-Hexosaminidase|β-ヘキソサミニダーゼ [/S] δ-Aminolevulinic Acid|δ-アミノレブリン酸(尿)/5-アミノレブリン酸 [/U] |
関連する検査の読み方 |
【ポルフィリン】 皮膚病変をもたらす、全てのポルフィリン症で増加する。ポルフィリンはヘムの前駆物質で、主として肝と造血細胞でグリシン+サクシニルCo→δ-アミノレブリン酸(ALA)→ポルフォビリノゲン(PBG)→ウロポルフィリン(UP)→コプロポルフィリン(CP)→プロトポルフィリン(PP)→ヘムの順に合成される。このうちALAとPBGを前駆物質、UP、CP、PPを合わせてポルフィリン体と呼んでいる。このうちUPは尿中に、CPは尿と胆汁中に、PPは胆汁中に排泄される。ヘム合成経路に障害があると、ALA、UP、CP、PPがさまざまな組み合わせで尿中に排泄される。ポルフィリン体は生理活性を持たないが、体内に蓄積すると日光過敏症、肝障害、神経障害などのいわゆるポルフィリン症の原因となる。臨床的には尿中のポルフィリン体と前駆物質を測定することでポルフィリン症のスクリーニングに用いる。 【ウロポルフィリン】 尿中で増加していればPTCを示す。尿中ヘプタカルボキシルポルフィリンと糞便中のイソコプロポルフィリンが増加していれば診断は確定する。 【イソコプロポルフィリン】 増加している。便中には30種以上のポルフィリン化合物が存在するが、イソコプロポルフィリンはその一つである。臨床的な意義が解明されているものはペンタカルボキシルポルフィリンとプロトポルフィリンのみである。 【ポルホビリノーゲン】 ポルフィリンの前駆体である尿中PBG濃度は減少か、基準範囲内である。 【δ-ALA】 尿中濃度は基準範囲内か増加する。 【赤血球ウロポリフィリノーゲン脱炭酸活性】 Ⅰ型PCTでは正常であるが、Ⅱ型PCTでは低下する。 【C型肝炎マーカー】 85%の患者にC型肝炎の合併がみられるので、マーカーで検索する。 |
検体検査以外の検査計画 |