疾患解説
フリガナ | キョウマクチュウヒシュ |
別名 |
中皮腫 悪性中皮腫 |
臓器区分 | 呼吸器疾患 |
英疾患名 | Mesothelioma |
ICD10 | C45.0 |
疾患の概念 | 胸膜腔の中皮細胞から発生する原発性腫瘍で、殆どがアスベスト暴露に関係するアスベスト関連疾患の一つで、職業的なアスベスト繊維の吸入によって発症する。平均潜伏期間は30年で呼吸困難、咳、胸痛などを発症する。上皮型、肉腫型、二相型の3型に分類され、半数は上皮型である。アスベストに暴露された場合、生涯の間に胸膜中皮腫を発症するリスクは10%に及ぶが、リスクは喫煙とは無関係である。中皮腫は局所的に拡がることもあれば、転移することもあり、転移部位は肺門部および縦隔リンパ節、心膜、横隔膜、腹膜、肝、副腎または腎臓などである。 |
診断の手掛 | 職業的なアスベスト暴露の可能性がある患者が、呼吸困難、咳、胸痛、体重減少などを訴えたら本症を疑う。患者は呼吸困難および胸膜性以外の胸痛を訴えることが最も多いが、全身症状は稀である。胸壁および隣接組織への浸潤は、重度の疼痛、嗄声、嚥下困難、ホルネル症候群、腕神経叢障害または腹水の原因となる。確定診断には胸腔鏡検査または開胸胸膜生検が必要である。 |
主訴 |
嚥下障害|Dysphagia 胸水|Pleural effusion 胸痛|Chest pain 呼吸困難|Dyspnea 嗄声|Hoarseness 咳|Cough 体重減少|Weight loss 痰|Sputum やせ|Weight loss |
鑑別疾患 |
肺癌|Lung Cancer 結核性胸膜炎 良性石綿胸膜炎 塵肺症 癌性胸膜炎 |
スクリーニング検査 |
C-reactive Protein|C反応性蛋白 [/S] Fibrinogen|フィブリノゲン/凝固第I因子 [/P] |
異常値を示す検査 |
Adenosine Deaminase|アデノシンデアミナーゼ [/PlF] Hyaluronic Acid|ヒアルロン酸 [/AsF, /PlF] Interleukin-6|インターロイキン-6 [/S] Soluble Mesothelin Related Peptides|可溶性メソテリン関連ペプチド [/S] Transthyretin|トランスサイレチン/プレアルブミン [/S] α1-Acid Glycoprotein|α1-酸性糖蛋白/オロソムコイド/α1アシドグリコプロテイン [/S] α1-Antitrypsin|α1-アンチトリプシン [/S] |
関連する検査の読み方 |
【胸水一般検査】 滲出性でしばしば血性である。 【アデノシンデアミナーゼ】 胸水中の値が高値になることがある。ADAはリンパ節、脾、肝、腎、肺などに広く分布するプリン代謝系の酵素で、特にリンパ組織の分化、成熟に関与している。この酵素は2種のアイソザイムがあり血中のADAの80%はADA2でリンパ球と単球由来である。ADA活性の上昇はプリン体代謝経路の亢進、腫瘍性増殖による代謝亢進、代謝亢進の結果としての細胞外へのADAの流出による。 【ヒアルロン酸】 胸水中の値が高値になる。ヒアルロン酸は高分子のムコ多糖体で細胞間質にゼリー状溶液の状態で存在し潤滑作用や組織保持作用があり、関節液や眼球硝子体に分布している。ヒアルロン酸は胸腔や腹腔の中皮で作られ、血中の半減期は2.5~5.5分で肝の類洞内皮細胞で分解される。この物質は炎症の回復過程で産生が増加し血中・胸水中の濃度が上昇する。 【可溶性メソテリン関連ペプチド】 疾患発見と経過観察に有用との報告がある。SMRPは可溶性メソテリン関連ペプチドは細胞膜に結合したメソテリンの可溶化蛋白で胸膜、心膜、腹膜などの中皮細胞に分布している。これ等の中皮細胞が癌化した悪性中皮腫、卵巣癌、肺癌などで発現している。SMRPはアスベスト暴露によって発症する悪性胸膜中皮腫で高い陽性率を示すため、中皮腫の診断、治療効果判定に有用とされている。 【生検】 確定診断に有用である。 |
検体検査以外の検査計画 | 胸部X線検査、胸部CT検査、縦隔鏡検査、胸腔鏡検査、MRI検査、PET検査、気管支鏡検査、呼吸機能検査、心電図検査 |