疾患解説
フリガナ | ジフテリア |
別名 | |
臓器区分 | 感染性疾患 |
英疾患名 | Diphtheria |
ICD10 | A36.9 |
疾患の概念 | グラム陽性桿菌のCorynebacterium diphtherieeによる咽頭または皮膚の急性感染症で、冬から春が流行期で、ヒト-ヒトの咳による飛沫感染で伝播する。非特異的皮膚感染または偽膜性咽頭炎を発症するが、外毒素による心筋や神経組織の障害もある。伝染経路は、呼吸器からの飛沫、上咽頭分泌物への接触、感染皮膚病変への接触である。予防接種の普及により、ジフテリアは先進国では稀であるが、発展途上国では現在も風土病である。ただし、ワクチン接種および再接種率が低下しているため、先進国でも発症率がわずかに上昇しているので注意したい。1類感染症のため、診断した医師は直ちに保健所に届けることが義務付けられている。 |
診断の手掛 | 潜伏期は1~7日で、症状は病巣の部位によって異なる。1.鼻ジフテリア:乳児に多い、病初期は感冒様で、鼻汁で始まり鼻中隔に偽膜がみられる。高熱はない。2.咽頭・扁桃ジフテリア:年長児や成人に多い型で、上気道の炎症に引き続き偽膜が出現する。3.喉頭ジフテリア:乳児に多く見られ、発熱と犬吠様の咳が特徴的である。心筋炎:通常10~14日までに心電図の微細変化が現れる。4.神経系:通常は病期第1週に球麻痺で始まり、嚥下困難と鼻汁の逆流を引き起こす。咽頭感染症は、平均5日間の潜伏期と12~24時間の前駆期に続き、軽度の咽頭痛、嚥下困難、微熱および頻脈が見られる。小児では、悪心、嘔吐、悪寒、頭痛および発熱が比較的多く見られる。毒素産生株の感染では、扁桃部に光沢のある白色の滲出物による特徴的な偽膜が出現し、時間の経過とともに汚い灰色に変化し、粘稠、線維素性、粘着性になり除去すると出血を来す。皮膚感染症は四肢に生じ、様々な外観を呈し、しばしば湿疹,乾癬、膿痂疹などの慢性皮膚疾患との鑑別が困難である。また、心筋炎や神経系の合併症にも注意する。 |
主訴 |
咽頭痛|Pharyngodynia 嚥下障害|Dysphagia 嘔吐|Vomiting 悪心|Nausea 感冒様症状|Symptomes of common cold 犬吠様咳|Barking cough 紅斑|Erythema/Rubedo 呼吸困難|Dyspnea 嗄声|Hoarseness 頭痛|Headache/Cephalalgia 咳|Cough 痰|Sputum 発熱|Pyrexia/Fervescence/Fever 鼻閉|Rhinostenosis/Rhinodeisis 鼻漏|Rhinorrea/Nasal flow/Nasal discharge |
鑑別疾患 |
カンジダ性口内炎 感染性クループ 偽膜性扁桃腺炎 喉頭異物 心筋炎|Myocarditis 神経炎 単純ヘルペスウイルス扁桃腺炎 伝染性単核球症|Infectious Mononucleosis 鼻腔内異物 感冒 非細菌性偽膜性扁桃腺炎 |
スクリーニング検査 |
Albumin|アルブミン [/U] Glucose|グルコース/血糖/ブドウ糖 [/S] Hematocrit|ヘマトクリット/赤血球容積率 [/B] Hemoglobin|ヘモグロビン/血色素量 [/B] Leukocytes|白血球数 [/B, /B] Monocytes|単球 [/CSF] Neutrophils|好中球 [/B] Protein-Total|総蛋白/血清総蛋白/血清蛋白定量 [/CSF] Urea Nitrogen|尿素窒素 [/S] γ-Globulin|γ-グロブリン [/S] |
異常値を示す検査 |
Casts|円柱 [/U] Cells [/CSF] Hemagglutination Inhibition [/S] |
関連する検査の読み方 |
【偽膜細菌培養】 偽膜の一部を剥離してグラム染色し、異染小体を持つグラム陽性桿菌、ジフテリア菌を確認する。培養はレフレル培地や亜テルル酸寒天培地を使うので本症を疑う場合は、その旨検査室に連絡する。 【PCR】 PCR法でジフテリア菌のtox遺伝子を迅速に検出する方法もある。C.diphtheriaeを常在細菌叢に含まれるCorynebacterium属の菌と鑑別するためには数日かかるので、PCR法を積極的に行う。 【Schick試験】 ジフテリア毒素が陽性になる。シック試験はジフテリアに対する免疫の有無を調べる皮内反応検査で、ジフテリア毒素を含むシック液を皮内に注射し4~5日後に判定する。発赤が生じればジフテリアに対して免疫が無いことが推定される。 |
検体検査以外の検査計画 | 心電図検査 |