疾患解説
フリガナ | スイノウホウ |
別名 | |
臓器区分 | 消化器疾患 |
英疾患名 | Pancreatic Cyst |
ICD10 | K86.2 |
疾患の概念 | 膵とその周囲に発生する液体を含む嚢胞状の組織で、病理学的には、嚢胞壁の内面が固有の上皮で覆われる真性嚢胞と、上皮がなく炎症性結合組織で構成される仮性嚢胞に大別される。臨床上問題となるものは、腫瘍性嚢胞で、内容液の性状により、漿液性と粘液性に区別され、良性悪性の鑑別は困難である。漿液性嚢胞腫瘍は 2cm 以下の多数の嚢胞からなり、乳頭状増殖に乏しく、悪性転化することは稀である。粘液性の腫瘍性嚢胞には、粘液性嚢胞腫瘍と分枝型の膵管内乳頭粘液性腫瘍がある。粘液性嚢胞腫瘍は、中年女性の膵体尾部に好発し、厚い線維性被膜を有する粗大な多房性嚢胞で、膵管との交通はなく、卵巣様間質が病理学的特徴で、高率に悪性化する。膵管内乳頭粘液性腫瘍は中高年の男性に多く、主膵管型、分枝型、混合型に分類され、分枝型が膵嚢胞性疾患とされ、粘液により拡張した膵管分枝が集合したもので、膵癌が発症することもあるが、分枝型膵管内乳頭粘液性腫瘍の多くは進行が緩徐である。 |
診断の手掛 | 真性嚢胞は小さい場合は無症状であるが、大きくなると周辺の臓器への圧迫症状が出現する。仮性嚢胞は膵炎発症後1週間程度で腹痛や総胆管圧迫による黄疸の出現が診断の手掛りとなる。合併症として嚢胞内出血による貧血、経膵管経由の消化管出血、消化管や腹腔内破裂による疼痛・発熱・下痢、感染・膿瘍化による発熱などを認める。 |
主訴 |
黄疸|Jaundice 嘔吐|Vomiting 悪心|Nausea 下痢|Diarrhea 発熱|Pyrexia/Fervescence/Fever 貧血症状|Anemic symptom 腹痛|Abdominal pain 腹部腫瘤|Abdominal tumor/Abdominal mass |
鑑別疾患 |
膵腫瘍嚢胞変性 後腹膜腫瘍 腸管膜嚢胞 副腎嚢胞 膵臓癌|Cancer of Pancreas 腎嚢胞性疾患 |
スクリーニング検査 |
Alkaline Phosphatase|アルカリホスファターゼ/アルカリ性ホスファターゼ [/S] Amylase|アミラーゼ [/AsF, /S, /U] Bilirubin-Direct|直接ビリルビン/抱合型ビリルビン [/S] Bilirubin-Total|総ビリルビン/ビリルビン [/S] Glucose|グルコース/血糖/ブドウ糖 [/S] Leukocytes|白血球数 [/PlF] Protein-Total|総蛋白/血清総蛋白/血清蛋白定量 [/PlF] |
異常値を示す検査 |
Bicarbonate|血漿HCO3-濃度/重炭酸イオン [/Duodenal Contents] Lipase|リパーゼ/膵リパーゼ [/S] pH|尿pH [/PlF] Specific Gravity|比重(尿)/尿比重 [/PlF] |
関連する検査の読み方 |
【アミラーゼ】 仮性嚢胞では高アミラーゼ血症を認め、特に膵炎後遷延する場合にはその存在が疑われる. 【セクレチン試験】 外分泌機能低下が認められる。セクレチン試験はセクレチンを負荷し流出する膵液を採取して液量、アミラーゼ排出量、重炭酸塩最高濃度、重炭酸塩排出量を測定することで膵外分泌能を評価する検査である。 【CA19-9】 腫瘍性嚢胞の鑑別に必要である。CA19-9はヒト大腸癌細胞株を免疫原とするモノクローナル抗体により認識される糖鎖抗原で、抗原決定基はシリアルルイスAとされている。このため、日本人の約10%に存在するLewis抗原陰性者は癌化しても偽陰性を示す。臨床的には膵癌マーカーとして治療効果判定に使われるが、スクリーニング検査には不適である。癌が疑われるが低値の場合はルイス式血液型を調べる。また、高値でも膵癌が否定される場合は胆道閉塞や嚢胞を疑い検査を進める。関連するマーカーはCEA、SLX、PSTI、POA、CA50などである。 |
検体検査以外の検査計画 | 腹部超音波検査、CT検査、MRI検査、内視鏡的膵胆管造影検査、超音波内視鏡検査、腹部動脈造影検査 |