疾患解説
フリガナ | スイゾウガン |
別名 | 悪性腫瘍(膵) |
臓器区分 | 消化器疾患 |
英疾患名 | Cancer of Pancreas |
ICD10 | C25.9 |
疾患の概念 | 膵外分泌腺由来の上皮性悪性腫瘍で、60歳代に高頻度に発症し、年齢(45歳以上)、家族歴、喫煙、食習慣、飲酒、糖尿病、慢性膵炎、膵管内乳頭粘液性腫瘍などがリスク因子とされる。アルコールやカフェインの摂取はリスク因子である証拠はない。膵癌患者の約7~8%は、両親や兄弟姉妹に膵癌の家族歴がある。膵癌検体の85%以上にK-ras遺伝子の突然変異が見つかっている。殆どの膵癌は、膵管細胞および腺房細胞から発生する外分泌腫瘍であるが、腺房細胞由来に比べ膵管細胞由来が9倍多く、80%は膵頭部に発生する。腺癌の平均発生年齢は55歳で、男女比は、男性が1.5~2倍多い。 |
診断の手掛 | 背部に放散する上腹部痛で、疼痛が身体を前屈するか、胎児型姿勢を取ると軽減すれば本症を疑う。診断時点で90%の患者は進行例で、後腹膜組織への浸潤、所属リンパ節転移、肝もしくは肺転移が認められる。体重減少、腹痛、黄疸などの症状は殆どの場合、末期の症状である。膵頭部癌は80~90%の患者で閉塞性黄疸を、また、体部と尾部の癌は、脾静脈閉塞による脾腫や胃、食道の静脈瘤、消化管出血を引き起こす。25~50%の患者は、癌により糖尿病を発症し、多尿と多飲が見られる。時に胆嚢触知、遊走性血栓性静脈炎、脾腫が見られることもある。一部の患者は、膵からの消化酵素の分泌阻害による膵外分泌機能不全を来し、食物の消化と栄養の吸収を妨げ、腹部膨満やガスが発生し、水様、脂肪性、悪臭などを伴う下痢を引き起こす。患者の75%以上が、疼痛と体重減少を訴える。 |
主訴 |
黄疸|Jaundice クールボアジェ徴候|Courvoisier sign 消化管出血|Gastrointestinal bleeding 上腹部痛|Upper abdominal pain 体重減少|Weight loss 多飲|Polydipsia 多尿|Polyuria 背部放散痛|Radiating pain of back 脾腫|Splenomegaly 腹痛|Abdominal pain やせ|Weight loss 腰痛|Low back pain/Lumbago |
鑑別疾患 |
胆管癌|Cholangiocarcinoma グルーヴ膵炎 血栓性静脈炎 原発性硬化性胆管炎|Primary Sclerosing Cholangitis(PSC) 高CA19-9血症 自己免疫性膵炎 自己免疫性胆管炎 漿液性嚢胞腫瘍 膵管内乳頭粘液性腫瘍 糖尿病|Diabetes Mellitus 粘液性嚢胞腫瘍 慢性膵炎|Chronic Pancreatitis 腫瘤形成型慢性膵炎 |
スクリーニング検査 |
α-Fetoprotein|α-フェトプロテイン [![]() Albumin|アルブミン [ ![]() Alkaline Phosphatase|アルカリホスファターゼ/アルカリ性ホスファターゼ [ ![]() ![]() Alanine Aminotransferase|アラニンアミノトランスフェラーゼ/グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ [ ![]() Amylase|アミラーゼ [ ![]() ![]() ![]() ![]() Aspartate Aminotransferase|アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ/グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ [ ![]() Bilirubin-Direct|直接ビリルビン/抱合型ビリルビン [ ![]() Bilirubin-Indirect|間接ビリルビン/非抱合型ビリルビン [ ![]() Bilirubin-Total|総ビリルビン/ビリルビン [ ![]() C-Peptide|C-ペプチド [ ![]() ![]() Calcium|カルシウム [ ![]() ![]() CEA|癌胎児性抗原 [ ![]() ![]() ![]() Cholesterol|総コレステロール/コレステロール/コレステリン [ ![]() ![]() Erythrocytes|赤血球数 [ ![]() Glucose|グルコース/血糖/ブドウ糖 [ ![]() ![]() ![]() Hematocrit|ヘマトクリット/赤血球容積率 [ ![]() Hemoglobin|ヘモグロビン/血色素量 [ ![]() Leucine Aminopeptidase|ロイシンアミノペプチダーゼ [ ![]() ![]() Lactate Dehydrogenase|乳酸デヒドロゲナーゼ [ ![]() ![]() Leukocytes|白血球数 [ ![]() Monocytes|単球 [ ![]() Neutrophils|好中球 [ ![]() Potassium|カリウム [ ![]() Protein-Total|総蛋白/血清総蛋白/血清蛋白定量 [ ![]() ![]() ![]() PSA|前立腺特異抗原 [ ![]() Prothrombin Time|プロトロンビン時間 [ ![]() Uric Acid|尿酸 [ ![]() γ-Glutamyltranspeptidase|γ-グルタミルトランスペプチダーゼ/γ-グルタミルトランスフェラーゼ [ ![]() |
異常値を示す検査 |
5'-Nucleotidase|5'-ヌクレオチダーゼ [![]() Adenosine Deaminase|アデノシンデアミナーゼ [ ![]() Alkaline Phosphatase Isoenzymes|アルカリホスファターゼアイソザイム/ALPアイソザイム [ ![]() Androstanediol Glucuronide [ ![]() Androstenedione|アンドロステンジオン [ ![]() Anti-p53 Antibodies|抗p53抗体 [ ![]() Arylsulfatase [ ![]() Bicarbonate|血漿HCO3-濃度/重炭酸イオン [ ![]() C-Peptide|C-ペプチド [ ![]() ![]() CA 125|CA125 [ ![]() CA 15-3|CA15-3 [ ![]() CA 19-9|CA19-9 [ ![]() ![]() CA 195 [ ![]() CA 242 [ ![]() CA 27-29 [ ![]() CA 50|CA50 [ ![]() CA 72-4|CA72-4 [ ![]() CA-M17.1 [ ![]() Calcium|カルシウム [ ![]() ![]() CAR-3 [ ![]() Carotene|カロチン/プロビタミンA/カロチノイド [ ![]() Ceruloplasmin|セルロプラスミン/フェロオキシダーゼ [ ![]() Colon Specific Antigen [ ![]() Complement C3|補体第3成分/β1C・β1Aグロブリン/C3 [ ![]() Complement C4|補体第4成分/β1Eグロブリン/C4 [ ![]() Complement, Total|補体価/CH50 [ ![]() Corticotropin|副腎皮質刺激ホルモン/コルチコトロピン [ ![]() Deoxyribonuclease I [ ![]() ![]() Dupan-2|DU-PAN-2 [ ![]() EL-1|エラスターゼ-1 [ ![]() Elastase 1|エラスターゼ-1 [ ![]() ![]() Epidermal Growth Factor|上皮細胞増殖因子/上皮細胞成長因子 [ ![]() Fat|脂肪(糞便) [ ![]() Feto-acinar Pancreatic Protein [ ![]() Fibrin and Fibrinogen Degradation Products|フィブリン・フィブリノゲン分解産物/線維素分解産物 [ ![]() ![]() Fibrinopeptide A|フィブリノペプタイドA [ ![]() Fucose|フコース [ ![]() Galactosyltransferase Isoenzyme II [ ![]() Gastrointestinal Cancer Associated Antigen [ ![]() Glucagon|グルカゴン/膵グルカゴン [ ![]() ![]() Glucagon-like Peptide-1|グルカゴン様ペプチド-1 [ ![]() Glucose Tolerance|ブドウ糖負荷試験/グルコース負荷試験 [ ![]() Glutamic Acid|グルタミン酸 [ ![]() Inter-α1-Antitrypsin [ ![]() Islet Amyloid Polypeptide|膵島アミロイドポリペプチド/アミリン [ ![]() Lactate Dehydrogenase Isoenzyme-5|乳酸デヒドロゲナーゼアイソザイム/LDアイソザイム [ ![]() Lactate Dehydrogenase Isoenzymes|乳酸デヒドロゲナーゼアイソザイム/LDアイソザイム [ ![]() Lipase|リパーゼ/膵リパーゼ [ ![]() ![]() ![]() Lipids|総脂質 [ ![]() Metallopanstimulin [ ![]() Neopterin|ネオプテリン [ ![]() Occult Blood|潜血反応(便)/グアヤック法/o-トリジン法/ラテックス凝集法 [ ![]() Pancreatic Oncofetal Antigen|膵癌胎児性抗原 [ ![]() Pancreatic Polypeptide|膵臓ポリペプチド [ ![]() Pancreatic Secretory Trypsin Inhibitor|膵分泌性トリプシンインヒビター [ ![]() Parathyroid Hormone-related Peptide|副甲状腺ホルモン関連蛋白 [ ![]() Phospholipase A2 [ ![]() ![]() Pseudouridine|シュードウリジン [ ![]() Ribonuclease|リボヌクレアーゼ/RNアーゼ [ ![]() ![]() Scan1 [ ![]() Sialyltransferase [ ![]() SLX Antigen|シアリルSSEA-1抗原/シアリルLex-i 抗原 [ ![]() ![]() Soluble Interleukin-2 Receptor|可溶性 IL-2レセプター/IL-2レセプター/可溶性 IL-2受容体 [ ![]() Somatostatin|ソマトスタチン [ ![]() Span-1|SPan-1/SPan-1抗原 [ ![]() Tennessee Antigen [ ![]() Testosterone:Dehydrotestosterone Ratio [ ![]() Tissue Factor Pathway Inhibitor [ ![]() Tissue Polypeptide Antigen|組織ポリペプチド抗原 [ ![]() Tissue Polypeptide Antigen Epitope M3 [ ![]() Trypsin|トリプシン [ ![]() ![]() Tumor-associated Trypsin Inhibitor [ ![]() Urobilinogen|ウロビリノゲン定性(尿) [ ![]() ![]() Urokinase Plasminogen Activator|ウロキナーゼプラスミノゲンプロアクチベータ [ ![]() α1-Antitrypsin|α1-アンチトリプシン [ ![]() α2-Macroglobulin|α2-マクログロブリン [ ![]() β-Chorionic Gonadotropin|ヒト絨毛性ゴナドトロピンβサブユニット [ ![]() β-Glucuronidase|β-グルクロニダーゼ [ ![]() β-Thromboglobulin|β-トロンボグロブリン [ ![]() β2-Microglobulin|β2-ミクログロブリン/β2-マイクログロブリン [ ![]() |
関連する検査の読み方 |
【AFP】 肝転移を伴うと増加する。 【ALP】 増加は胆管閉塞か肝転移を示唆する。 【BT-PABA試験】 分泌障害で70%以下である。PFD試験に用いられる合成基質BT-PABAは、膵外分泌酵素のキモトリプシンで分解されPABAになり、小腸で吸収され肝で抱合を受けた後尿中に排泄される。この検査は膵外分泌機能検査用試薬(ベンチロミド)を経口投与し、キモトリプシンで分解されたPABAの6時間後の尿中排泄率を求めるもので、膵外分泌機能検査として広く使われている。ただし、軽度~中等度の障害では陽性にならないので、アミラーゼ、トリプシンなどの検査を併用する。臨床的には膵外分泌障害を感度40~85%、特異度71~90%で検出できる。 【CA19-9】 局所癌と転移癌の指標として感度70%、特異度87%であるが、早期癌のスクリーニングには使えない。予後判定と経過観察に有用である。 【CEA】 進行例では高値である。 【K-ras遺伝子codon12,13変異解析】 K-ras condon12変異を70~100%で認める。RAS遺伝子群はH-ras、K-ras、N-rasの3種があり、KRASは12、13、61番目のアミノ酸コドンの点突然変異により活性化し腫瘍発生に関与している。コドン12の変異は肺腺癌の15~20%に見られる。また、大腸癌の40~50%にRAS遺伝子の点突然変異が見られるが、その70~80%はコドン12である。膵癌では点突然変異は80~90%に見られるが、その殆どはコドン12の変異である。 【癌抑制遺伝子】 P16(第9染色体上)、P53(第17染色体上)、DCP4(第18染色体上)の不活性化が膵癌の各々95%、50~70%、50%に見られる。 【NCC-ST-439】 増加するがルイス血液型がLea-b-の患者は偽陽性になる。NCC-ST-439はヒト胃腺癌細胞株を免疫原にして作られたモノクローナル抗体が認識する糖鎖抗原で、膵癌、胆道癌、乳癌、大腸癌、肝癌、胃癌など消化器に発生する腺癌で陽性となるが、臓器特異性は乏しい。 【Span-1】 軽度~中等度に増加するがルイス血液型がLea-b-の患者は偽陽性になる。 【YH-206抗原】 高頻度に増加する。 【アミラーゼ】【リパーゼ】 早期癌患者の10%以下でわずかに増加することがある。膵破壊により低下する。アイソザイムは膵型が優位である。 【セクレチン試験】 機能低下が認められる。セクレチン試験はセクレチンを負荷し流出する膵液を採取して液量、アミラーゼ排出量、重炭酸塩最高濃度、重炭酸塩排出量を測定することで膵外分泌能を評価する検査である。 【組織ポリペプチド抗原】 増加する。 【耐糖能】 患者の20%が糖尿病で、耐糖能曲線が糖尿病型である患者も多い。高齢男性が、不安定でインスリン感受性の糖尿病を発症すれば膵癌を疑う。 【トリプシン】 早期に高値を示す 【ビルルビン】 膵頭部癌で閉塞性黄疸を起こせば高値になる。ALPも高値なら、胆管閉塞、肝転移を考える。 【腹水一般検査】 乳び腹水が認められる。 【キモトリプシン】 糞便中の値は低下する。キモトリプシンは膵で産生される蛋白を分解する消化酵素で、トリプシンで分解され活性化される。臨床的には慢性膵炎、膵癌、膵嚢胞線維症など膵実質障害性の疾患で産生量が低下するため膵機能のスクリーニング検査として有用である。また、慢性膵炎の診断、経過観察にはPFD試験(PA-PABA試験)と便中キモトリプシン活性の同時検査が診断基準で定められている。膵癌についてはCA19-9、CEA、DU-PAN-2などの腫瘍マーカーも同時に測定する。 【検査値の異常】 異常値は膵腺房の破壊と膵管閉塞の広がりと程度による。 |
検体検査以外の検査計画 | 腹部ヘリカルCT検査、超音波検査、超音波内視鏡検査、内視鏡的逆行性膵胆管造影、MRI検査 |