疾患解説
フリガナ | Aガタカンエン |
別名 | |
臓器区分 | 消化器疾患 |
英疾患名 | Hepatitis A |
ICD10 |
急性A型肝炎:B15.0 A型肝炎:B15.9 |
疾患の概念 | 糞便中のRNAウイルス(ピコルナウイルス科)の直接経口摂取と、汚染された貝類の生食により約15~45日の潜伏期を経て発症し、発症頻度は10万人対1人以下である。潜伏期の後期および急性期の黄疸出現前に肝、胆汁、便、血中にウイルスが出現する。ASTとALTは1~3週間、数百単位の増加を見る。黄疸が出現すると便へのウイルス排泄、ウイルス血症、感染性は急速に低下する。感染は小児および若年成人に多いが、慢性キャリア状態は知られておらず、慢性肝炎や肝硬変を発症することもない。ほぼ全ての症例は、4~8週で治癒するが、最長12週間続く持続性黄疸を呈する遷延性胆汁うっ滞が成人に高頻度に認められる。小児では黄疸は10%である。劇症化は1%に認められ死亡率は1~2%で発症年齢と共に高くなる。4類感染症である。 |
診断の手掛 | 15~45日の潜伏期の後、かぜ症状、38℃以上の発熱などの前駆症状に続き、顕著な食欲不振、全身倦怠感、悪心、嘔吐などの非特異的な症状と暗色尿が見られたら本症を疑う。黄疸は暗色尿に続き現れる。便中ウイルスの出現は、症状の出現前に始まり、症状が現れた後数日で止まる。季節的には3月がピークで1~5月に多い、国内での感染源は貝類の生食と家族内感染が重要である。 |
主訴 |
暗色尿|Dark urine 咽頭痛|Pharyngodynia 黄疸|Jaundice 嘔吐|Vomiting 悪心|Nausea 肝腫大|Hepatomegaly 感冒様症状|Symptomes of common cold 食欲不振|Anorexia 頭痛|Headache/Cephalalgia 全身倦怠感|General malaise/Fatigue 着色尿|Chromaturia 発熱|Pyrexia/Fervescence/Fever 腹痛|Abdominal pain 右季肋部痛|Pain in the right hypochondrium/Right Hypochondralgia |
鑑別疾患 |
アルコール依存症|Alcoholism 肝硬変|Cirrhosis of Liver 肝性昏睡 高尿酸血症 そう痒症 低コレステロール血症|Hypocholesterolemia 無月経 薬物依存症 溶血性貧血 |
スクリーニング検査 |
Alanine Aminotransferase|アラニンアミノトランスフェラーゼ/グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ [/S] Aspartate Aminotransferase|アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ/グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ [/S] Bilirubin-Total|総ビリルビン/ビリルビン [/S] PSA|前立腺特異抗原 [/S] Prothrombin Time|プロトロンビン時間 [/P] γ-Glutamyltranspeptidase|γ-グルタミルトランスペプチダーゼ/γ-グルタミルトランスフェラーゼ [/S] |
異常値を示す検査 |
Hepatitis A Virus RNA|A型肝炎ウイルRNA [/F, /S] IgA Anti-HAV|A型肝炎ウイルス抗体/HA抗体/HA-IgA抗体/抗A型肝炎ウイルス抗体 [/S] IgG Anti-HAV|HA-IgG抗体/抗HA-IgG抗体 [/S] IgM Anti-HAV|HA-IgM抗体/A型肝炎初期抗体/IgM-HA抗体/抗HA-IgM抗体 [/S] Neopterin|ネオプテリン [/U] |
関連する検査の読み方 |
【CBC】 相対的にリンパ球が増加する。 【PT】 50%以下に延長した場合は重症化を考える。 【A型肝炎ウイルスRNA】 感染発症のごく早期から現れ、黄疸発現の約1~2週間後にピークに達する。ALTがピークを示す時まで血液と糞便中に検出され、数週間後に後に消退する。HAVキャリア状態は知られていない。ピコナウイルス科ヘパトウイルス属に分類され、遺伝子は7.5K塩基のプラスRNAからなり、ウイルス粒子は熱抵抗性を持つ。主として経口感染により急性肝炎を発症し、劇症化することはあるが慢性化しない。感染初期からALT値がピークになるまで血液と糞便中に認められる。 【HA抗体】 IgG、IgM型HA抗体の総和で感染の既往を示す。IgM型は初感染から陽性化し数ヶ月に亘って検出され、A型急性肝炎のマーカーとなる。IgG型は発症4週以降に陽性となり、一生涯血中に存在する。 【HA-IgM抗体】 A型肝炎ウイルスのカプシド蛋白に対する抗体である。感染早期に出現し黄疸発生の1~2週間後にピークに達し3~24週の間検出可能である。ついで防御IgG型HA抗体が上昇し、一生残存する。IgM抗体は急性感染のマーカーであり、起因ウイルスの診断に用いる 【HA-IgG抗体】 過去のHAV暴露の有無と再感染に対する免疫を示す。この抗体が陽性で、急性肝炎の所見がない場合はA型肝炎ウイルスに対する免疫が示唆される。 【ビリルビン】 基準範囲の5~10倍に増加し、黄疸は数日から12週程度続く。 【AST】【ALT】 1~3週間で数百単位に増加する。 【TTT】【ZTT】 TTTは急性肝炎では12U以上に、ZTTは6.5U以上になる。A型肝炎発症の初期ではZTTに比べTTTが敏感に増加する。これはIgMの増加を反映していると考えられている。 |
検体検査以外の検査計画 |