疾患解説
フリガナ | ジンケッカンセイコウケツアツショウ |
別名 | |
臓器区分 | 腎・泌尿器疾患 |
英疾患名 | Renovascular Hypertension |
ICD10 | I15.0 |
疾患の概念 | 一つ以上の腎動脈やその分枝の部分的あるいは完全閉塞性病変により、高血圧を発症するもので、患側腎からのレニン分泌亢進が原因であるが、必ずしもレニンの上昇を見ない症例もある。外科的治療で完治が期待出来る二次性高血圧の一つである。約80%の症例が動脈硬化に起因し、20%が線維筋性異形成による。動脈硬化は50歳以上の男性で多く見られ、腎動脈近位1/3に病巣がある。線維筋性異形成は若年女性でより多く見られ、通常は主腎動脈遠位2/3と腎動脈分枝に生じる。腎血管性高血圧は、心拍出量の増加と末梢血管抵抗の増大が特徴の疾患である。 |
診断の手掛 | 通常無症候性であるが、30歳未満または50歳を超える患者が、突然拡張期高血圧を発症したら本症を疑う。また、安定していた高血圧が突然悪化した場合も本症を疑うべきである。心窩部の収縮期-拡張期雑音が上腹部の左右または片方に放散して聴取できれば、本症に特有の所見であり、診断の手掛かりになる。しかし、線維筋性異形成患者全体では、約50%で聴取されるのみであり、腎動脈硬化症があれば殆ど聴取されない。以下の場合は腎血管性高血圧を疑う、1.30歳未満または50歳以上の患者で拡張期高血圧が突然発生した場合。2.新たに発症した高血圧または以前から安定していた高血圧が6カ月内に急速に増悪した場合。3.高血圧が初診時から極めて重度で、腎機能の悪化を伴っている、または薬物療法に強い抵抗性を示す場合。 |
主訴 |
高血圧|Hypertension 頭痛|Headache/Cephalalgia 腹部血管雑音|Vasculer murmur of abdomen |
鑑別疾患 |
腎形成不全 腎結石症 腎動脈閉塞症|Renal Arterial Obstruction 動脈硬化症|Arteriosclerosis 慢性腎盂腎炎|Chronic Pyelonephritis 高血圧症|Hypertension 低K血症|Hypokalemia 妊娠高血圧症候群|Pregnancy-induced Hypertension 高安動脈炎|Takayasu's Arteritis |
スクリーニング検査 |
Albumin|アルブミン [/U] Chloride|クロール [/S] Cholesterol|総コレステロール/コレステロール/コレステリン [/S] Creatinine|クレアチニン [/U] GFR|糸球体濾過量 [/U] Glucose|グルコース/血糖/ブドウ糖 [/S] Potassium|カリウム [/S] Sodium|ナトリウム [/U] Triglycerides|トリグリセリド/中性脂肪/トリグリセライド/トリアシルグリセロール [/S] Uric Acid|尿酸 [/S,/U] |
異常値を示す検査 |
Atrial Natriuretic Peptide|心房性Na利尿ペプチド [/P] Creatinine Clearance|クレアチニンクリアランス [/U] Estimated Glomerular Filtration Rate|推算GFR [/S] Inulin Clearance|イヌリンクリアランス [/U] Lipoproteins|リポ蛋白脂質分画 [/S] Osmolality|浸透圧 [/U] pH|尿pH [/B, /U] Plasma Renin Activity|活性型レニン/血漿レニン活性/総レニン [/P] Specific Gravity|比重(尿)/尿比重 [/U] Volume [/U] α1-Antitrypsin|α1-アンチトリプシン [/U] |
関連する検査の読み方 |
【eGFR】 低値である。eGFRは日本腎臓学会が示したCKDガイドラインに記載されているGFRの算定法で、イヌリンクリアランスで求めたGFRと酵素法で測定した血清クレアチニン値から計算式で求められる。eGFRは簡便な方法であるが、スクリーニングや疫学研究を目的に作成されているので、実際の臨床の場で個々の患者を評価するためにはイヌリンクリアランスやクレアチニンクリアランスを用いることが薦められている。臨床的には糸球体濾過量の推定とCKDの病期分類に用いる。個々の患者評価:eGFR=0.719×Ccr(実測クレアチニンクリアランス。薬物投与調節:eGFR=0.719×Cin(実測イヌリンクリアランス) 【イヌリンクリアランス】 低値である。イヌリンは生体内で合成されず、糸球体で100%濾過され尿細管で再吸収されないことから、Cinは真の糸球体濾過量(GFR)を表す最良のマーカーとされている。臨床的にはGFRのゴールドスタンダードとして慢性腎疾患(CKD)のステージ分類や血液透析導入時の正確な腎機能評価に用いられる。 【カプトリル負荷試験】 PRA は12μg/L/時間。末梢のPRAを10μg/L/時間、150%以上の増加をもたらす。 【血漿レニン活性】 腎動脈が高度に狭窄すると、虚血腎からのレニン放出が高まる。未治療の患者で低値なら本症は除外される。レニンは腎糸球体輸入臍動脈壁に存在する傍糸球体細胞で産生されるタンパク分解酵素である。検査は血漿中のレニン活性を有するARC濃度を特異的なモノクローナル抗体を用いて測定する。血圧や水・電解質の調節に重要な役割を持つレニン・アンジオテンシン系の評価には血漿レニン活性が測定されてきたが、ARCの直接測定により、レニンの分泌状態がより正確に判断できる。異常値を示したらアルドステロン濃度(PAC)を測定しPAC:PRA比を評価する。臨床的には腎疾患、高血圧、浮腫、腹水などの症状を持つ患者やミネラルコルチコイド異常が疑われる場合に測定する。 【K】 約15%の患者で3.4mEq/L以下の低K血症を認める。 【尿酸】 血中尿酸は増加するが、尿中尿酸は排泄量減少のため低値になる 【尿一般検査】 蛋白尿を認める。 。 |
検体検査以外の検査計画 | 血圧測定、腎血管造影検査、超音波検査、MRA検査、CT血管造影検査、三次元スパイラルCT検査、カラードップラ超音波検査、核医学的画像検査、レノグラム |