疾患解説
フリガナ | ファンコニーショウコウグン |
別名 | |
臓器区分 | 腎・泌尿器疾患 |
英疾患名 | Fanconi syndrome |
ICD10 | E72.0 |
疾患の概念 | 近位尿細管再吸収の欠陥により糖尿、リン酸尿、アミノ酸尿、HCO₃の喪失を引き起こす疾患で、遺伝性と薬物による後天性に分けられる。遺伝性ファンコニー症候群は、シスチン症に合併する。シスチン症は、シスチンが細胞と組織に蓄積する常染色体劣性遺伝性代謝性疾患である。またファンコニー症候群は、ウィルソン病、遺伝性フルクトース不耐症、ガラクトース血症、糖原病、眼脳腎症候群(Lowe症候群)、ミトコンドリア細胞症およびチロシン血症を合併することもある。後天性ファンコニー症候群は、腎毒性を有する癌化学療法薬、抗レトロウイルス薬などによって引き起こされる可能性がある。また、腎移植後、多発性骨髄腫、アミロイドーシス、重金属や化学物質による中毒、ビタミンD欠乏症の患者でも発症する。本症はグルコース、リン、アミノ酸、HCO3、尿酸、水、K、Naの再吸収障害など、近位尿細管の様々な輸送機能に障害が生じる。 |
診断の手掛 | 腎機能異常が診断の手掛りになるが、特に血清ブドウ糖値が正常で糖尿を来す患者、リン酸尿やアミノ酸尿を呈する患者を診たら本症を疑う。臨床的特徴は、近位尿細管性アシドーシス、低リン血症性くる病、低K血症、多尿、多飲が乳児期に出現することである。シスチン症が原因のファンコニ症候群では、発育不全と発育遅滞がよく見られ、網膜に斑状の色素脱失が認められる。また、間質性腎炎が発症し、進行性腎不全を来し青年期以前に死に至る場合がある。後天性ファンコニー症候群は、尿細管性アシドーシス、低リン血症、低K血症などが成人に出現し、患者は骨軟化症の症状および筋力低下が見られることもある。 |
主訴 |
筋力低下|Weakness 成長障害|Growth disorder 発育障害|Developmental disability/Disorder of growth and development |
鑑別疾患 |
シスチン尿症 ウィルソン病/肝レンズ核変性症|Wilson's disease/Hepatolenticular Degeneration 遺伝性フルクトース不耐症 糖原病 Lowe症候群 ガラクトース血症|Galactosemia チロシン血症|Tyrosinemia 多発性骨髄腫|Multiple Myeloma 腎移植 アミロイドーシス|Amyloidosis 重金属中毒 ビタミンD欠乏症|Vitamin D Deficiency |
スクリーニング検査 |
Alkaline Phosphatase|アルカリホスファターゼ/アルカリ性ホスファターゼ [/S] Chloride|クロール [/S] Calcium|カルシウム [/S] Creatinine|クレアチニン [/S] Erythrocyte Sedimentation Rate|赤血球沈降速度 [/B] Hematocrit|ヘマトクリット/赤血球容積率 [/B] Hemoglobin|ヘモグロビン/血色素量 [/B] Potassium|カリウム [/S,/S] Urea Nitrogen|尿素窒素 [/S] Uric Acid|尿酸 [/S] |
異常値を示す検査 | Analysis of Amino Acids|アミノ酸分析/アミノ酸41分画 [/U] |
関連する検査の読み方 |
【アミノ酸分析】 尿中のアミノ酸を分析する。アミノ酸は食物由来の必須アミノ酸と体内で合成される非必須アミノ酸があり、肝や骨格筋の細胞で蛋白合成に関与している。検査はアミノ酸代謝異常症のスクリーニング、新生児代謝異常スクリーニングで異常が認められた時の確認などに用いる。 【無機リン】 1~2.5mg/dL程度の軽度~中等度の減少が見られることがある。 【尿糖定量】 0.5~1g/日以上に増加する。 【尿酸】 尿酸排泄亢進により、尿中の排泄量が0.95g/日以上に増加する。 【診断】 血清ブドウ糖値が正常で糖尿がみられ、加えてリン酸尿、アミノ酸尿が証明されれば診断できる。 |
検体検査以外の検査計画 | 細隙灯検査 |