疾患解説
フリガナ | ヒダイガタシンキンショウ |
別名 | |
臓器区分 | 循環器疾患 |
英疾患名 | Hypertrophic Cardiomyopathy(HCM) |
ICD10 | I42.2 |
疾患の概念 | 拡張機能不全を伴うが、後負荷の増大を伴わない著明な心室肥大を特徴とする先天性または後天性の疾患で、若年運動選手の突然死の原因として知られている。殆どの症例は遺伝性で、常染色体優性の突然変異が少なくとも50以上同定されている。後天性のHCMは稀で、先端巨大症、褐色細胞腫、神経線維腫症の患者で発症することがある。 |
診断の手掛 | 20~40歳台に発症する労作時の胸痛、呼吸困難、動悸、失神、めまいを訴える患者を診たら本症を疑う。特にめまいは体動時や起立時に好発する。若年運動選手が、原因不明の失神を訴えたら本症を強く疑うべきである。閉塞性肥大型心筋症は、収縮期雑音が聴取され、バルサルバ手技により増強する特徴がある。失神は、労作時に前触れなく発生し、これは流出路閉塞が収縮性の増大により悪化するためか、あるいは非持続性の心室性または心房性不整脈が生じるためで、突然死リスクのマーカーになるので注意する。血圧および心拍数は正常である。 |
主訴 |
易疲労感|Fatigue 胸部圧迫感|Cest oppression 呼吸困難|Dyspnea 失神|Syncope 動悸|Palpitations めまい|Dizziness 労作時胸痛|Exertional dyspnea |
鑑別疾患 |
Fabry病 アミロイドーシス|Amyloidosis 大動脈弁狭窄症 大動脈縮窄症 高血圧症|Hypertension 高血圧性心肥大 スポーツ心 狭心症|Angina Pectoris 炎症性心筋症 褐色細胞腫|Pheochromocytoma 先端巨大症|Acromegaly 糖原病 神経線維腫症 心サルコイドーシス ミトコンドリア脳筋症 糖尿病|Diabetes Mellitus Friedreich運動失調症 Noonan症候群 |
スクリーニング検査 | Creatine Kinase|クレアチンキナーゼ/クレアチンホスホキナーゼ [/S] |
異常値を示す検査 |
Adrenomedullin|アドレノメデュリン [/P] Atrial Natriuretic Peptide|心房性Na利尿ペプチド [/P] Brain Natriuretic Peptide|脳性Na利尿ペプチド [/P] Copper|銅 [/S] Creatine Kinase Isoenzyme|CKアイソザイム/CPKアイソザイム [/S] Creatine Kinase MB-Isoenzyme|CK-MB [/S] Endothelin-1|エンドセリン [/P] |
関連する検査の読み方 |
【心房性Na利尿ペプチド】 高値になる。ANPは心房の筋肉で産生・分泌されるホルモンで強力な水・Na利尿作用と血管弛緩作用がある。心房筋の伸展・収縮により産生されるため心房圧の上昇や体液量の増加があると産生量が増え血中量が増加する。臨床的には心不全の重症度に比例してANP濃度が増加するので、心不全の重症度診断、経過把握、治療効果判定に有用である。 【脳性Na利尿ペプチド】 心肥大が高度な症例では高値を示す。BNPは心室から分泌されるホルモンで、強力な水・Na利尿作用、血管弛緩作用、交感神経系とレニン・アンジオテンシン系の抑制作用、心不全の病態改善作用などがある。健常者の血中濃度は極めて低値であるが、心筋虚血、心筋肥大や心負荷により産生量が増え血中濃度は高値となる。臨床的には心室負荷を表す指標として有用であり、心不全特に慢性心不全の重症度評価、治療効果判定や経過観察に用いる。臨床的にはANPと同時に測定されるが、重症心不全ではANP濃度をはるかに超えて上昇する。このため心不全の指標としてはANPよりも優れている。 |
検体検査以外の検査計画 | 心超音波検査、心電図検査、心カテーテル検査、MRI検査、聴診、心音図検査 |