疾患解説
フリガナ | コウケツアツショウ |
別名 | 本態性高血圧症 |
臓器区分 | 循環器疾患 |
英疾患名 | Hypertension |
ICD10 | I10 |
疾患の概念 | 2回以上測定した診察室血圧の平均が、収縮期140mmHg以上、拡張期90mmHg以上の一方又は両方の場合に高血圧と診断する。家庭血圧は135/85mmHg以上を高血圧とする。原因不明の原発性(本態性)が最も一般的で、二次性高血圧の原因は腎疾患が多い。危険因子は、加齢、喫煙、肥満、運動不足、脂質異常症、糖尿病、微量アルブミン尿あるいはeGFR<60mL/min、若年発症の心疾患の家族歴である。高血圧は、全症例の85~95%が原発性で、残りが二次性である。原発性高血圧は、単一の原因ではなく、複数の因子が関与すると考えられる。遺伝は素因の1つとされるが、正確な機序は不明である。食事由来のNa、肥満、ストレスなどの環境因子は、若年者で遺伝的感受性のある場合は高血圧と関係があるとされている。また、65歳以上の患者では、大量の食塩摂取で、高血圧が誘発される可能性が高くなる。二次性高血圧は原発性アルドステロン症が最も頻度が高いと考えられている。このほか、慢性糸球体腎炎、腎盂腎炎、多発性嚢胞腎、結合組織疾患、閉塞性尿路疾患、腎血管障害、褐色細胞腫、クッシング症候群、先天性副腎過形成症、甲状腺機能亢進症、粘液水腫、大動脈縮窄症なども挙げられる。過度の飲酒と経口避妊薬の使用も高血圧の一般的な原因とされている。血圧は心拍出量と全末梢血管抵抗の積に等しいので、発生機序には心拍出量の増加、全末梢血管抵抗の上昇またはその両方が関与している。 |
診断の手掛 |
高血圧は通常、合併症が発症するまでは無症状であり、症状は脳血管障害、心疾患、腎疾患、血管疾患、網膜症などの合併症の発症に伴って初めて認められる。高血圧患者のうち、約90%は本態性高血圧症が占め、残り10%は腎実質疾患、腎血管疾患、褐色細胞腫、クッシング症候群、原発性アルドステロン症、大動脈縮窄症、閉塞性睡眠時無呼吸、Na貯留を生じる疾患である。症状を訴える患者は1.血圧の上昇そのもの 2.高血圧による血管障害 3.二次性高血圧の基礎ある疾患によるものに分けて考える。高血圧は血圧測定により診断、分類される。血圧測定は2回行い、最初は仰臥位または座位で、次に2分間以上の立位後に測定し、これらを計3日行い、測定結果の平均値を血圧とする。また、血圧は両腕で測定するのが理想的である。これは、15mmHgを上回る血圧の左右差があれば死亡率上昇との関連がみられるためである。 【診断基準:2014日本高血圧学会】 正常域血圧:至適血圧<120かつ<80 正常血圧120~129かつ/または80~84 正常高血圧130~139かつ/または85~89 高血圧:Ⅰ度高血圧140~159かつ/または90~99 Ⅱ度高血圧160~179かつ/または100~109 Ⅲ度高血圧≧180かつ/または≧110 収縮期高血圧≧140かつ<90 |
主訴 | 高血圧|Hypertension |
鑑別疾患 |
褐色細胞腫|Pheochromocytoma クッシング症候群|Cushing's Syndrome 血管炎症候群|Vasculitic Syndrome 原発性アルドステロン症|Primary Aldosteronism アルドステロン症 高血圧性脳症 高レニン血症 腎疾患 心膜炎 多血症 動脈塞栓症/血栓症 二次性高血圧症 妊娠高血圧症候群|Pregnancy-induced Hypertension 脳卒中|Apoplexy/Stroke 肺気腫|Pulmonary Emphysema 肥満症|Obesity メタボリック症候群|Metabolic Syndrome 急性ポルフィリン症 |
スクリーニング検査 |
Albumin|アルブミン [/S, /U] Alkaline Phosphatase|アルカリホスファターゼ/アルカリ性ホスファターゼ [/S] Aspartate Aminotransferase|アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ/グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ [/S] Calcium|カルシウム [/S, /U] CEA|癌胎児性抗原 [/S] Cholesterol|総コレステロール/コレステロール/コレステリン [/S] Cholinesterase|コリンエステラーゼ/ブチルコリンエステラーゼ/偽コリンエステラーゼ [/S] Creatinine|クレアチニン [/U, /S] Erythrocytes|赤血球数 [/B] Fibrinogen|フィブリノゲン/凝固第I因子 [/P] Glucose|グルコース/血糖/ブドウ糖 [/S] HDL-Cholesterol|HDL-コレステロール/高比重リポ蛋白コレステロール [/S, /S] Hematocrit|ヘマトクリット/赤血球容積率 [/B] Hemoglobin|ヘモグロビン/血色素量 [/B] Immunoglobulin G|免疫グロブリンG [/U] LDL-Cholesterol|LDL-コレステロール/低比重リポ蛋白コレステロール [/S] Magnesium|マグネシウム [/U] Phosphate|無機リン [/S] Platelets|血小板 [/B] Potassium|カリウム [/RBC, /S, /U] Protein-Total|総蛋白/血清総蛋白/血清蛋白定量 [/S, /U] Sodium|ナトリウム [/S, /U, /RBC, /U] Transferrin|トランスフェリン [/U] Triglycerides|トリグリセリド/中性脂肪/トリグリセライド/トリアシルグリセロール [/S] Urea Nitrogen|尿素窒素 [/S] Uric Acid|尿酸 [/U, /S] γ-Glutamyltranspeptidase|γ-グルタミルトランスペプチダーゼ/γ-グルタミルトランスフェラーゼ [/U] |
異常値を示す検査 |
2,3-Dinor-6-Keto-Prostaglandin F1α [/U] 25-Hydroxy Vitamin D|25-ヒドロキシビタミンD/25OHビタミンD [/S] 3-Methoxy-5-hydroxyphenylglycol [/CSF] 5-Hydroxyindoleacetic Acid|5-ヒドロキシインドール酢酸 [/CSF] 6-Keto-Prostaglandin F1α|6-ケトプロスタグランジンF1α/プロスタサイクリン [/P, /U] Adrenomedullin|アドレノメデュリン [/P] Aldolase|アルドラーゼ/アルドラーゼアイソザイム [/S] Aldosterone|アルドステロン [/U, /P] Amino-terminal Propeptide of Type III Procollagen [/S] Ammonia|アンモニア [/B] Angiotensin-converting Enzyme|アンギオテンシン変換酵素 [/S] Apolipoprotein A|アポリポ蛋白A-I [/S] Apolipoprotein A-I|アポリポ蛋白A-I [/S] Apolipoprotein A-II|アポリポ蛋白A-II [/S] Apolipoprotein B|アポリポ蛋白B [/S] Apolipoprotein C-II|アポリポ蛋白C-II [/S] Apolipoprotein E|アポリポ蛋白E [/S] Arginine Vasopressin|アルギニンバゾプレッシン/抗利尿ホルモン/バゾプレシン [/P, /P] Bicarbonate|血漿HCO3-濃度/重炭酸イオン [/S] Bradykinin|ブラジキニン [/U] Brain Natriuretic Peptide|脳性Na利尿ペプチド [/P] Calcium, Complexed|カルシウム [/S] Calcium, Protein-Bound [/S] Calcium, Ultrafiltrable [/S] Carcinoembryonic Antigen|癌胎児性抗原 [/S] Catecholamines|カテコールアミン総 [/P, /U] Cholesterol:HDL-Cholesterol Ratio [/S] Cholesterol:Phospholipid Ratio [/RBC] Chromogranin-A|クロモグラニンA [/S] Cortisol|コルチゾール [/P] Creatinine Clearance|クレアチニンクリアランス [/U] Dopamine|ドーパミン [/P, /U] Dopamine β-Hydroxylase|ドーパミンβ-水酸化酵素 [/S] Endothelin|エンドセリン [/U, /P] Endothelin-1|エンドセリン [/U, /P] Endothelin-3|エンドセリン [/P] Epinephrine|カテコールアミン総 [/P] Estradiol|エストラジオール/E2 [/P, /P] Factor VII|第VII因子活性/安定因子/プロコンバーチン [/P] Factor VIII Coagulant|第VIII因子活性/抗血友病因子 [/P] Fibronectin|フィブロネクチン [/P] High Molecular Weight β-Thromboglobulin [/U] Homocysteine|ホモシステイン/ホモシスチン/総ホモシステイン [/P] Homovanillic Acid|ホモバニリン酸 [/U] Hydrogen Peroxide|カタラーゼ [/P] Insulin|インスリン [/P, /P] Interleukin-2|インターロイキン-2 [/S] Ionized Calcium|イオン化カルシウム/Caイオン [/S] Kallikrein|カリクレイン [/U] Lecithin Cholesterol Acyltransferase:Cholesterol Ester Transfer Protein Ratio [/S] Lipoprotein Lp (a)|リポ蛋白(a)/リポプロテイン(a) [/S] Metanephrine|メタネフリン/メタアドレナリン/メタネフリン総 [/U] Monoamine Oxidase|モノアミンオキシダーゼ [/Platelets] N-Acetyl-Glucosaminidase|N-アセチルβ-D-グルコサミニダーゼ活性(尿)/尿中NAG活性 [/U] Norepinephrine|カテコールアミン総 [/P, /U] Normetanephrine|ノルメタネフリン [/U] Oubain-like Substance [/S] Parathyroid Hormone|副甲状腺ホルモン [/P, /P] Plasminogen|プラスミノゲン活性 [/P] Plasminogen Activator Inhibitor-1|プラスミノゲンアクチベータインヒビター-1 [/P] Platelet Aggregation|血小板凝集能 [/B] Platelet-derived Growth Factor|血小板由来成長因子/血小板由来増殖因子 [/P] Prostaglandin E2|プロスタグランジンE2 [/U] Prostaglandins|プロスタグランジンD2 [/P] Plasma Renin Activity|活性型レニン/血漿レニン活性/総レニン [/P, /P] Retinol-binding Protein|レチノール結合蛋白 [/U] Serine|セリン [/S, /S] Sex-Hormone Binding Globulin|性ホルモン結合グロブリン [/S] Soluble Fibrin Monomer|可溶性フィブリンモノマー複合体/フィブリンモノマー複合体 [/P] Soluble Intercellular Adhesion Molecule-1|可溶性ICAM-1/可溶性CD54/細胞接着分子-1 [/S] Thromboxane A2|トロンボキサンA2 [/P] Thromboxane B2|トロンボキサンB2 [/U, /P] Tissue Plasminogen Activator|組織プラスミノゲンアクチベータ [/P] Tissue Plasminogen Activator Antigen [/P] Viscosity|血液粘稠度/血液流体特性検査/血液流体変動能検査 [/B] Vitamin C|ビタミンC/アスコルビン酸 [/S] von Willebrand Factor|フォンウィルブランド因子活性/リストセチン・コファクター活性 [/P] von Willebrand Factor Antigen|第VIII因子様抗原/第VIII因子関連抗原/フォンウィルブランド因子抗原量 [/P] Zinc|亜鉛 [/S, /U] α1-Antitrypsin|α1-アンチトリプシン [/U] β-Glucuronidase|β-グルクロニダーゼ [/U] β-Thromboglobulin|β-トロンボグロブリン [/P] |
関連する検査の読み方 |
【サイクリックGMP】 体液貯留型の二次性高血圧症で増加する。 【HVA】 本態性高血圧症で高値を示す。 【血漿レニン活性】 低レニン性本態性高血圧症で低下。高レニン性、腎血管性、悪性高血圧症では基準範囲上限以上である。 【心房性Na利尿ペプチド】 増加する。ANPは心房の筋肉で産生・分泌されるホルモンで強力な水・Na利尿作用と血管弛緩作用がある。心房筋の伸展・収縮により産生されるため心房圧の上昇や体液量の増加があると産生量が増え血中量が増加する。 【脳性Na利尿ペプチド】 増加する。BNPは心室から分泌されるホルモンで、強力な水・Na利尿作用、血管弛緩作用、交感神経系とレニン・アンジオテンシン系の抑制作用、心不全の病態改善作用などがある。健常者の血中濃度は極めて低値であるが、心筋虚血、心筋肥大や心負荷により産生量が増え血中濃度は高値となる。 【収縮期・拡張期高血圧】 本態性高血圧(高血圧の原因の90%を占める)、二次性高血圧。 【収縮期高血圧】 甲状腺機能亢進症、ヘモグロビン7.0mg/dL以下の慢性貧血、動静脈瘻、脚気。 【K低下を伴う場合に除外する疾患】 原発性アルドステロン症、偽性アルドステロン症(甘草過量摂取)、続発性アルドステロン症、利尿剤投与による低K血症、腎疾患によるK喪失、クッシング症候群。 【関連する腎疾患】 腎動脈狭窄症、腎硬化症、腎動脈塞栓症、腎動脈瘤、糸球体腎炎、腎盂腎炎、多発性嚢胞腎、Kimmelstiel-Wilson症候群、アミロイドーシス、膠原病、レニン産生腫瘍。 【関連する中枢神経系疾患】 脳血管障害、脳腫瘍、灰白髄炎。 【関連する内分泌疾患】 褐色細胞腫、原発性アルドステロン症、クッシング症候群、先天性副腎過形成、副腎機能亢進、先端巨大症、甲状腺機能亢進症、副甲状腺機能亢進症。 【関連する薬物・薬剤・毒物】 経口避妊薬、三環系抗うつ薬、NSAIDs、鉛、アルコール、甘草。 【初回評価時の基本検査】 尿検査、顕微鏡的尿検査、ヘマトクリット、白血球数、血清K・Ca・iP、クレアチニン、UN、空腹時血糖、LDLコレステロール、中性脂肪、甲状腺ホルモン |
検体検査以外の検査計画 | 心電図検査、頸動脈超音波検査、腎超音波検査、胸部X線検査、心超音波検査、眼底検査、24時間血圧モニタリング |