疾患解説
フリガナ | アミロイドーシス |
別名 | |
臓器区分 | 代謝性疾患 |
英疾患名 | Amyloidosis |
ICD10 | E85.9 |
疾患の概念 | 線維構造を持つ不溶性のアミロイド蛋白が、臓器の細胞外に沈着することにより機能障害を起こす疾患群で、原発性(免疫グロブリン性)、続発性(反応性)、家族性に分けられる。アミロイド沈着は、少なくとも18種の蛋白が関与し、全てコンゴレッド染色陽性である。これらの蛋白は、局所に蓄積しても症状を引き起こさない場合もあるが、全身の複数の臓器に蓄積して重度の多臓器不全をもたらすこともある。全身性アミロイドーシスの主要な病型には、以下のものがある。1.原発性アミロイドーシス:クローン性免疫グロブリン軽鎖の後天性過剰発現が原因 2.家族性アミロイドーシス:ミスフォールディングを起こしやすい蛋白(トランスサイレチン)をコードする変異遺伝子の遺伝が原因 3.老人性全身性アミロイドーシス:野生型トランスサイレチンのミスフォールディングおよび凝集が原因 4.続発性アミロイドーシス:急性期反応物質である血清アミロイドAの凝集が原因 |
診断の手掛 |
症状と徴候は非特異的で、罹患した臓器に関連し全身倦怠感、心肥大、不整脈、肝腫大、悪心、嘔吐、下痢等の多彩な症状が見られるため、早期の診断は容易ではない。進行性の多臓器疾患がみられる患者は、全員アミロイドーシスを強く疑うべきである。肝腫大は患者の24~49%に見られる。腎臓ではネフローゼ症候群と腎不全、心臓は拘束型心筋症、末梢神経は神経障害、消化管は巨舌、下痢、悪心、嘔吐を発症する。臨床的に本症を疑う場合は、生検が第一選択になり、確定診断は病理学的所見による。 【診断基準:2015年厚労省】 ①主要症状及び所見 (a)全身衰弱・体重減少・貧血・浮腫・呼吸困難・胸痛・紫斑 (b)心電図における低電位・不整脈・伝導ブロック・QS型(V1~V3)・低血圧・心肥大 (c)頑固な便秘・下痢を主徴とする胃腸障害、吸収不良症候群 (d)蛋白尿・腎機能障害 (e)肝腫大・脾腫、ときにリンパ節腫大 (f)巨舌 (g)shoulder-pad sign、その他関節腫大 (h)多発性ニューロパチー (i)手根管症候群 (j)皮膚の強皮症様肥厚 (k)甲状腺、唾液腺などの硬性腫大 (l)免疫グロブリン異常:血清中にM蛋白又は尿中にベンスジョーンズ蛋白を見ることがある。 ②生検 ③診断の基準 1)確実:生検で陽性 2)疑い:(a)~(k)の1つ以上を認め、かつ(l)が陽性の場合は免疫グロブリン性アミロイドーシスが疑われる。3)可能性を考慮:(a)、(b)の1つ以上が存在する場合は、一応免疫グロブリン性、反応性AA、あるいは老人性TTRアミロイドーシスの可能性を考慮してみる。 |
主訴 |
嚥下障害|Dysphagia 黄疸|Jaundice 嘔吐|Vomiting 悪心|Nausea かゆみ|Itching 肝腫大|Hepatomegaly 巨舌|Macroglossia 筋力低下|Weakness 下血|Melena 下痢|Diarrhea 甲状腺腫|Thyroid enlargement/Goiter 呼吸困難|Dyspnea 紫斑|Purpura 出血傾向|Bleeding tendency/Hemorrhagic diathesis 消化管出血|Gastrointestinal bleeding 食欲不振|Anorexia 全身倦怠感|General malaise/Fatigue 動悸|Palpitations 発汗異常|Dyshidrosis/Paridrosis 脾腫|Splenomegaly 腹水|Ascites 浮腫|Edema/Dropsy 便秘|Constipation リンパ節腫脹|Lymphadenopathy |
鑑別疾患 |
巨舌症 手根管症候群 心筋症|Cardiomyopathy 呼吸器障害 腸閉塞|Intestinal Obstruction 内分泌腺腫症 ネフローゼ症候群|Nephrotic Syndrome 末梢神経障害 慢性腎不全|Chronic Renal Failure 多発性骨髄腫|Multiple Myeloma 自律神経障害 甲状腺腫 |
スクリーニング検査 |
Albumin|アルブミン [/S, /U] Alkaline Phosphatase|アルカリホスファターゼ/アルカリ性ホスファターゼ [/S] Aspartate Aminotransferase|アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ/グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ [/S] Bilirubin-Direct|直接ビリルビン/抱合型ビリルビン [/S] Bilirubin-Indirect|間接ビリルビン/非抱合型ビリルビン [/S] Bilirubin-Total|総ビリルビン/ビリルビン [/S] Calcium|カルシウム [/U] Chloride|クロール [/S] Cholesterol|総コレステロール/コレステロール/コレステリン [/S] Creatinine|クレアチニン [/S] Erythrocytes|赤血球数 [/U] Erythrocyte Sedimentation Rate|赤血球沈降速度 [/B] GFR|糸球体濾過量 [/U] Glucose|グルコース/血糖/ブドウ糖 [/U] Hematocrit|ヘマトクリット/赤血球容積率 [/B] Hemoglobin|ヘモグロビン/血色素量 [/B] Immunoglobulin A|免疫グロブリンA [/S] Immunoglobulin G|免疫グロブリンG [/S] Immunoglobulin M|免疫グロブリンM/マクログロブリン [/S] Leukocytes|白血球数 [/B, /B] Phosphate|無機リン [/S] Platelets|血小板 [/B] Potassium|カリウム [/S] Protein-Total|総蛋白/血清総蛋白/血清蛋白定量 [/S, /CSF, /U] Thyroid Stimulating Hormone|甲状腺刺激ホルモン [/S] Uric Acid|尿酸 [/S, /S] α2-Globulin|α2-グロブリン [/S] γ-Globulin|γ-グロブリン [/S, /S] |
異常値を示す検査 |
Acid Phosphatase|酸性ホスファターゼ [/S] Ammonium Ions|アンモニウムイオン [/U] Amyloid A Protein|血清アミロイドA蛋白/アポSAA/アミロイドA蛋白 [/S] Angiotensin-converting Enzyme|アンギオテンシン変換酵素 [/S] Anion Gap|アニオンギャップ [/U] Bence-Jones Protein|ベンスジョーンズ蛋白 [Present/S, Present/U] Bicarbonate|血漿HCO3-濃度/重炭酸イオン [/S] BSP Retention|BSP test/ブロムサルファレイン試験 [/S] CD45 Leukocytes|CD45 [/Tissue] Citrate|クエン酸/クエン酸塩 [/U] Complement C3|補体第3成分/β1C・β1Aグロブリン/C3 [/S] Congo Red Test|コンゴーレッド試験 [Positive/B,Positive/Tissue] D-Xylose Absorption Test|D-キシロース吸収試験/キシローゼ試験 [/U] Fat|脂肪(糞便) [/F] Haptoglobin|ハプトグロビン [/S] Immunoglobulins|免疫グロブリン [/S] Intercellular Adhesion Molecule-1|CD54 [/Tissue] Lipoproteins|リポ蛋白脂質分画 [/S] Net Acid Excretion|総酸排泄量 [/U] Osmolal Gap|浸透圧ギャップ [/U] pH|尿pH [/U, /U] Plasma Cells|形質細胞 [/Bone Marrow] Soluble Intercellular Adhesion Molecule-1|可溶性ICAM-1/可溶性CD54/細胞接着分子-1 [/U] α1-Antitrypsin|α1-アンチトリプシン [/S] α2-Macroglobulin|α2-マクログロブリン [/S] |
関連する検査の読み方 |
【ALP】 ALP1が高値である。 【CBC】 50%の症例で貧血を認める。白血球はしばしば増加する。 【D-キシロース吸収試験】 消化管での吸収能の評価に用いる。本症では排泄量は低値である。経口投与されたD-キシロースの60~70%は空腸で吸収され、体内で代謝を受けることなく吸収量の40~50%が腎から尿中に排泄される。このキシロースの性質を利用し、空腸機能検査として吸収不良症候群を疑う患者を診た場合に測定する。 【関節液一般検査】 非炎症性関節液の所見で、200~2,000/μL程度の白血球を認める。 【第X因子活性】 25%以下に低下することもある。 【血清アミロイドA蛋白】 続発性アミロイドーシスでは、増加したアミロイドAが細胞外間質に沈着し臓器障害を引き起こす。SAAは炎症時に組織に沈着する線維蛋白アミロイドAの前駆体で、炎症性サイトカインの作用で肝で産生される。急性相蛋白の性質を持ち、鋭敏度はCRPと同程度に炎症状態を反映するが、特にウイルス感染症や全身性エリテマトーデスではCRPよりも反応性は良い。 【骨髄像】 50%の症例で5%以上の形質細胞を認める。 【腎機能検査】 症例の50%で腎不全の所見が認められる。 【蛋白分画】 蛋白電気泳動では単クローン性スパイクが90以上の患者で認められる。M蛋白は尿中にも出現する。 【免疫電気泳動】 2/3の症例で単クローン性蛋白が検出される。 【尿一般検査】 腎アミロイドーシスでは蛋白尿を認める。 【尿単クローン性軽鎖】 血漿中のM蛋白が陰性でも尿中に認められれば、免疫細胞の悪性疾患(多発性骨髄腫、慢性リンパ性白血病、非ホジキンリンパ腫)の存在を疑う。 【ベンスジョーンズ蛋白】 尿中Bence-Jones蛋白が陽性のことがある。 【葉酸】 赤血球中の葉酸が低値のことがある。 【生検】 生検組織をコンゴーレッド染色し、偏光顕微鏡で特徴のある複屈折像の観察が確定診断の唯一の手段である。検体採取部位は皮膚、甲状腺、舌、唾液腺、胃など疑わしい病変部から採取する。感度は直腸・歯肉で約80%、骨髄で約50%、腹部脂肪吸引で70~80%である。免疫組織化学染色では、線維がκあるいはλ抗血清に反応して染色される。生検組織の電子顕微鏡像が最も特異性の高い診断法である。 【疾患の分類】 全身型(原発性アミロイドーシス、二次性アミロイドーシス、家族性アミロイドーシス)、 局所型(透析関連Aβ2マイクログロブリンアミロイドーシス、Aβ蛋白アミロイドーシス)。 |
検体検査以外の検査計画 | 心電図検査、心超音波検査、末梢神経伝導速度、骨X線検査、心筋シンチグラフィー |