疾患解説
フリガナ | コウリンケッショウ |
別名 | 高リン酸血症 |
臓器区分 | 電解質代謝疾患 |
英疾患名 | Hyperphosphatemia |
ICD10 | E83.3 |
疾患の概念 | 血清中のリンの濃度が、5mg/dLを超えたもので、1.腎不全による糸球体濾過量の低下 2.副甲状腺機能低下症やビタミンD過剰による尿細管での再吸収亢進 3.代謝性または呼吸性アシドーシスが要因である。高リン血症の主要な原因は、GFRが30mL/min未満、副甲状腺機能低下症、偽性副甲状腺機能低下症、過剰なPO4の経口投与、PO4含有浣腸薬の過度の使用、糖尿病性ケトアシドーシス、横紋筋融解症、重篤な全身感染、腫瘍崩壊症候のPO4の細胞外腔への移動などが挙げられる。 |
診断の手掛 | 特別の症状を示さないので、高リン血症を来す基礎疾患(術後副甲状腺機能低下症、特発性副甲状腺機能低下症、ビタミンD過剰症、腫瘍崩壊症候群、横紋筋融解症、腎不全など)のある患者は定期的にiPを測定する。血清リンが、急速に増加すると神経筋の被刺激性亢進、テタニーを引き起こす。また、血小板増加症と多発性骨髄腫では、血小板崩壊による血清リン値の見かけ上の上昇が見られることがあるので注意する。皮膚への沈着による強い痒みも診断の手がかりになる。低Ca血症を併発するとテタニーなどの低Ca血症症状が出現する可能性がある。慢性腎臓病患者は、軟部組織の石灰化がみられ、石灰化は、容易に触知できる皮下の硬い結節を作る。CaとPO4の積が慢性的に上昇した透析患者は、血管石灰化が起こり、脳卒中、心筋梗塞、跛行など心血管系合併症の主要な危険因子となるので注意する。 |
主訴 |
感覚障害|Sensory disturbance 痙攣発作|Seizures/Convulsion/Convulsive seizure テタニー|Tetany 抑うつ状態|Depressive state |
鑑別疾患 |
横紋筋融解症|Rhabdomyolysis 腫瘍崩壊症候群 腎不全 熱傷 ビタミンD過剰症 副甲状腺機能低下症|Hypoparathyroidism 嚢胞腎 糖尿病性ケトアシドーシス|Diabetic Ketoacidosis(DKA) |
スクリーニング検査 |
Alkaline Phosphatase|アルカリホスファターゼ/アルカリ性ホスファターゼ [/S] Calcium|カルシウム [/S] Lactate Dehydrogenase|乳酸デヒドロゲナーゼ [/S] Phosphate|無機リン [/S] |
異常値を示す検査 |
1,25-Dihydroxy Vitamin D3|1,25-ジヒドロキシビタミンD3/1α,25-ジヒドロキシビタミンD/活性型ビタミンD [/S] Acid Phosphatase|酸性ホスファターゼ [/S] Alanine Aminopeptidase [/S] Alkaline Phosphatase, Bone Isoenzyme|骨型アルカリホスファターゼ/骨性ALP [/S] Mucopolysaccharides|酸性ムコ多糖分画/コンドロイチン硫酸分画/グリコサミノグリカン分画 [/S] |
関連する検査の読み方 |
【無機リン】 高リン血症はPO4濃度により診断され、PO4濃度が4.5mg/dL(1.46mmol/L)を上回る。IPは生体内にCaに次いで多く存在する無機物で約500~800gあり、80~90%は骨に、15%が細胞内液に分布し細胞外液は0.1%程度と少ない。臨床的にはイオン化したリンをCaと共に骨代謝の異常を知るために測定する。ただし、IPは血清中では生理作用がないため、IP量が変動しても症状として現れることはない。 【1,25-ジヒドロキシビタミンD3】 高値になると高リン血症を来す。ビタミンD3はビタミンDの代謝産物の一つで活性型ビタミンDとも呼ばれている。この検査はビタミンDの効果判定、活性型ビタミンDの薬剤モニタリング、Ca代謝調節ホルモンの測定に用いる。腎に於けるビタミンDの活性化は、血清中のCa、リンの濃度とPTHなどで調節されているため腎や副甲状腺に障害があると、活性化が不十分になり骨疾患が発症するので、ビタミンDの活性化障害が存在するか否かの判断に有用である。 【Ca】 低値であればPTH分泌低下。高値であればビタミンD過剰症を疑う。増減が全くなければ偽性高リン血症を考える。リンにより血管内キレート化が起こることがあり、この場合低Ca血症となる。Caは生体内に最も多量に存在する無機質で、99%以上が骨と歯に、1%程度が骨格筋と細胞外液に存在する。血中では50%以上が遊離型(イオン化カルシウム )で、残りがアルブミンやカルシウム塩と結合している。血中のCa量は副甲状腺ホルモン(PTH)と活性型ビタミンDでコントロールされている。Ca濃度が低下すると、PTHの分泌が刺激され、分泌されたPTHは腎でビタミンDを活性化する。また、PTHは骨からCaの放出を促し、活性化されたビタミンDは腸管でCa吸収を亢進させ、腎でのCa細吸収を増加させる。 【Mg】 低Mg血症はPTHの分泌と作用を抑制する。 【副甲状腺ホルモンインタクト】 高値であると高リン血症を来す。 【腎機能検査】 GFR<20mL/分になると排泄が抑制され、高値となる。 |
検体検査以外の検査計画 |