疾患解説
フリガナ | フクコウジョウセンキノウテイカショウ |
別名 | |
臓器区分 | 内分泌疾患 |
英疾患名 | Hypoparathyroidism |
ICD10 | E20.9 |
疾患の概念 | 血清Ca濃度が、8.8mg/dL(イオン化Ca4.7mg/dL)以下を低Ca血症と呼ぶ。副甲状腺ホルモンの分泌不全による分泌低下型と、標的臓器の副甲状腺ホルモンに対する不応による偽性に分けられる。intact PTHが30pg/mL未満なら分泌低下型、30pg/mL以上なら偽性を疑う。臨床的には、低Ca血症によるテタニーや痙攣が問題となる。低Ca血症と高リン酸血症が特徴的である。 |
診断の手掛 |
低Ca血症による痙攣、てんかん発作、テタニー、感覚異常などの症状を訴える患者を診たら本症を疑う。低Ca血症は、心電図上QTの延長として見つかる場合もある。甲状腺手術を受けた患者は、通常は低Ca血症が24~48時間後に発症するが、数年間の経過観察が必要である。クヴォステク徴候、トルソー徴候を見逃さない。 【診断基準:2015年厚労省】 A.症状:1.口周囲や手足などのしびれ、錯感覚 2.テタニー 3.全身痙攣。 B.検査所見:1.低Ca血症 2.eGFR 30mL/min/1.73m²以上 3.Intact PTH 30pg/mL未満。 C.鑑別診断:二次性副甲状腺機能低下症、ヘモクロマトーシス、ウィルソン病、母体の原発性副甲状腺機能亢進症、Mg補充により治癒する疾患。 D.診断:1.Definite:症状Aのうち1項目以上と検査所見Bのうち3項目を満たすもの。 2.Probable:検査所見Bのうち3項目をみたすもの。 3.Possible:検査所見Bのうち1と3を満たすもの。 |
主訴 |
感覚障害|Sensory disturbance 感情不安定|Emotional lability 強直性痙攣|Tonic convulsion クヴォステク徴候|Chvostek sign 痙攣発作|Seizures/Convulsion/Convulsive seizure 色素沈着|Pigmentation/Chromatosis 精神障害|Mental disorder 脱毛|Alopecia 爪変形|Nail deformity 低身長|Short stature テタニー|Tetany てんかん発作|Epileptic stroke/Epileptic seizure トルソー徴候|Trousseau sign パーキンソン様症状|Parkinsonian symptom 頻脈|Tachycardia 抑うつ状態|Depressive state |
鑑別疾患 |
アジソン病/急性副腎不全|Addison's Disease/Adrenal Crisis カンジダ症 偽性副甲状腺機能低下症 再生不良性貧血|Aplastic Anemia 低Mg血症|Hypomagnesemia 糖尿病|Diabetes Mellitus 特発性副甲状腺機能低下症 |
スクリーニング検査 |
Alkaline Phosphatase|アルカリホスファターゼ/アルカリ性ホスファターゼ [/S] Calcium|カルシウム [/S, /U, /U] Chloride|クロール [/U] Magnesium|マグネシウム [/S, /U, /RBC] Phosphate|無機リン [/S, /U, /S] Uric Acid|尿酸 [/S] |
異常値を示す検査 |
1,25-Dihydroxy Vitamin D|1,25-ジヒドロキシビタミンD3/1α,25-ジヒドロキシビタミンD/活性型ビタミンD [/S] 1,25-Dihydroxy Vitamin D3|1,25-ジヒドロキシビタミンD3/1α,25-ジヒドロキシビタミンD/活性型ビタミンD [/S] Amyloid β-Protein Precursor|アミロイドβ蛋白質前駆体 [/CSF] Bicarbonate|血漿HCO3-濃度/重炭酸イオン [/S] Glucose Tolerance|ブドウ糖負荷試験/グルコース負荷試験 [/S] Hydroxyproline|総ヒドロキシプロリン/ヒドロキシプロリン [/U] Osteocalcin|オステオカルシン [/S] Parathyroid Hormone|副甲状腺ホルモン [/P] Parathyroid Hormone 1-84|副甲状腺ホルモン1-84 [/P] pH|尿pH [/B] α1-Antichymotrypsin|α1-アンチキモトリプシン [/CSF] |
関連する検査の読み方 |
【電解質】 血清Ca低値、尿中Ca低値、血清リン酸高値である。血清Mgは低値のことが多く、症状の悪化と関連がある。 【ALP】 基準範囲内か、やや低値となる。 【アルブミン】 偽性低Ca血症を除外するために必ず測定する。 【高感度副甲状腺ホルモン】 低値になり、診断に有用である。 【サイクリックAMP】 腎原性のcAMPの値は1.8μmol/日以下に低下する。 cAMPは細胞内の情報伝達、細胞分化、増殖、免疫や各種代謝などに関与しており、ATPを基質として産生される。臨床的には高Ca血症あるいは低Ca血症の鑑別診断の際に副甲状腺機能異常が疑われるときや肝予備能検査であるグルカゴン負荷試験のマーカーとして測定される。腎原性cAMPの算定:腎原性cAMP(nmol/dL)=尿cAMP×sCr/uCr-血漿cAMP(基準値:0.8~2.8nmol/dlGF) 【尿サイクリックAMP】 排泄量は2μmol/日以下に低下する。 【Ellsworth-Howard試験】 副甲状腺機能低下症が疑われる場合、病型診断のために行う。この試験は外因性に副甲状腺ホルモンを投与し、腎でのPTHの反応を見る検査で、腎のPTH受容体以降の機能を把握できる。副甲状腺機能低下症の鑑別には必須の検査である。 血中PTH高値、尿中P反応(−)、尿中cAMP反応(−):偽副甲状腺機能低下症Ⅰ型 血中PTH高値、尿中P反応(−)、尿中cAMP反応(+):偽副甲状腺機能低下症Ⅱ型 血中PTH高値、尿中P反応(+)、尿中cAMP反応(+):偽性特発性副甲状腺機能低下症 血中PTH低値、尿中P反応(+)、尿中cAMP反応(+):特発性副甲状腺機能低下症 |
検体検査以外の検査計画 | 心電図検査、頭部X線検査、頭部CT検査 |