疾患解説
フリガナ | シンゲンセイショック |
別名 | |
臓器区分 | 救急疾患 |
英疾患名 | Cardiogenic Shock |
ICD10 | R57.0 |
疾患の概念 | 急性心筋梗塞、急性心筋炎、慢性心不全の急性増悪、大動脈解離、肺血栓塞栓症、右室梗塞、感染性心内膜炎、人工弁機能不全、頻脈性不整脈、心タンポナーデなどにより急激に心ポンプ機能が低下し、循環動態が維持出来なくなり、全身性の循環障害を来す疾患である。急性心不全の一病型とされているが、そのなかでは最も重篤な病態で致死率が高い。殆どの原因は急性心筋梗塞で、左室ポンプ機能の急激かつ著明な低下で発症する.左室心筋の40%以上が壊死に陥ると心原性ショックとなる. |
診断の手掛 |
急激に進行する呼吸困難、胸痛、顔面や四肢が蒼白で冷汗を呈する患者を診たら本症を疑う。診断の最も大切な手掛かりは心原性ショックの原因となる疾患を常に念頭に置いて置くことである。急性筋梗塞に続発する場合は、低血圧≦60mmHg、心拍出量の減少≦2.0L/min/m2、心内圧の上昇>18mmHg、末梢血管抵抗増大、臓器低潅流を伴う。身体診察でショックの根底にある疾患を推察する。胸痛:心筋梗塞、大動脈解離、肺梗塞、腹部・背部痛:膵炎、腹部大動脈瘤破裂、腹膜炎、子宮外妊娠破裂、発熱・悪寒:敗血症 【診断基準 Myocardial Infarction Reseachi Unit】 1.収縮期血圧が80mmHg未満、または通常の血圧より30mmHg低下。 2.以下の循環不全所見の全てがある、a)尿量<20mL/時未満(低Na尿)、b)意識障害、c)末梢血管収縮:四肢冷感、冷汗 |
主訴 |
意識障害|Memory impaiment 顔面蒼白|Pallor of face 胸痛|Chest pain 呼吸困難|Dyspnea 四肢冷感|Cold sensation of extremity 頻脈|Tachycardia 冷汗|Cold sweat |
鑑別疾患 |
低容量性ショック アナフィラキシーショック エンドトキシンショック |
スクリーニング検査 |
ALT|アラニンアミノトランスフェラーゼ/グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ [/S] AST|アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ/グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ [/S] Creatinine|クレアチニン [/S] Urea Nitrogen|尿素窒素 [/S] |
異常値を示す検査 |
Brain Natriuretic Peptide|脳性Na利尿ペプチド [/P] Creatine Kinase|クレアチンキナーゼ/クレアチンホスホキナーゼ [/S] Creatine Kinase MB-Isoenzyme|CK-MB [/S] Endothelin-1|エンドセリン [/P] Human Heart Fatty Acid Binding Protein|ヒト心臓型脂肪酸結合蛋白 [/S] Interleukin-6|インターロイキン-6 [/S] Procalcitonin|プロカルシトニン [/P] Soluble Tumor Necrosis Factor Receptor-p55 [/S] Soluble Tumor Necrosis Factor Receptor-p75 [/S] Troponin I|心筋トロポニンI/トロポニンI [/P] Troponin T|心筋トロポニンT/トロポニンT [/P] Tumor Necrosis Factor-α|腫瘍壊死因子-α [/S] |
関連する検査の読み方 |
【逸脱酵素】 急性心筋梗塞や急性心筋炎であれば、CK,CK-MB,トロポニンT,トロポニンI,H-FABP,AST,ALT,LDなどが、高値になる。AST/ALTの上昇は心筋梗塞や心筋炎であれば数百どまりだが、ショックによる肝灌流障害があるとALT優位で数千までの上昇がみられることもある。 【クレアチニン、UN】 腎血流の低下により乏尿になり、血清クレアチニンとUNが上昇する。 【D-ダイマー】 肺血栓塞栓症を疑えば、Dダイマーの測定が重要である。線溶現象で分解された安定化フィブリンのプラスミン分解産物の一つで、安定化フィブリンの分解によってのみ産生される二次線溶に特異的な物質である。このためDダイマーの増加があれば二次線溶の亢進と判断してよい。ただし、二次線溶が亢進している時は一次線溶も亢進しているので、FDPも同時に測定することが望ましい。 【BNP】 高値になるが、その程度は様々である。BNPは心室から分泌されるホルモンで、強力な水・Na利尿作用、血管弛緩作用、交感神経系とレニン・アンジオテンシン系の抑制作用、心不全の病態改善作用などがある。健常者の血中濃度は極めて低値であるが、心筋虚血、心筋肥大や心負荷により産生量が増え血中濃度は高値となる。臨床的には心室負荷を表す指標として有用であり、心不全特に慢性心不全の重症度評価、治療効果判定や経過観察に用いる。臨床的にはANPと同時に測定されるが、重症心不全ではANP濃度をはるかに超えて上昇する。このため心不全の指標としてはANPよりも優れている。 【動脈血ガス分析】 酸素分圧と酸素飽和度の低下がみられ、炭酸ガス分圧は重症肺水腫を伴っていなければむしろ低下し、pHは組織灌流障害のためアシドーシスに傾いている。 【砒素】 心筋障害によるショックを起こすので検査を必要とする。Asは元素そのものによる中毒例は殆どないが、化合物が毒性を持ち、急性中毒を引き起こす。毒性の強さはアルシン>亜砒酸塩>砒酸塩>有機砒素の順である。肺や消化管から吸収された無機砒素化合物は殆どが赤血球中に入り、24時間程度経過すると肝、腎、肺、脾、消化管、皮膚に移行する。急性中毒症状は消化管刺激症状、筋肉痛、皮膚の発赤で1ヶ月後には手爪にミーズ線を見る。 【パラコート】 心原性ショックの原因物質であり必要に応じ検査する。 |
検体検査以外の検査計画 | 胸部X線検査、心ドップラ超音波検査、冠動脈造影検査、心臓カテーテル検査、造影CT検査 |