疾患解説
フリガナ | テイCaケッショウ |
別名 | |
臓器区分 | 電解質代謝疾患 |
英疾患名 | Hypocalcemia |
ICD10 | E83.5 |
疾患の概念 | 低Ca血症とは、血中総Ca値が8.8mg/dL、イオン化Caが4.7mg/dL以下になったもので、神経・筋の興奮性が亢進するため、手足のシビレ感や骨格筋の痙攣を引き起こす。低Ca血症を引き起こす疾患は、副甲状腺機能低下症、偽性副甲状腺機能低下症、ビタミンD欠乏症と腎疾患がある。その他の原因としては、Mg不足、低リン血症、急性膵炎、低蛋白血症、Hungry bone症候群、敗血症性ショック、抗痙攣剤、クエン酸入り血液輸血が挙げられる。 |
診断の手掛 | 口の周囲や指肢端部のシビレ感、異常感覚、こわばりを訴える患者を診たら本症を疑う。低Ca血症の臨床症状は、細胞膜電位の異常による神経・筋の易興奮性が原因で、しばしば神経疾患と誤診されるので注意する。血清Caの測定で診断できるが、血中Caの50%はアルブミンと結合しているので、4g/dL以下の低アルブミン血症の場合は補正Ca値(mg/dL)=実測Ca値+{40-血中アルブミン値(g/dL)}を算出する。総Ca濃度が7mg/dL未満になるとテタニー、喉頭痙攣、全身性痙攣を引き起こす恐れがある。診察の際にはChvostec徴候とTrousseau徴候を確認する。クヴォステク徴候とは、外耳道前方の顔面神経を軽く叩打すると誘発される顔面筋の不随意収縮で、健常者の10%以下、急性低Ca血症患者の大半に認められるが、慢性低Ca血症患者では見られないことが多い。トルソー徴候とは、収縮期血圧を20mmHg以上にした血圧測定用カフで、前腕を3分間加圧し、血液供給を抑えることで誘発される手の攣縮で、アルカローシス、低Mg血症、低K血症、高K血症でみられるが、電解質異常でない人の約6%にも見られるので注意する。 |
主訴 |
嘔吐|Vomiting 悪心|Nausea 感覚障害|Sensory disturbance クヴォステク徴候|Chvostek sign 痙攣発作|Seizures/Convulsion/Convulsive seizure 血圧低下|Blood pressure decreased 下痢|Diarrhea こわばり|Stiffness しびれ|Numbness テタニー|Tetany トルソー徴候|Trousseau sign 不整脈|Arrhythmia 抑うつ状態|Depressive state |
鑑別疾患 |
甲状腺癌|Cancer of Thyroid 横紋筋融解症|Rhabdomyolysis 肝機能障害 高リン血症|Hyperphosphatemia 腎不全 膵炎 低Mg血症|Hypomagnesemia 熱傷 敗血症|Sepsis ビタミンD欠乏症|Vitamin D Deficiency 副甲状腺機能低下症|Hypoparathyroidism 慢性腎不全|Chronic Renal Failure |
スクリーニング検査 |
Calcium|カルシウム [/S,/U] Phosphate|無機リン [/S,/U] |
異常値を示す検査 | Parathyroid Hormone Intact|副甲状腺ホルモンインタクト/インタクト副甲状腺ホルモン [/S] |
関連する検査の読み方 |
【Ca】【無機リン】 Caは低下、無機リンは増加する。総Caが7mg/dL(1.75mmol/L)未満、またはイオン化Caが3.0mg/dL未満になるまでは低Ca血症の症状出現は稀である。 【サイクリックAMP】 副甲状腺機能の評価に用いる。cAMPは細胞内の情報伝達、細胞分化、増殖、免疫や各種代謝などに関与しており、ATPを基質として産生される。臨床的には高Ca血症あるいは低Ca血症の鑑別診断の際に副甲状腺機能異常が疑われるときや肝予備能検査であるグルカゴン負荷試験のマーカーとして測定される。 【アルブミン】 偽性低Ca血症を除外するために必ず測定する。血中Caの50%はアルブミンと結合しているので、4g/dL以下の場合は補正する。補正Ca値(mg/dL)=実測Ca+[40-アルブミン値(g/dL)] 【副甲状腺ホルモン】 低Ca血症にもかかわらず低値であれば、副甲状腺機能低下症を疑う。ビタミンD欠乏症、副甲状腺ホルモン抵抗性、高リン酸血症では高値になることが多い。 【Mg】 低Ca血症の検索ではMg欠乏を除外する必要がある。 【副甲状腺ホルモン負荷試験】 この試験は外因性に副甲状腺ホルモンを投与し、腎でのPTHの反応を見る検査で、腎のPTH受容体以降の機能を把握できる。副甲状腺機能低下症の鑑別には必須の検査である。 血中PTH高値、尿中P反応(−)、尿中cAMP反応(−):偽副甲状腺機能低下症Ⅰ型 血中PTH高値、尿中P反応(−)、尿中cAMP反応(+):偽副甲状腺機能低下症Ⅱ型 血中PTH高値、尿中P反応(+)、尿中cAMP反応(+):偽性特発性副甲状腺機能低下症 血中PTH低値、尿中P反応(+)、尿中cAMP反応(+):特発性副甲状腺機能低下症 |
検体検査以外の検査計画 | 中手骨X線検査、頭部X線検査、心電図検査 |