疾患解説
フリガナ | ハイスイシュ |
別名 | |
臓器区分 | 呼吸器疾患 |
英疾患名 | Pulmonary Edema |
ICD10 | J81 |
疾患の概念 | 肺水腫は、肺静脈性肺高血圧と肺胞内の体液貯留を伴った重度の急性左室不全で、血管内と血管外の圧力バランスの異常、透過性の亢進が原因である。左室圧が上昇すると、血漿成分が肺毛細血管から間質および肺胞内へと急速に移動し肺水腫が引き起こされる。誘発因子は、約半数が急性冠虚血で、一部は高血圧による。この疾患は、心原性肺水腫と非心原性肺水腫に分けられる。 |
診断の手掛 | 急性低酸素血症の症状である呼吸困難、頻呼吸、不安、落ち着きのなさを訴える患者を診たら本症を疑う。患者は極度の呼吸困難、不穏、窒息感を伴う不安により受診する。血痰を伴う咳嗽、蒼白、チアノーゼ、発汗がよく見られるが、喀血は稀である。脈拍は速く血圧は一定しないが、収縮期血圧100mgHg未満は、予後不良である。頸静脈怒張や末梢浮腫などの右室不全の徴候が見られることもあるので、見逃さない。 |
主訴 |
呼吸困難|Dyspnea 錯乱|Confusion 咳|Cough 痰|Sputum チアノーゼ|Cyanosis/Cyanopathy 発汗異常|Dyshidrosis/Paridrosis 頻呼吸|Tachypnea 頻脈|Tachycardia 不安|Anxiety 泡沫状痰|Foamy sputum |
鑑別疾患 |
過敏性肺炎 気管支喘息 気管内異物 急性心筋梗塞|Acute Myocardial Infarction(AMI) 心室中隔欠損症 心不全|Heart Failure 僧帽弁狭窄症 肺炎|Pneumonia 急性呼吸促迫症候群|Acute Respiratory Distress Syndrome(ARDS) 急性腎不全|Acute Renal Failure コレラ|Cholera 化学物質(砒素、パラコート) |
スクリーニング検査 | Creatine Kinase|クレアチンキナーゼ/クレアチンホスホキナーゼ [/S] |
異常値を示す検査 |
Brain Natriuretic Peptide|脳性Na利尿ペプチド [/P] Carbon Dioxide Partial Pressure|動脈血CO2分圧/炭酸ガス分圧/CO2分圧/PCO2/PaCO2 [/B] N-Terminal Pro-Brain Natriuretic Peptide|脳性Na利尿ペプチド前駆体N端フラグメント/ヒト脳性Na利尿ペプチド前駆体N端フラグメント [/S] Oxygen Partial Pressure|動脈血O2分圧/酸素分圧/O2分圧/PO2 [/B] Oxygen Saturation|酸素飽和度/O2飽和度 [/B] pH|尿pH [/B, /B] |
関連する検査の読み方 |
【動脈血ガス分析】 通常PaCO₂は低値を示すが、重症例ではCO₂の蓄積をきたす。 【急性呼吸促迫症候群の診断】 PaO₂/FiO₂が200torr以下。 【急性肺損傷の診断】 PaO₂/FiO₂が300torr以下。 【脳性Na利尿ペプチド】 心不全による肺水腫で高値を示す。BNPは心室から分泌されるホルモンで、強力な水・Na利尿作用、血管弛緩作用、交感神経系とレニン・アンジオテンシン系の抑制作用、心不全の病態改善作用などがある。健常者の血中濃度は極めて低値であるが、心筋虚血、心筋肥大や心負荷により産生量が増え血中濃度は高値となる。臨床的には心室負荷を表す指標として有用であり、心不全特に慢性心不全の重症度評価、治療効果判定や経過観察に用いる。臨床的にはANPと同時に測定されるが、重症心不全ではANP濃度をはるかに超えて上昇する。このため心不全の指標としてはANPよりも優れている。 【脳性Na利尿ペプチド前駆体N端フラグメント】 高値になる。NT-proBNPは強力な水・Na利尿作用と血管弛緩作用を有するBNPの前駆体フラグメントである。心筋細胞の負荷が増加すると脳性Na利尿ペプチド前駆体の産生が促進されるが、蛋白分解酵素の作用でBNPとNT-proBNPに分解され血中に分泌される。NT-proBNPはBNPに比べ半減期が長いため血中濃度の上昇が顕著であり、測定も短時間で出来るためBNPと同様の臨床的意義を持つ。臨床的には心室の負荷を反映する指標、心不全の早期診断、慢性心不全の重症度の把握などに用いる。 |
検体検査以外の検査計画 | 胸部X線検査、胸部CT検査、心超音波検査、呼吸機能検査、肺動脈カテーテルモニタリング |