疾患解説
フリガナ | アトピーセイヒフエン |
別名 | |
臓器区分 | アレルギー疾患 |
英疾患名 | Atopic Dermatitis |
ICD10 | L20.9 |
疾患の概念 | アトピー性皮膚炎は、遺伝因子と環境因子の相互作用で生じる、免疫が介在する皮膚の炎症で、増悪と寛解を繰り返す痒みのある湿疹を主病変とする疾患で、患者の多くは、遺伝的なアトピー素因を持つ。また、患者の70%に喘息、枯草熱、皮膚炎の家族歴が見られる。症例の70~80%はIgEが介在する外因型であるが、残りはIgEが介在しない内因型である。内因型は家族性の発症はなく、特発性である。本症は主に都市部または先進国の小児に発症し、過去30年で有病率は増加しており、先進国の小児の最大20%と成人の2~10%が罹患していると考えられる。患者の大半は5歳までに発症し、その多くは1歳未満である。発症に関与している環境抗原は食物(牛乳、卵、大豆、小麦、ピーナッツ、魚など)、空中アレルゲン(チリ、ダニ、カビ、フケなど)、内因性抗菌ペプチドの不足による黄色ブドウ球菌の皮膚への定着、化粧品などである。 |
診断の手掛 |
慢性で左右対称性に、痒みのある湿疹病変を持つ患者を診たら本症を疑う。湿疹は、小疱形成が特徴的で、患部は手足と四肢の屈側皮膚に多く見られる。80%の患者は5歳までに発症する。乳児は2ヶ月以上、その他は6ヶ月以上症状が反復すれば慢性とする。 【診断基準:2003年日本皮膚科学会】 1)掻痒 2)特徴的皮疹の分布 a)皮疹の湿疹病変:急性病変=紅斑、浸潤性紅斑、丘疹、漿液性丘疹、鱗屑、痂皮 慢性病病変=浸潤性紅斑、苔癬化病変、痒疹、鱗屑、痂皮 b)分布:左右対称性 好発部位:前額、眼周、口囲、口唇、耳介周囲、頸部、四肢関節部、体躯 参考となる年齢による特徴: 乳児期:頭、頭に始まりしばしば体幹、四肢に降下 乳小児期:頸部、四肢屈曲部の病変 思春期成人期:上半身(顔、頸、胸、背)に皮疹が強い傾向 3)慢性・反復性経過(しばしば新旧の皮疹が混在する)乳児では2ヶ月以上、その他は6ヶ月以上を慢性とする。 *上記1)2)及び3)の項目を満たすものを、症状の軽重を問わずアトピー性皮膚炎と診断する。その他は急性あるいは慢性の湿疹とし、経過を参考にして診断する。 除外すべき疾患:手接触性皮膚炎、汗疹、脂漏性皮膚炎、皮脂欠乏性湿疹、疥癬、湿疹 |
主訴 |
角化性丘疹|Keratinized papule かゆみ|Itching 紅斑|Erythema/Rubedo 湿疹|Eczema 苔癬|Lichen デニー・モルガン徴候|Dennie-Morgan sign 肥厚|Hyperplasia/Hypertrophy ヘルトゲ徴候|Hertoghe sign 落屑|Desquamation/Scaling |
鑑別疾患 |
接触皮膚炎 脂漏性皮膚炎 単純性痒疹 疥癬 汗疹 魚鱗癬 皮脂欠乏性湿疹 手湿疹 皮膚リンパ腫 乾癬|Psoriasis Netherton症候群 全身性エリテマトーデス|Systemic Lupus Erythematosus(SLE) 皮膚筋炎 光線過敏症 |
スクリーニング検査 | Eosinophils|好酸球 [/B] |
異常値を示す検査 |
Allergen-Specific IgE Antibodies|アレルゲン特異IgE/特異的IgE [/S] Allergen-Specific IgE Multiple Antigen Simultaneous Test|アレルゲン特異IgE-MAST [/S] Eosinophil Cationic Protein|好酸球塩基性蛋白/好酸球顆粒蛋白/好酸球陽イオン蛋白/好酸球陽性荷電蛋白 [/S] Immunoglobulin E|免疫グロブリンE/非特異的IgE/レアギン抗体 [/S] Interleukin-4|インターロイキン-4 [/S] Myelin Basic Protein|ミエリン塩基性蛋白/EAE起炎性蛋白 [/S] Soluble CD30 [/S] Soluble E-Cadherin|可溶性E-カドヘリン [/S] Soluble E-Selectin|可溶性E-セレクチン/可溶性CD62E/可溶性ELAM-1 [/S] Soluble Interleukin-2 Receptor|可溶性 IL-2レセプター/IL-2レセプター/可溶性 IL-2受容体 [/S] Thymus and Activation-Regulated Chemokine|ヒトTARC/Th2ケモカイン [/S] Tumor Necrosis Factor-α|腫瘍壊死因子-α [/S] |
関連する検査の読み方 |
【ヒトTARC】 TARCは白血球に発現するCCR4受容体に結合し、白血球の遊走を制御するケモカインの一種である。産生細胞は免疫担当細胞、上皮細胞、線維芽細胞などで、TNF-αやINF-γによって産生が亢進する。臨床的にはアトピー性皮膚炎の病態成立の関与しているケモカインと考えられ、アトピー性皮膚炎の重症度評価の指標とされる。 【アレルゲン特異IgE】 皮膚テストと共にアレルギー性増悪因子の把握ができる。アレルゲン特異IgEはI型アレルギーの主要抗体で、約200種のアレルゲンが測定可能である。臨床的にはアレルギーの原因の確定、スコア算出によるアレルギーの程度判定や経過観察に有用である。 【IgE】 増加するが非特異的である。IgEは肥満細胞や好塩基球のIgEレセプターに結合し、ヒスタミンやロイコトリエンなど様々なケミカルメディエーターを放出しI型アレルギーを引き起こす。臨床的にはアレルギー疾患、寄生虫疾患の他、全身性エリテマトーデスや関節リウマチなどで高値となる。IgEはアレルギーと密接な関係にあるが総IgE値はアレルギーの強さを必ずしも反映しない。異常値を見た場合は特異IgEを測定する。 【好酸球】 血液と組織中に増加するが非特異的である。 |
検体検査以外の検査計画 | プリックテスト、パッチテスト |