疾患解説
フリガナ | コウジョウセンズイヨウガン |
別名 | |
臓器区分 | 内分泌疾患 |
英疾患名 | Medullary Carcinoma of Thyroid |
ICD10 | C73 |
疾患の概念 | 髄様癌は全甲状腺癌の約3%を占め、カルシトニンを産生する傍濾胞細胞(C細胞)からなる腫瘍で、しばしば家族性で、ret癌原遺伝子の変異が原因である。家族性髄様癌は、単独で発生するタイプと多発性内分泌腫瘍(MEN)2型に分類されるものがある。患者には、無症候性の甲状腺結節をみるが、最近は触知可能な腫瘍が生じる前に2A型または2B型のMEN家系に対するスクリーニングで診断される場合が多い。髄様癌はACTH、VIP、プロスタグランジン類、カリクレイン類、セロトニンの異所性産生を伴うと劇的な生化学所見を呈することがある。 |
診断の手掛 | 患者は無症候性の甲状腺結節を訴えるが、ホルモンやペプチド類(ACTH、VIP、セロトニン、プロスタグランジン類、カリクレイン類)などの異所性産生を伴うときは、臨床的または生化学的な異常所見を呈する。血清カルシトニンおよびCEA高値以外には確実な診断法はない。髄様癌患者は全員遺伝子検査を受けるべきであり、変異を有する近親者には遺伝子検査、ならびにカルシトニンの基礎値および刺激後の測定を行うべきである。 |
主訴 |
嚥下障害|Dysphagia 下痢|Diarrhea 甲状腺腫|Thyroid enlargement/Goiter 呼吸困難|Dyspnea 嗄声|Hoarseness |
鑑別疾患 |
褐色細胞腫|Pheochromocytoma 甲状腺機能亢進症|Hyperthyroidism 甲状腺乳頭癌 甲状腺濾胞癌 甲状腺未分化癌 悪性リンパ腫|Malignant Lymphoma 多発性内分泌腫瘍症 内分泌性アミロイドーシス |
スクリーニング検査 |
Aspartate Aminotransferase|アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ/グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ [/S] CEA|癌胎児性抗原 [/S] Potassium|カリウム [/F] Sodium|ナトリウム [/F] |
異常値を示す検査 |
Calcitonin|カルシトニン [/P, /U] Chromogranin-A|クロモグラニンA [/S] Corticotropin|副腎皮質刺激ホルモン/コルチコトロピン [/P] Fucose|フコース [/S] Gastrin-releasing Peptide|ガストリン放出ペプチド [/S] Histamine|ヒスタミン [/P] Neuron-specific Enolase|神経特異エノラーゼ [/S] Parathyroid Hormone|副甲状腺ホルモン [/P] PDN-21 [/S] Proopiomelanocortin|プロオピオメラノコルチン [/P] Prostaglandins|プロスタグランジンD2 [/P] Serotonin|セロトニン/5-ヒドロキシトリプタミン [/B] |
関連する検査の読み方 |
【カルシトニン】 50~100pg/mL以上に上昇する。未発症の保因者のスクリーニング検査として有用である。 【CEA】 カルシトニンと同様に診断的な価値が高い。 【セロトニン】【プロスタグランジン】 腫瘍はセロトニン、プロスタグランジンの他、ACTH、副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモンなどを分泌する。 【Ca負荷試験】 未発症の保因者の定期検査として有用である。Ca負荷によりカルシトニンが過剰分泌する。 【RET遺伝子】 甲状腺穿刺吸引細胞診で甲状腺髄様癌を疑いかつ血清カルシトニンが高値の場合に測定する。また、RET遺伝子変異が確定している家系の血縁者も検査が望ましい。RET遺伝子検査は多発性内分泌腫瘍II型(MEN II)は甲状腺髄様癌、褐色細胞腫、原発性甲状腺機能亢進症を引き起こす遺伝性疾患の検査である。MEN IIはNEN IIAとMEN IIBがあり、IIAはMEN IIの85%を占め甲状腺髄様癌、褐色細胞腫、原発性甲状腺機能亢進症が主たる疾患で、IIBは5%で甲状腺髄様癌、褐色細胞腫、粘膜下神経腫などが主病変である。MEN II FMTCはMEN IIの約10%を占め甲状腺髄様癌が唯一の関連疾患とされている。この遺伝子変異は遺伝性甲状腺髄様癌の95%以上に認められるが、散発性甲状腺髄様癌での出現率は4~20%とされ、髄様癌の遺伝性か散発性かの鑑別に用いる。 |
検体検査以外の検査計画 | 頸部超音波検査、頸部CT検査、甲状腺シンチグラフィー、甲状腺超音波断層撮影 |