疾患解説
フリガナ | 21-スイサンカコウソケッソンショウ |
別名 |
先天性副腎過形成症 先天性副腎皮質過形成症 先天性副腎酵素異常症 |
臓器区分 | 内分泌疾患 |
英疾患名 | 21-Hydroxylase Deficiency |
ICD10 | E25.0 |
疾患の概念 | 先天性副腎過形成症例の90%以上を占める疾患で、21-水酸化酵素が欠損することで副腎皮質ホルモン前駆体のコルチゾールやアルドステロンへの変換障害が起こり、結果として男性化を発症する。また、重度の低Na血症、高K血症、低血圧を引き起こす。発症頻度は1例/1~2万出生といわれ、遺伝性疾患では高頻度疾患の一つである。臨床的には塩類喪失型、単純男性型、遅発型、cryptic型の4病型に分類され、共通する症状は、副腎性アンドロゲンの過剰によって起こる。疾患の重症度は、CYP21A2変異および酵素欠損の程度で決まる。酵素が欠損することで17-ヒドロキシプロゲステロンから11-デオキシコルチゾールへの変換およびプロゲステロンからデオキシコルチコステロンへの変換が遮断され、コルチゾール合成が減少するためACTH値が上昇し、これが副腎皮質を刺激し17-ヒドロキシプロゲステロンの蓄積および副腎アンドロゲンデヒドロエピアンドロステロンおよびアンドロステンジオンの過剰産生が起こる。アルドステロン欠乏は塩喪失、低Na血症、および高K血症を引き起こす。 |
診断の手掛 | 女子乳児に陰核肥大、大陰唇融合、尿生殖洞などの外性器異常を、男子に陰茎肥大、早期の声の低音化が見られたら本症を疑う。また、成長促進、骨年齢促進、早発恥毛、思春期早発症、月経不順などを訴える患者を診たら本症を一度は疑ってみる。塩類喪失型ではアルドステロンとコルチゾールの合成が不十分なため生後数週以内に食欲不振、嘔吐、脱水、低血圧をきたす。 |
主訴 |
陰核肥大|Clitoral hypertrophy 陰茎肥大|Penile hypertrophy 嘔吐|Vomiting 月経不順|Paramenia 食欲不振|Anorexia 性器異常|Abnomalities of genitalis 多毛|Hypertrichosis/Hirsutism 脱水|Dehydration 男性化|Masculinization/Virillism/Virillzation 低血圧|Hypotension/Hypotonia |
鑑別疾患 |
11β-水酸化酵素欠損症|11β-Hydroxylase Deficiency アンドロゲン産生副腎腫瘍 |
スクリーニング検査 |
Chloride|クロール [/S] Follicle-stimulating Hormone|黄体形成ホルモン・卵胞刺激ホルモン/性腺刺激ホルモン [/P] Sodium|ナトリウム [/S] Potassium|カリウム [/S] |
異常値を示す検査 |
11-DOC|11-デオキシコルチコステロン/デオキシコルチコステロン [/S] 17α-Hydroxyprogesterone|17α-ヒドロキシプロゲステロン [/P] 17-KS|17-ケトステロイド [/U] 21-Deoxycortisol|21-デオキシコルチゾール [/P] 3α-Androstanediol Glucuronide [/P] Active Plasma Renin|活性型レニン/血漿レニン活性/総レニン [/P] Aldosterone|アルドステロン [/P] Androgens|テストステロン/総テストステロン/アンドロゲン [/P] Androstenedione|アンドロステンジオン [/P] Anion Gap|アニオンギャップ [/U] Cortisol|コルチゾール [/P] Dehydroepiandrosterone Sulfate|デヒドロエピアンドロステロンサルフェート [/P] Estradiol, Free|エストラジオール/E2 [/P] Luteinizing Hormone|黄体形成ホルモン・卵胞刺激ホルモン/性腺刺激ホルモン [/P] pH|尿pH [/U] Pregnanetriol|プレグナントリオール [/U] Progesterone|プロゲステロン/プロジェステロン [/S] |
関連する検査の読み方 |
【K】【Na】 Kは高値、Naは低値になる。 【プレグナントリオール】 尿中の値は高値になる。P2は卵巣、胎盤、精巣、副腎で産生されたプロゲステロンの代謝産物の一つで生物学的活性は殆どない。臨床的には24時間蓄尿中のP2を測定することで、プロゲステロンの一日産生量を推定する。 【11-デオキシコルチコステロン】 低下することがある。11-DOCは鉱質ステロイドの中間代謝産物で、ACTH依存性のため、血中量はACTHの分泌量に左右されるので、ACTH分泌亢進状態や、11-DOCからコルチコステロンへの転換酵素(11-β水酸化酵素)の量が推測できる。生理的には黄体期や妊娠時にプロゲステロンが増加すると高値になる。臨床的には高血圧や低K血症で鉱質コルチコイド過剰状態が疑われる場合などで測定される。 【17-ヒドロキシプロゲステロン】 新生児スクリーニングで、ろ紙上で乾燥させた血液中の濃度を測定する。 【コルチゾール】 低下することがある。コルチゾールは副腎皮質束状層から分泌されるグルココルチコイドの主成分で、下垂体性ACTHによって分泌が調節されている。肝と腎で代謝され尿中に排泄されるが、コルチゾール分泌量の20~30%は尿中17-OHCSとして測定される。生理作用は糖代謝、脂肪代謝、蛋白代謝、水・電解質代謝と免疫機構への関与で生命維持に欠くことのできないホルモンである。臨床的には下垂体-副腎機能異常、副腎機能亢進症・低下症、下垂体機能低下症を疑う症状のある患者に測定が必要となる. 【アルドステロン】 低下することがある。PACは副腎皮質球状層から分泌される鉱質コルチコイドで、レニン-アンジオテンシン系、ACTH、Kが分泌の調節を行っている。PACは遠位尿細管に作用し、NaとOHを再吸収し代わりにKとHを排出させる働きがある。PACはレニンにより産生されるアンジオテンシンIIの刺激により産生される。測定は血漿レニン活性と同時に行いPAC:PRA比を評価することが望ましい。また、PACは60歳以上の男性や閉経後の女性では有意に低値を示すこと、早朝に高値で深夜に低値になることに注意する。 【遺伝子分析】 出生前診断にはCYP21遺伝子の分析を行う。 【診断】 17-ヒドロキシプロゲステロン高値で本症を疑えば、デオキシコルチゾール、コルチゾール、プロゲステロン、コルチコステロン、DHEA、アンドロステンジオンの血中濃度を測定する。診断が不明確な場合はACTH刺激テストが役立つことがある。 |
検体検査以外の検査計画 | 頭部CT検査、腹部MRI検査、腹部CT検査、腹部超音波検査 |