疾患解説
フリガナ | シキュウガイニンシン |
別名 |
卵管妊娠 異所性妊娠 |
臓器区分 | 妊産婦疾患 |
英疾患名 | Ectopic Pregnancy |
ICD10 | O00.9 |
疾患の概念 | 受精卵が、卵管、子宮間質、子宮頸部、卵巣、腹腔、骨盤腔などの子宮内膜以外に着床し発育したもので、満期まで妊娠を継続できず、最終的には破裂又は退縮する。子宮外妊娠の発生頻度は、妊娠の約2/100で、母体年齢の上昇とともに発症率は増加する。発症のリスク要因としては、1.子宮外妊娠の既往があれば、10~25%が再発する、2.特にChlamydia trachomatisによる骨盤内炎症性疾患の既往、3.卵管結紮を含む卵管手術の既往が挙げられる。最も多くみられる子宮外妊娠の部位は卵管(98%)で、続いて子宮角がある。頸管、帝王切開瘢痕、卵巣、腹膜、卵管間質の着床は稀である。胎児を含む受胎産物は通常6~16週後に破裂する。 |
診断の手掛 | 妊娠可能年齢の女性が、急激に発症した腹痛を訴えたら本症を疑うが、症状は様々で、しばしば破裂が起こるまで認められない。多くの患者は、骨盤痛、性器出血またはこの両方を訴える。月経の遅れや欠如はまちまちで、妊娠に気づいていない患者もいる。破裂の前兆は、突然の重度の疼痛で、その後、失神、出血性ショック、腹膜炎の症状が現れる。産科による経膣超音波検査で、子宮内に胎嚢を認めない場合は、本症が強く疑われる。不妊、骨盤腹膜炎、虫垂炎の破裂、卵管手術などの既往があれば、リスクが高くなる。症状は急性が40%で、うち約10%はショックになり、数日間にわたり卵管膨大部から血液漏出が続く慢性型が60%である。性交歴、避妊歴、月経歴にかかわらず、生殖可能年齢のすべての女性に骨盤痛、性器出血、原因不明の失神や出血性ショックの症状が見られたら子宮外妊娠を疑うが、内診を含む身体診察の所見は感度や特異度が低いので注意する。 |
主訴 |
月経異常|Menoxenia 失神|Syncope ショック|Shock 腹痛|Abdominal pain 不正出血|Abnormal bleeding 無月経|Amenorrhea |
鑑別疾患 |
流産|Abortion 胞状奇胎|Hydatidiform Mole 卵巣出血 卵巣腫瘍茎捻転 急性間欠性ポルフィリン症|Acute Intermittent Porphyria(AIP) 大腸憩室症 急性虫垂炎|Acute Appendicitis 尿路結石症|Urinary Calculi |
スクリーニング検査 |
Amylase|アミラーゼ [/S] Creatine Kinase|クレアチンキナーゼ/クレアチンホスホキナーゼ [/S] Erythrocyte Sedimentation Rate|赤血球沈降速度 [/B] Glucose|グルコース/血糖/ブドウ糖 [/S] Lactate Dehydrogenase|乳酸デヒドロゲナーゼ [/S] Leukocytes|白血球数 [/B] |
異常値を示す検査 |
CA 125|CA125 [/S] Human Placental Lactogen|ヒト胎盤ラクトゲン/ヒト絨毛性乳腺刺激ホルモン [/S] Pregnancy Test|妊娠反応 [/U] Progesterone|プロゲステロン/プロジェステロン [/P] β-Chorionic Gonadotropin|ヒト絨毛性ゴナドトロピンβサブユニット [/P, /U] |
関連する検査の読み方 |
【CBC】 貧血と軽度の白血球増加を示すことがある。 【妊娠反応】 最初に妊娠の感度が約99%の尿妊娠反応を行う。 【ヒト絨毛性ゴナドトロピンβサブユニット】 5mIU/mL未満であれば、異所性妊娠は除外される。妊娠3週で陽性になり99%の感度で妊娠の有無を判定できる。正常妊娠では、尿中hCG値は約2日ごとに2倍になる。hCGβ-subunitはhCGと同様の産生パターンを示すことから流産、子宮外妊娠の経過観察の指標として有用である。臨床的には流産、子宮外妊娠の経過観察、絨毛性疾患の寛解と治療終了時期の判定に用いる。 【アミラーゼ】 尿、血清共に基準範囲以上になる。アイソザイムでは高唾液腺型アミラーゼ血症になる。 【ヒト胎盤ラクトゲン】 低値になる。hPLは胎児-胎盤系で特異的に産生されるポリペプチドホルモンで、胎盤で合成される蛋白の7~10%を占めている。生理学的には母体の糖質と脂質代謝を調節し母体にエネルギーを供給している。臨床的には生物学的半減期が約30分と短いことから、胎盤機能低下後短時間で血中濃度が低下することを利用し胎盤機能の推定に用いる。 【プロゲステロン】 5ng/mL以下であれば、生存可能な妊娠である可能性は極めて低い。P4はプレグネノロンを基質として主として卵巣の黄体と胎盤で産生されるステロイドホルモンで、血中では90%はアルブミンと結合している。血中濃度は卵胞期には低いが排卵後黄体形成と共に増加し、黄体退縮と共に減少する。妊娠が成立すると黄体は妊娠黄体になるため産生が維持され血中濃度は高値を保つが、妊娠10週前後になると産生は胎盤に移行する。 【SP1:HCG-β比】 低下する。 【腹水一般検査】 血性腹水になることがある。 |
検体検査以外の検査計画 | 経膣超音波検査、カラードップラ超音波検査、腹腔鏡検査 |