疾患解説
フリガナ | ニョウロケッセキショウ |
別名 |
尿管結石症 尿酸性腎結石症 腎結石症 尿石症 結石 |
臓器区分 | 腎・泌尿器疾患 |
英疾患名 | Urinary Calculi |
ICD10 | N20.9 |
疾患の概念 | 腎、尿管、膀胱、尿道に結石がある状態で、腎・尿管結石を上部尿路結石、膀胱・尿道結石を下部尿路結石と呼ぶ。20~50歳代が大半を占め、男性は女性の2~3倍の罹患率があり95%は上部結石である。結石の種類は、Ca結石が80%以上を占める。危険因子は、Caもしくは尿酸塩の排泄量増加、尿中クエン酸の排泄量減少により尿中塩濃度の上昇をもたらす疾患などである。低クエン酸尿症(尿中クエン酸塩350mg/日未満)はCa結石形成患者の40~50%に見られる。クエン酸は尿中Caと結合してCa塩の結晶化を阻害するが、低クエン酸尿症では、Ca結石の形成が促進される。Ca結石の約5~8%は、尿細管性アシドーシスが原因である。また、Ca結石を有する患者の約1~2%に原発性副甲状腺機能亢進症が見られる。尿酸結石は尿pH 5.5未満の酸性尿、または高尿酸尿症(尿中尿酸1500mg/日超)の場合に生成される。 |
診断の手掛 | 腎部に始まり尿管に沿って下腹部、外陰部から大腿内側に向かって起こる、耐えがたい間欠性の疝痛発作や悪心、嘔吐を訴え、時に肉眼的血尿を訴える患者を診たら本症を疑う。疼痛は側腹部や腎領域に始まり、尿管に沿って腹部を縦断し、しばしば性器に放散する。結石が遠位尿細管や膀胱にある場合は、頻尿と尿意切迫を訴える。疼痛、血尿、結石自然排出が3主徴である。腎仙痛は、典型的には耐え難い間欠的な痛みで、しばしば周期的で、20~60分間持続し、悪心および嘔吐を伴う。腎仙痛のある患者は安静に横臥していることが出来ない。 |
主訴 |
嘔吐|Vomiting 悪心|Nausea 結石自然排出|Spontaneous excretion of urinary stone 血尿|Hematuria 疝痛|Colic 側腹部痛|Lateroabdominal pain 疼痛|Pain/Ache 尿意切迫|Urinary urgency 排尿障害|Urinary disturbance/Dysuria 背部痛|Backache 頻尿|Pollakiuria/Pollakisuria 腹痛|Abdominal pain 膀胱刺激症状|Bladder-irritative symptom 乏尿|Oliguria 無尿|Anuria 肋骨脊柱角殴打痛|Percussion tenderness of costovertebral angle |
鑑別疾患 |
急性心筋梗塞|Acute Myocardial Infarction(AMI) 急性膵炎|Acute Pancreatitis 急性虫垂炎|Acute Appendicitis 子宮外妊娠|Ectopic Pregnancy 消化管穿孔 腸間膜動脈塞栓症 腸重積症 腸捻転 痛風|Gout 尿路感染症|Urinary Tract Infection(UTI) 腹部大動脈解離 腹部大動脈瘤破裂 卵巣茎捻転 イレウス 腎細胞癌|Renal Cell Carcinoma(RCC) 腎動静脈奇形 尿路上皮腫瘍 胆嚢炎 消化性潰瘍|Peptic Ulcer 解離性大動脈瘤 |
スクリーニング検査 |
Albumin|アルブミン [/U] Calcium|カルシウム [/U] Leukocytes|白血球数 [/U] Uric Acid|尿酸 [/S] |
異常値を示す検査 |
Erythrocyte Casts|円柱 [/U] Oxalate|シュウ酸/エタン二酸 [/U] |
関連する検査の読み方 |
【Ca】 患者の35%で増加する。10.5mg/dL以上なら副甲状腺機能亢進症を疑う。尿Caが300mg/日または150mg/gCr/日以上なら高Ca尿症である。 【尿酸】 基準範囲上限以上のことがある。痛風患者の25%は結石があり、pHはしばしば5.5以下である。 【尿一般検査】 肉眼的または顕微鏡的血尿が一般的にみられる。pH5.5以下では尿酸結石を生じやすい。pH5.5以上なら腎尿細管性アシドーシスI型を疑う. 【尿沈渣】 肉眼的叉は顕微鏡的血尿が一般的である。結石や種々の結晶成分を認める.尿路上皮細胞を認める。 【pH】 5.5を下回れば尿酸、あるいはシスチン結石を示唆する。シスチンは典型的な六方晶を呈する。 【シスチン】 シスチン尿症では60mg/gCr/日以上である。シスチン結晶は典型的な六方晶として存在する。Cysはは爪、毛髪などのケラチンを主成分とする蛋白質やアルブミン、ラクトアルブミンなどに含まれる含硫アミノ酸で、還元されるとシステインになる。臨床的には溶解性が低いのでしばしば尿路結石を形成する。 【シュウ酸】 尿路結石の70%はシュウ酸Caが占めるので、一日の尿中排泄量を測定する。シュウ酸は食品としてホーレン草、イチゴ、ビート、チョコレートなどの摂取、前駆物質のアスコルビン酸投与、生体内でのグリオキシル酸代謝による生成で体内に増加すると、カルシウムなどと難溶性のシュウ酸カルシウムを作る。また遺伝性疾患である原発性高シュウ酸尿症はシュウ酸カルシウム沈着による腎結石症を引き起こす。臨床的には尿路結石患者の結石の原因究明に用いる。 【結石分析】 原疾患の鑑別に有用である。結石は剥離上皮細胞、細菌、炎症による細胞の崩壊産物や分泌物などが固まり、これらの物質に過飽和の状態で存在する塩類などが付着して形成される。臨床的には結石の存在する臓器と成分名を付けて分類している。成分の多くは脂質と無機質で、脂質は胆石、無機質は尿路結石が代表的である。 |
検体検査以外の検査計画 | 腹部超音波断層検査、静脈性尿路造影検査、非造影ヘリカルCT検査、腹部単純X線検査、腹部超音波検査 |