疾患解説
フリガナ | ホウジョウキタイ |
別名 | 妊娠性絨毛性疾患 |
臓器区分 | 妊産婦疾患 |
英疾患名 | Hydatidiform Mole |
ICD10 | O01.9 |
疾患の概念 | 妊娠時に絨毛が、水腫様変化を起こしたもので、トロホブラストが増殖する異常妊娠である。肉眼的に全ての絨毛が嚢胞化しているものを全胞状奇胎、または胞状奇胎と呼ぶ。染色体検査では、46,XXで精子由来のX染色体が多く、雄性発生によるものと思われる。胞状奇胎は、17歳未満または35歳以上の女性、および妊娠性絨毛性疾患の既往のある女性に多くみられる。80%以上の胞状奇胎は、良性であるが、残りは存続し、浸潤する傾向があり2~3%に絨毛癌が続発する。 |
診断の手掛 | 妊娠10~16週以内に子宮が通常より大きい場合、不正出血、胎動・胎心音欠如、重度の嘔吐などが診断の手掛りとなる。ブドウ状組織が排出されれば診断は殆ど確定する。合併症として子宮感染、敗血症、出血性ショックおよび妊娠初期に発症する妊娠高血圧腎症などがあるので注意する。 |
主訴 |
嘔吐|Vomiting 悪心|Nausea 食欲不振|Anorexia 胎児心音欠如|Absence of fetal heart beat 胎動欠如|Absence of fetal movement 不正出血|Abnormal bleeding ブドウ様組織排出|Grape-like tissue discharge 無月経|Amenorrhea |
鑑別疾患 |
子宮体癌|Cancer of Uterus 肺癌|Lung Cancer 甲状腺機能亢進症|Hyperthyroidism 子癇前症/子癇|Preeclampsia/Eclampsia 正常妊娠 多胎妊娠 流産|Abortion |
スクリーニング検査 |
Activated Partial Thromboplastin Time|活性化部分トロンボプラスチン時間 [/P] Fibrinogen|フィブリノゲン/凝固第I因子 [/P] Platelets|血小板 [/B] Thyroxine (T4)|総サイロキシン/総T4/サイロキシン/チロキシン [/S] Tri-Iodothyronine (T3)|総トリヨードサイロニン/総T3/トリヨードサイロニン/トリヨードチロニン [/S] Thyroid Stimulating Hormone|甲状腺刺激ホルモン [/S] |
異常値を示す検査 |
Estrogens|総エストロゲン(非妊婦)/エストロゲン(非妊婦) [/P] Factor II|第II因子活性/プロトロンビン [/P] Factor IV|第IV因子活性/フリーCaイオン [/P] Fibrin and Fibrinogen Degradation Products|フィブリン・フィブリノゲン分解産物/線維素分解産物 [/P] Hemoglobin F|ヘモグロビンF/胎児性ヘモグロビン/胎性ヘモグロビン [/B] Human Chorionic Gonadotropin|ヒト絨毛性ゴナドトロピン/絨毛性ゴナドトロピン [/U] Human Placental Lactogen|ヒト胎盤ラクトゲン/ヒト絨毛性乳腺刺激ホルモン [/S] Inhibin|インヒビン [/P] Interleukin-1β|インターロイキン-1β [/S, /S] Interleukin-6|インターロイキン-6 [/S] Leptin|レプチン [/S] Major Basic Protein [/S] Pregnanediol|プレグナンジオール [/U] Progesterone|プロゲステロン/プロジェステロン [/P, /P] Prothrombin Consumption [/B] Thrombin Time|トロンビン時間 [/B] Tumor Necrosis Factor-β|腫瘍壊死因子-β/リンホトキシン [/S] β-Chorionic Gonadotropin|ヒト絨毛性ゴナドトロピンβサブユニット [/P, /U] |
関連する検査の読み方 |
【ヒト絨毛性ゴナドトロピンβサブユニット】 4万mU/mLを超えたら可能性が高いので、診断や管理に有用である。持続高値や低下速度が遅い場合は絨毛の残留を考える。 【ヒト絨毛性ゴナドトロピン】 値は本症と相関関係があるので、掻把後の残留奇胎の特定に有用である。尿中の値が10万単位/24時間を超えたら胞状奇胎の可能性が高い。ヒト絨毛性ゴナドトロピンは着床した受精卵が発育し絨毛組織ができると多量に分泌されるホルモンで、妊娠初期の卵巣黄体を刺激してプロゲステロンの産生を促し妊娠の維持に重要なホルモンである。排卵後10~14日で血中・尿中に出現し、以後急激に増加して妊娠9~13週には1~100,000mIU/mLに達し、その後漸減していく。臨床的には妊娠の診断と経過観察、流産や子宮外妊娠の診断、絨毛性疾患やhCG産生腫瘍の管理などに有用である。 【ヒト絨毛性ゴナドトロピン産生量】 トロホブラスト性の組織量と比例する。子宮内容の排出後は75%の患者で40日以内に陰性化する。24時間尿中排泄量>1000,000IU、血清中hCG値>40,000IU/mLなら予後不良である。 【ヒト胎盤性ラクトジェン】 低値である。hPLは胎児-胎盤系で特異的に産生されるポリペプチドホルモンで、胎盤で合成される蛋白の7~10%を占めている。生理学的には母体の糖質と脂質代謝を調節し母体にエネルギーを供給している。臨床的には生物学的半減期が約30分と短いことから、胎盤機能低下後短時間で血中濃度が低下することを利用し胎盤機能の推定に用いる。 【DNA多型解析】 部分奇胎は90%以上が2精子受精3倍体、全奇胎は90%以上が1倍体精子受精であり、これで部分奇胎と全奇胎の鑑別、受精形態や絨毛癌の由来決定ができる。 【絨毛生検】 約半数の絨毛癌は奇胎妊娠が先行している。 |
検体検査以外の検査計画 | 経膣超音波検査、全身CT・MRI・PET検査 |