疾患解説
フリガナ | ジンセイニョウホウショウ |
別名 | |
臓器区分 | 腎・泌尿器疾患 |
英疾患名 | Diabetes Insipidus, Nephrogenic(NDI) |
ICD10 | N25.1 |
疾患の概念 | 腎尿細管の抗利尿ホルモンに対する反応の障害で、尿の濃縮が出来ず、希釈尿の大量排泄を来す疾患で、遺伝性の先天性と腎濃縮能障害による後天性に分けられる。NDIは、ADHに反応して尿を濃縮で出来ないことが特徴である。遺伝性NDIはX連鎖性で、アルギニンバソプレシン受容体2遺伝子に影響を及ぼす。後天性NDIは疾患、または薬剤により髄質または遠位ネフロンが損傷し、尿濃縮能が損なわれ、腎がADHに対して非感受性になることで発症する。典型的な症状は、大量の希釈尿の排泄と口渇であるが、血清Na値はほぼ基準範囲内である。関連する疾患は、常染色体優性多発性嚢胞腎、ネフロン癆と髄質嚢胞腎の複合、鎌状赤血球腎症、閉塞性尿管周囲線維症、髄質海綿腎、腎盂腎炎、高Ca血症、アミロイドーシス、シェーグレン症候群、Bardet-Biedl症候群、骨髄腫、肉腫などである。薬剤はリチウムが代表的であるが、その他、デメチルクロルテトラサイクリン、アムホテリシンB、デキサメタゾン、ドパミン、イホスファミド、オフロキサシン、オーリスタットなどがある。 |
診断の手掛 | 一日3~20Lにも及ぶ多尿と口渇を訴える患者を診たら本症を疑う。血清Naは、ほぼ基準範囲を維持する。先天性では、生後間もなく多尿、多飲が見られるが、親が気付く症状は脱水状態による嘔吐、発熱、食欲不振、便秘などである。乳幼児や認知症患者は、口渇を訴えることができないので注意する。乳児や認知症患者は、極度の脱水から高Na血症を発症するので、神経筋の興奮性亢進、錯乱、痙攣発作、昏睡などを見逃さない。しかし、多尿を訴える全ての患者は、NDIを疑い尿量、24時間蓄尿による浸透圧、血清電解質の検査を急ぐ。 |
主訴 |
嘔吐|Vomiting 悪心|Nausea 口渇|Thirst 食欲不振|Anorexia 多飲|Polydipsia 多尿|Polyuria 発熱|Pyrexia/Fervescence/Fever 皮膚乾燥|Xeroderma 便秘|Constipation |
鑑別疾患 |
心因性多飲症 糖尿病|Diabetes Mellitus 中枢性尿崩症|Diabetes Insipidus,Central(CDI) 低Na血症|Hyponatremia 薬剤性腎障害 多嚢胞性腎疾患 髄質海綿腎 腎盂腎炎 低K血症|Hypokalemia 高Ca血症性腎症 アミロイドーシス|Amyloidosis シェーグレン症候群|Sjogren's Syndrome 多発性骨髄腫|Multiple Myeloma 妊娠性尿崩症 薬剤(リチウム、デメクロサイクリン) |
スクリーニング検査 |
Creatinine|クレアチニン [/S] Sodium|ナトリウム [/S] Uric Acid|尿酸 [/S] |
異常値を示す検査 |
Creatinine Clearance|クレアチニンクリアランス [/U] Fractional Excreation of Urea [/U] Osmolality|浸透圧 [/U] Plasma Renin Activity|活性型レニン/血漿レニン活性/総レニン [/P] |
関連する検査の読み方 |
【Na】 血清Naは水を十分に摂取する患者では142~145mEq/L程度の軽度上昇を見るが、摂取できない患者では劇的に上昇する。 【水制限試験】 中枢性尿崩症では尿浸透圧は上昇するが腎性では上昇しない。尿の濃縮には血清浸透圧の上昇、ADH分泌亢進、腎集合管の水チャンネルの正常な反応が必要である。フィッシュバーグ濃縮試験は水分制限を行いADHの分泌が正常であったと仮定して、腎髄質の尿濃縮能を評価するもので尿細管機能の改善度を知る目的で行う。検査は中程度の腎機能低下症例に行い、腎不全の症例ではGFRの低下を増悪させるので禁忌である。 【浸透圧】 Uosm<Posmになることがある。尿浸透圧が300mOsm/kg未満の場合は、中枢性または腎性尿崩症の可能性が高い。NDIでは、尿浸透圧は循環血液量減少の臨床徴候があるにもかかわらず200mOsm/kg未満である。 【尿比重】 早朝第一尿で1.010以下の低値になる。 【尿酸】 尿中の値は0.3g/日以下に減少する。 【尿量】 患者は1日の尿排泄量が2,500~3,000mL/日(50mL/kg)を上回る多尿となる。 |
検体検査以外の検査計画 |