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疾患解説

フリガナ シェーグレンショウコウグン
別名
臓器区分 膠原病・免疫疾患
英疾患名 Sjogren's Syndrome
ICD10 M35.0
疾患の概念 原因不明の慢性、自己免疫性、全身性、炎症性の疾患で、外分泌腺にリンパ球が浸潤し乾燥性角結膜炎、慢性唾液腺炎などを発症する。一次性と他の膠原病を合併する二次性に分けられ、小児を含むすべての年齢に見られるが、患者の90%は40~50歳代の女性である。遺伝的素因、免疫異常、環境要因などの関与が考えられている。RA、SLE、強皮症、橋本甲状腺炎などの自己免疫疾患を持つ患者の30%は本症を発症する。唾液腺、涙腺、その他の外分泌腺にCD4陽性T細胞とB細胞が浸潤し、T細胞からIL-2,インターフェロンなどの炎症性サイトカインが産生され、この炎症性サイトカインにより分泌管が損傷する。涙腺の腺上皮の萎縮は、角膜と結膜の乾燥を引き起こし、また、耳下腺へのリンパ球浸潤と分泌管内の細胞増殖は、内腔の狭小化の原因となる。消化管では粘膜または粘膜下の萎縮と形質細胞やリンパ球の浸潤により、嚥下困難などの症状を引き起こすことがある。
診断の手掛 ドライアイ、唾液減少による口腔乾燥症が初発症状であるが、1/3の患者は耳下腺の腫大や関節炎を訴える。眼では「目が疲れる」、「目がコロコロする」、「まぶしい」等の訴えに始まり、最終的には「涙が出にくい」と訴える。口腔では「口が渇く」、「口がネバネバする」、「水分と一緒でないと食物が呑み込めない」などと訴える。33%の患者で硬く平坦で軽度の圧痛がある耳下腺が腫大し、50%の患者が関節痛を訴え、33%は関節炎を発症するので、診断の手掛りの一つになる。その他によくみられる腺外の症状として、全身性リンパ節腫脹、レイノー現象、肺実質の病変、血管炎などがある。患者は非ホジキンリンパ腫を通常の40倍の率で発症し、偽リンパ腫、悪性リンパ腫、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症を発症することもある。自己免疫性リウマチ疾患患者の30%に二次性のSjogren症候群の合併を認める。
【診断基準:1999年厚生省】
1:生検病理組織検査 口唇腺組織で4mm²辺り1focus(導管周囲に50個以上のリンパ球浸潤)以上 涙腺組織で4mm²辺り1focus以上。 2.唾液腺造影でstagel(直径1mm未満の小点状陰影)以上の異常所見、唾液分泌量低下(ガム試験にて10分間で10mLまたはSaxonテストで2分間で2g以下)があり、かつ唾液腺シンチグラフィーにて機能低下の所見。
3.眼科検査(次のいずれか)Schirmer試験で5分間に5mL以下で、かつローズベンガル試験(Van Bijsterveldスコア)で3以上、Schirme試験で5分間に5mL以下で、かつ蛍光色素試験で陽性。
4.血清検査(次のいずれか)抗Ro/SS-A抗体陽性 抗La/SS-B抗体陽性
*上記項目のうち、2項目以上で診断する。
主訴 関節圧痛|Joint tenderness
関節腫脹|Articular swelling
関節痛|Arthralgia
眼乾燥|Dry eye
結膜充血|Conjunctival injection
口渇|Thirst
口腔内乾燥|Xerosis of oral cavity/Xerostomia
紫斑|Purpura
出血傾向|Bleeding tendency/Hemorrhagic diathesis
耳下腺腫脹|Swelling of parotid gland
舌萎縮|Atrophy of tongue
全身倦怠感|General malaise/Fatigue
発疹|Eruption/Exanthema
リンパ節腫脹|Lymphadenopathy
レイノー現象|Raynaud phenomenon
鑑別疾患 萎縮性胃炎
肝硬変|Cirrhosis of Liver
関節リウマチ|Rheumatoid Arthritis
全身性硬化症/強皮症|Systemic Sclerosis/Scleroderma(SSc)
口内乾燥症
サルコイドーシス|Sarcoidosis
全身性エリテマトーデス|Systemic Lupus Erythematosus(SLE)
多発性筋炎/皮膚筋炎|Polymyositis/Dermatomyositis
糖尿病|Diabetes Mellitus
尿細管性アシドーシス|Renal Tubular Acidosis(RTA)
肺線維症
橋本甲状腺炎
流行性耳下腺炎|Mumps
唾石症
唾液腺腫瘍
萎縮性胃炎
IgG4関連Mikulicz病
アレルギー性結膜炎
唾液腺萎縮症
混合性結合組織病|Mixed Connective Tissue Disease(MCTD)
原発性胆汁性肝硬変|Primary Biliary Cirrhosis(PBC)
自己免疫性肝炎|Autoimmune Hepatitis
スクリーニング検査 Albumin|アルブミン [/S]
Calcium|カルシウム [/U]
Chloride|クロール [/S]
C-reactive Protein|C反応性蛋白 [/S]
Eosinophils|好酸球 [/B]
Erythrocyte Sedimentation Rate|赤血球沈降速度 [/B]
Glucose|グルコース/血糖/ブドウ糖 [/U]
Hematocrit|ヘマトクリット/赤血球容積率 [/B]
Hemoglobin|ヘモグロビン/血色素量 [/B]
Immunoglobulin A|免疫グロブリンA [/S]
Immunoglobulin G|免疫グロブリンG [/S]
Immunoglobulin M|免疫グロブリンM/マクログロブリン [/S]
Leukocytes|白血球数 [/B]
Phosphate|無機リン [/S]
Potassium|カリウム [/S]
Rheumatoid Factor|リウマチ因子測定/RAゼラチン凝集反応/リウマチ因子定量 [/S]
Uric Acid|尿酸 [/S]
γ-Globulin|γ-グロブリン [/S]
γ-Glutamyltranspeptidase|γ-グルタミルトランスペプチダーゼ/γ-グルタミルトランスフェラーゼ [/Saliva]
異常値を示す検査 1,25-Dihydroxy Vitamin D|1,25-ジヒドロキシビタミンD3/1α,25-ジヒドロキシビタミンD/活性型ビタミンD [/S]
25-Hydroxy Vitamin D|25-ヒドロキシビタミンD/25OHビタミンD [/S]
Ammonium Ions|アンモニウムイオン [/U]
Angiotensin-converting Enzyme|アンギオテンシン変換酵素 [/S]
Anion Gap|アニオンギャップ [/U]
Anti-Galactosyl IgG Antibodies|抗ガラクトース欠損IgG抗体 [/S]
Anti-Mitochondrial Antibodies|抗ミトコンドリア抗体 [/S]
Anti-Phospholipid Antibodies|抗リン脂質抗体/抗PL抗体/抗カルジオリピン(CL)抗体/ループスアンチコアグラント(LA)/リン脂質抗体 [/S]
Anti-Sjogren Syndrome A Antibodies|抗SS-A/Ro抗体 [/S, Positive/S]
Anti-Sjogren Syndrome B Antibodies|抗SS-B/La抗体 [/S, Positive/S]
Anti-U1RNP Antibodies|抗U1-RNP抗体/抗RNP抗体 [/S]
Antibody Titer [/S]
Antinuclear Antibodies|抗核抗体 [/S]
Antithyroglobulin Antibodies|抗サイログロブリン抗体/サイロイドテスト [/S]
Bicarbonate|血漿HCO3-濃度/重炭酸イオン [/S]
Citrate|クエン酸/クエン酸塩 [/U]
Complement C3|補体第3成分/β1C・β1Aグロブリン/C3 [/S]
Complement C3d [/S]
Complement, Total|補体価/CH50 [/S]
Coombs' Test|クームス試験 [Positive/S]
Copper|銅 [/S]
Cryoglobulins|クリオグロブリン [/S]
Epstein Barr Virus Antibodies|EBウイルス抗体/抗EBウイルス抗体 [/S]
HLA Antigens|HLA抗原 [Present/B]
LE Cells|LE細胞/LE現象 [/B]
Lupus Anticoagulant|ループスアンチコアグラント [Positive/P]
N-Acetyl-Glucosaminidase|N-アセチルβ-D-グルコサミニダーゼ活性(尿)/尿中NAG活性 [/U]
Net Acid Excretion|総酸排泄量 [/U]
Osmolal Gap|浸透圧ギャップ [/U]
p-Antineutrophil Cytoplasmic Autoantibodies|抗好中球細胞質ミエロペルオキシダーゼ抗体/核周囲型抗好中球細胞質抗体/MPO-ANCA/P-ANCA [/S]
pH|尿pH [/U, /U]
Rheumatoid Factor (IgA) [/S]
Rheumatoid Factor (IgM) [/S]
Tubular Maximum for Phosphate [/U]
α1-Antichymotrypsin|α1-アンチキモトリプシン [/S]
α1-Microglobulin|α1-ミクログロブリン/α1-マイクログロブリン [/U]
β2-Macroglobulin [/S, /Saliva]
β2-Microglobulin|β2-ミクログロブリン/β2-マイクログロブリン [/S]
関連する検査の読み方 【CBC】
50%の患者で正色素性正球性貧血を認める。白血球は1/3の患者で低下する。好酸球増加が見られる。
【LE細胞】
中等度に陽性である。LE細胞はLE因子が変性細胞核成分と反応し、それに補体が結合したものを好中球に貪食させ、in vitroで作られる細胞である。臨床的には膠原病や自己免疫性肝炎が疑われたときに検査されるが、特に全身性エリテマトーデスでは90%が陽性で診断特異性が高い。ただし米国リウマチ学会は1997年に全身性エリテマトーデスの分類基準からLE細胞を除いた。
【抗SS-A/Ro抗体】【抗SS-B/La抗体】
高頻度に認められる。抗SS-B/La抗体は本症のマーカー抗体で1/3の症例で陽性である。
【抗U1-RNP抗体】
陽性である。
【抗核抗体】【抗ss-DNA抗体】【リウマトイド因子】
高頻度に認められるが、感度および特異度が限られる。リウマトイド因子が70%を超える患者にみられる。
【抗ガラクトース欠損IgG抗体】
中等度に陽性である。日常診療で使われているリウマトイド因子(RF)検査は関節リウマチ患者の陽性率が70~80%程度で、発症早期の陽性率は30~50%にすぎない。また、RFは健常人、慢性肝疾患、膠原病などでも陽性を示すことが知られている。近年、関節リウマチ患者血清中にはIgG糖鎖ガラクトースが著減していることから、糖鎖異常のあるIgGと関節リウマチの病因との関連が指摘され、ガラクトース欠損IgGと反応する抗ガラクトース欠損IgG抗体が開発された。臨床的には早期関節リウマチ患者の診断、従来のRF検出法で陰性の関節リウマチ患者の発見などに使われる。陽性の場合は抗CCP抗体やMMP-3などの測定を行う。
【抗リン脂質抗体】
中等度に陽性のことがある。抗リン脂質抗体にはループスアンチコアグラント(LA)、抗カルジオリピン抗体が含まれる。1986年に動・静脈血栓、習慣性流産、血小板減少などがあり、この抗体が陽性の症例を抗リン脂質抗体症候群とし、このような疾患での抗体測定の重要性が提唱された。
【蛋白分画】
多クローン性のγ-グロブリンが増加する。
【リウマチ因子】
原発型と続発型の90%に認められる。
【ループスアンチコアグラント】
陽性である。活性化第X因子はリン脂質、カルシウム、活性化第V因子の存在下でトロンビンを生成するが、抗リン脂質抗体であるループスアンチコアグラントがあると凝固時間が延長する。臨床的には血栓症状が見られる自己免疫疾患患者、出血傾向はないがPT、APTTの延長が認められる患者では必須の検査である。この検査が陽性となった場合は、より詳しい血栓や凝固異常の状態を調べる必要がある。また、流産を反復する女性では、LAによる胎盤の血栓形成も視野に入れ検査を進める。
【唾液腺障害検査】
障害は唾液流量、唾液腺造影、唾液腺シンチグラフィーで、15分間に1.5mL以下の異常に低い唾液産生によって確認できる。
【シルマー試験】
5分間で分泌される涙の分泌量を測定する検査で、眼の診断に有用である。若年者では正常なら各濾紙片が15mmほど濡れるが、患者の大半は5mm未満である。ただし、試験結果の約15%が偽陽性で、15%が偽陰性になる。
【眼の染色】
ローズベンガルまたはリサミングリーンの点眼による眼の染色は、特異度が非常に高い。フルオレセイン染色で涙液層破壊時間が10秒未満ならドライアイの可能性が高い。
【頬部粘膜生検】
診断がつかない場合は頬部粘膜の小唾液腺の生検をすべきである。唾液腺の生検は、自己抗体検査で診断を確定できない患者、または主要臓器が侵されている患者のみに行う。口唇小唾液腺に腺房組織の萎縮を伴うリンパ球の大きな増殖巣が複数あれば、病理組織学的障害が確定する。この検査は唯一の特異的診断法である。
【併発する疾患】
患者の1/2~2/3は慢性関節リウマチ、SLE、強皮症、血管炎を併発する。
検体検査以外の検査計画 ガム試験、サクソンテスト、細隙灯検査、シルマー試験、ローズベンガル試験、蛍光色素試験、唾液腺造影検査、唾液腺シンチグラフィー、唾液量測定

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