疾患解説
フリガナ | セイジンTサイボウセイハッケツビョウ |
別名 | |
臓器区分 | 血液・造血器疾患 |
英疾患名 | Adult T-cell Leukemia(ATL) |
ICD10 | C91.5 |
疾患の概念 | ヒトT細胞白血病ウイルスⅠ型感染によって発症する疾患で、患者の出身地は九州、沖縄に集中している。わが国には100~200万人の感染者がいると推定され、1/1,000~2,000感染者/年の発症頻度とされている。予後不良の白血病で、臨床的には急性型(60%)、リンパ腫型(24%)、慢性型(9%)、くすぶり型(7%)に分類される。感染経路は、母乳中の感染リンパ球によるヘルパーT細胞の感染、径胎盤、輸血、性行為で、55~60歳頃に発症する。ヘルパーT細胞に感染したウイルスは、レトロウイルスRNA がプロウイルスDNA として細胞 DNA に組み込まれ、多クローン性にゆっくりと増殖するが、DNA の変異が蓄積されると悪性のクローンが出現し、単クローン性に増殖し平均して 55~60歳頃に ATL が発症する. |
診断の手掛 | 健診で異常リンパ球や高Ca血症により見つかることもある。初発症状は全身倦怠感、食欲不振、発熱、咳、痰、リンパ節腫脹、黄疸などであるが、時に、口渇、多飲、多尿、眠気などの高Ca血症の症状が先行する場合もある。70~80%にリンパ節腫脹、30~40%に肝腫大、30~40%に脾腫が見られるので身体所見でこれらの症状を持つ患者は積極的に検査を進める。また、くすぶり型は末梢血中の少数の異常リンパ球と皮膚浸潤で見つかることが多いので、見逃さない。 |
主訴 |
意識障害|Memory impaiment 黄疸|Jaundice 嘔吐|Vomiting 悪心|Nausea 肝腫大|Hepatomegaly 丘疹|Papule 下痢|Diarrhea 口渇|Thirst 紅斑|Erythema/Rubedo 食欲不振|Anorexia 咳|Cough 全身倦怠感|General malaise/Fatigue 多飲|Polydipsia 多尿|Polyuria 痰|Sputum 発熱|Pyrexia/Fervescence/Fever 皮下結節|Subcutaneous nodule 脾腫|Splenomegaly リンパ節腫脹|Lymphadenopathy |
鑑別疾患 |
T細胞性リンパ腫 白血病 悪性リンパ腫|Malignant Lymphoma Sezary症候群 皮膚リンパ腫 |
スクリーニング検査 |
Calcium|カルシウム [/S] Leukocytes|白血球数 [/B] Lactate Dehydrogenase|乳酸デヒドロゲナーゼ [/S] Phosphate|無機リン [/S] |
異常値を示す検査 |
CD25+Lymphocytes [/Lymphocytes] CD4|CD4 [/S] HTLV-1 DNA [Positive/S] HTLV-1 Provirus DNA|HTLV-1 プロウイルスDNA [Positive/B] Human T Lymphotropic Virus 1 Antibody|HTLV-1 抗体/ATLA抗体/ヒトT細胞好性1型抗体/抗HTLV-1抗体 [/S] Interleukin-2 Receptor|可溶性 IL-2レセプター/IL-2レセプター/可溶性 IL-2受容体 [/S] Parathyroid Hormone C-terminal|副甲状腺ホルモンC末端 [/S] Parathyroid Hormone Intact|副甲状腺ホルモンインタクト/インタクト副甲状腺ホルモン [/S] Soluble P-selectin|可溶性P-セレクチン/可溶性CD62P/可溶性GMP-140 [/S] |
関連する検査の読み方 |
【CBC】 急性型、慢性型では白血球が増加し、特徴的な核分葉(クローバ状)リンパ球を認める。リンパ腫型やくすぶり型でも少数の核分葉リンパ球が認められる。産生されるサイトカインにより、好中球や好酸球が増加する症例もあるが、貧血や血小板減少は少ない。 【リンパ球】 特徴的な切り込みのある細胞で、CD4陽性である。 【LD】 高値になり値は病勢を反映する。 【Ca】 高値になることがある。 【遺伝子検査】 血液またはリンパ節細胞DNA中にHTLV-1プロウイルスの単クローン組み込みを認める。HTLV-1型に感染すると、一生涯生涯体内に感染細胞を保有し続けキャリアの状態になる。感染細胞はプロウイルスとしてHTLV-1DNAを組み込んでいるので、HTLV-1プロウイルスDNAが検出されれば体内にHTLV-1感染細胞の存在が推測できる。臨床的には成人T細胞性白血病やHTLV-1関連疾患が疑われる場合、感染者が多い地方の妊婦健診、輸血・移植ドナーのスクリーニングなどに用いる。また、HTLV-1の抗体検査は偽陽性反応が避けられないので、疑わしい場合の確認検査としても有用である。 【CD4+Lymphocytes】 高値になる。 【インターロイキン-2レセプター】 軽度~著しく増加し値は病勢を反映する。 【HTLV-1抗体】 陽性である。成人T細胞性白血病、HTLV-1関連脊髄症(HAM)、ブドウ膜炎などのHTLV-1関連疾患の原因ウイルスであるHTLV-1の対する抗体を検出する検査で、本抗体の存在は感染の既往だけでなく、体内にHTLV-1感染細胞が存在し続けるキャリア状態であることを示唆している。わが国では殆どがPA法(受身凝集反応試験)で行われているが、偽陽性反応の可能性もあるので、確認は複数の検査法を組み合わせるか、信頼性の高いWestern blotting法を用いる。 【HTLV-1 プロウイルスDNA】 陽性になる。我が国には約108万人のヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)キャリアが存在し、約5%にATL等が発症するとされている。HTLV-1の感染経路は主に母乳を介した垂直感染であり、HTLV-1キャリアの同定が感染予防の大きな課題となっている。HTLV-1型に感染すると、一生涯生涯体内に感染細胞を保有し続けキャリアの状態になる。感染細胞はプロウイルスとしてHTLV-1DNAを組み込んでいるので、HTLV-1プロウイルスDNAが検出されれば体内にHTLV-1感染細胞の存在が推測できる。臨床的には成人T細胞性白血病やHTLV-1関連疾患が疑われる場合、感染者が多い地方の妊婦健診、輸血・移植ドナーのスクリーニングなどに用いる。また、HTLV-1の抗体検査は偽陽性反応が避けられないので、疑わしい場合の確認検査としても有用である。 【免疫関連遺伝子再構成】 T細胞受容体遺伝子再構成を認める。 【リンパ節生検】 リンパ腫型では必須の検査で、多型細胞型やびまん性大細胞型リンパ腫の組織像がみられる。 |
検体検査以外の検査計画 | 骨X線検査 |