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疾患解説

フリガナ ニンチショウ
別名
臓器区分 精神疾患
英疾患名 Dementia
ICD10 F03
疾患の概念 正常に発達した知能の後天的原因による慢性的、全般的な低下で、非可逆的である。認知力の低下に加え感情障害、人格障害を伴う。主なタイプは、アルツハイマー病、脳血管性認知症、レーヴィ小体認知症、前頭側頭型認知症、HIV関連認知症である。認知症はパーキンソン病、ハンチントン病、進行性核上性麻痺、クロイツフェルト-ヤコブ病、神経梅毒などでも発症する。また、正常圧水頭症、硬膜下血腫、甲状腺機能低下症、ビタミンB12欠乏症、鉛は、認知機能を緩徐に悪化させるが、治療が可能である。うつ病は認知症に類似することがあり、2つの疾患はしばしば併存するが、抑うつが認知症の最初の臨床像である場合もある。
診断の手掛 最初の徴候は、短期記憶の消失である。これに加え人格変化、行動障害、運動障害などが病期の様々な段階で発症する。短期記憶の喪失が最初の徴候であるが、症状は連続的で早期、中期,よび後期と進んでいく。早期は近時記憶が障害され、新しい情報の学習と保持が困難になり、言語障害、気分変動、人格変化を来す。患者は自立した日常生活動作が次第に困難になる。中期では新しい情報を学習したり想起できなくなり、遠隔記憶は低下するが、完全には喪失しない。入浴、食事、更衣、トイレに介助が必要になることがある。また、人格変化が進行することがある。後期では症状はより重度になり、歩行、一人での食事やその他の日常生活動作ができなくなり、失禁もするようになる。近時記憶と遠隔記憶は完全に失われる。
【診断基準:National Institute on Aging-Alzheimer's Association】
認知症の診断には以下の条件を全て満たす必要がある:1.認知または行動(神経心理学的)症状が仕事や普段の日常活動を行う能力を妨げている。2.それらの症状が以前の機能レベルからの低下を反映している。3.それらの症状をせん妄または重大な精神障害によって説明することができない。
認知または行動障害は,以下のうち2つ以上の領域でみられる必要がある:1.新しい情報を獲得して記銘する能力の障害(健忘)2.言語機能障害(失語)3.視空間認知障害(失認;例えば、人の顔や一般的な物を認識できない)4.推理、複雑な課題の処理、および/または判断を含む、遂行機能の障害(失行)5.パーソナリティ、行動、または態度の変化
主訴 意欲低下|Loss of motivation
運動障害|Dyskinesia
感情変化|Affective change
記憶障害|Memory impairment
見当識障害|Disorientation
幻覚|Hallucination
言語障害|Language disorder/Allophasis
構音障害|Dysarthria
行動異常|Behavior abnomality
失認|Agnosia
認知障害|Cognitive impaorment/Dementia
妄想|Delusion
抑うつ状態|Depressive state
鑑別疾患 抑うつ状態
健忘症
若年性遺伝性白質脳症
脳アミロイド血管症
抗リン脂質抗体症候群
せん妄
前頭側頭葉変性症
進行性核上性麻痺
皮質基底核変性症
ビタミンB12欠乏症|Vitamin B12 Deficiency
神経梅毒
甲状腺機能低下症|Hypothyroidism
エイズ/HIV感染症|Acquired Immune Deficiency Syndrome(AIDS)
クロイツフェルト-ヤコブ病
スクリーニング検査 Leucine Aminopeptidase|ロイシンアミノペプチダーゼ [/CSF]
Triglycerides|トリグリセリド/中性脂肪/トリグリセライド/トリアシルグリセロール [/S]
異常値を示す検査 Acetylcholinesterase G4 Isoenzyme [/S]
Amyloid β-Protein|アミロイドβ蛋白 [/CSF]
Apolipoprotein E|アポリポ蛋白E [/S]
Dipeptidyl Peptidase III [/CSF]
Interleukin-6|インターロイキン-6 [/CSF]
Myelin Basic Protein|ミエリン塩基性蛋白/EAE起炎性蛋白 [/CSF]
Neuron-specific Enolase|神経特異エノラーゼ [/CSF]
S-100 Protein|S100蛋白質 [/CSF]
Soluble β-Amyloid Peptide 40 [/S]
Soluble β-Amyloid Peptide 42 [/S]
Sulfatide|スルファチド [/CSF]
Tau Protein|タウ蛋白 [/CSF]
Tumor Necrosis Factor-α|腫瘍壊死因子-α [/S]
α1-Antichymotrypsin|α1-アンチキモトリプシン [/S]
関連する検査の読み方 【タウ蛋白】
タウ蛋白はチューブリンに結合し重合を促進し微小管を形成する作用がある微小管付随蛋白で、その性質から脳での発現が最も多い。この蛋白がリン酸化されると神経細胞内に沈着し神経原線維変化を起こしAlzheimer病となる。また、神経細胞やグリア細胞内に蓄積すればPick病、大脳皮質基底核変性症、進行性核上麻痺を引き起こす。臨床的には認知症患者の診断、Alzheimer病の診断とその他の認知症との鑑別などに用いる。
【アミロイドβ蛋白】
減少する。Aβ蛋白は健常な脳では産生から排出まで恒常的なバランスを保っているが、Alzheimer病の脳ではこのバランスが崩れ、Aβがアミロイドに変わり細胞間に沈着し老人斑を形成すると考えられている。AβはC末端の異なるAβ40とAβ42があるが、Aβ42は40に比べアミロイド線維形成能と神経毒性が強い。臨床的には脳脊髄液中のAβ42を測定するが、目的はAlzheimer病と他の認知症との鑑別と早期診断である。またタウ蛋白を測定しAD index=(tau×Aβ40/Aβ42)を算定すると、より鑑別診断の特異度が上がるとされている。
【アポリポタンパクE4アレル(apo ε4)】
ε4アレルを2つもつ人は、もたない人人と比較して、75歳までにアルツハイマー病を発症するリスクが10~30倍高い。
【必要な検査】
CBC、肝機能検査、TSH、ビタミンB12、HIV検査、梅毒血清反応
検体検査以外の検査計画 CT検査、単光子放出型CT検査、MRI検査、機能的MRI検査、脳波検査

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