疾患解説
フリガナ | アスペルギルスショウ |
別名 | |
臓器区分 | 感染性疾患 |
英疾患名 | Aspergillosis |
ICD10 | B44.9 |
疾患の概念 | 糸状菌であるアスペルギルスの胞子を吸入することで発症する日和見感染症で、喘息、肺炎、副鼻腔炎や急速進行性の全身性疾患を引き起こす。また、血管に入ると出血性壊死や梗塞の原因になる。感染の危険因子は、好中球減少(500/μL以下)、高容量のコルチコステロイド療法、細胞毒性のある薬剤による治療暦、骨髄移植、好中球機能障害やAIDSが挙げられる。 |
診断の手掛 | 危険因子を持つヒトに発熱、咳、痰、胸痛、呼吸困難などの呼吸器疾患を疑わせる症状を見たら肺アスペルギルス症を疑う。播腫性アスペルギルス症は、感染した諸臓器の症状が出る。また、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症は、発作性の呼吸困難と粘液栓子の喀出が特徴的である。急性の侵襲性肺アスペルギルス症は、通常は咳嗽を引き起こし、しばしば喀血、胸膜性胸痛および息切れが見られる。慢性肺アスペルギルス症は、軽度で進行の緩徐な症状で発症する。副鼻腔アスペルギルス症は、アスペルギローマの形成、アレルギー性真菌性副鼻腔炎、発熱、鼻炎および頭痛を伴う慢性の肉芽腫性炎症を発症する。 |
主訴 |
喀血|Hemoptysis 胸痛|Chest pain 血痰|Bloody sputum/Hemoptysis 呼吸困難|Dyspnea 咳|Cough 痰|Sputum 発熱|Pyrexia/Fervescence/Fever 微熱|Low grade fever/Febricula |
鑑別疾患 |
アレルギー性気管支真菌症 結核 気管支拡張症|Bronchiectasis 気管支喘息 Churg-Strauss症候群 肺癌|Lung Cancer 深在性真菌症 真菌症 髄膜炎|Meningitis 非結核性抗酸菌症|Non-Tuberculous Mycobacteria(NTM) 肺吸虫症 |
スクリーニング検査 |
Bilirubin-Indirect|間接ビリルビン/非抱合型ビリルビン [/S] Bilirubin-Total|総ビリルビン/ビリルビン [/S] Eosinophils|好酸球 [/B] Erythrocytes|赤血球数 [/U] Hematocrit|ヘマトクリット/赤血球容積率 [/B] Hemoglobin|ヘモグロビン/血色素量 [/B, /P] Immunoglobulin A|免疫グロブリンA [/S] Immunoglobulin G|免疫グロブリンG [/S] Immunoglobulin M|免疫グロブリンM/マクログロブリン [/S] Urea Nitrogen|尿素窒素 [/S] |
異常値を示す検査 |
Aspergillus Antigen|アスペルギルス抗原/パストレックス・アスペルギルス/プラテリア・アスペルギルス [/S] Aspergillus Antibody|抗アスペルギルス抗体/アスペルギルス抗体 [/S] Immunoglobulin E|免疫グロブリンE/非特異的IgE/レアギン抗体 [/S] Precipitins [/S] β-D-Glucan|β-D-グルカン [/S] |
関連する検査の読み方 |
【喀痰】 Y字状に分岐する有隔菌糸が認められる。 【喀痰培養】 免疫が抑制状態にある患者、典型的な画像所見を示す患者では有効である。 【アスペルギルス抗原】 特異的であるが、早期診断には感度が不十分である。侵襲性アスペルギルス症では感度89%、特異度98%である。呼吸器分泌物で行うほうが血清より感度が高い。悪性腫瘍、悪性リンパ腫や白血病の化学療法による好中球減少症の患者、副腎皮質ステロイドの長期大量投与患者や臓器移植患者では、時に致死性の侵襲性アスペルギルス症を発症する。菌の分離、培養や組織からの検出では早期診断が困難なため、重症例に適応出来ない。この検査は血中の可溶性アスペルギルス抗原をラテックス凝集反応で迅速に検出する方法で特異性も高いため、アスペルギルスの組織内侵襲が疑われる場合に用いる。 【アスペルギルス抗体】 アスペルギルス抗体は、Aspergillus fumigatusに対する抗体で肺アスペロギローマ、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)、過敏性肺炎で陽性になる。特に肺アスペルギローマでは、IgG抗体が90%以上の高率で陽性になるため診断的価値は高い。ABPAを疑うときはRosenbergの診断基準に従い検査を進める。 【ガラクトマンナン抗原】 抗原の検出は特異度は高い場合があるが、喀痰の場合、早期では殆どの症例で十分な感度は得られない。侵襲性肺アスペルギルス症では、血清よりも気管支肺胞洗浄液を用いたガラクトマンナン抗原検査の方が感度が高く、生検が禁忌である血小板減少を有する患者では、しばしばこの検査が唯一の選択肢となる。 【β-D-グルカン】 β-D-グルカンは真菌の主な細胞壁成分で、カブトガニ血球を凝固させる作用がある。この、β-D-グルカンとカブトガニ血球の反応を応用することにより、β-D-グルカンを特異的に定量測定できる。この検査は深在性真菌症、ニューモシスチス肺炎などで高値となり診断・経過観察の有用な指標となる。 【血液培養】 ほぼ必ず陰性である。 【アスペルギローマ】 肺の病巣ではアスペルギローマ(真菌球)が形成されるが、これはもつれた菌糸塊の特徴的な増殖でフィブリン滲出物と少数の炎症細胞を伴い線維組織で被包されている。 【確定診断】 確定診断には組織検体の培養および病理組織検査が必要で、病理組織検査は侵襲性感染と定着の鑑別に有用である。肺の検体は気管支鏡検査または経皮針生検で採取し、副鼻腔の検体は前検鼻法で採取する。 |
検体検査以外の検査計画 | 胸部X線検査、胸部CT検査、副鼻腔CT検査 |