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疾患解説

フリガナ HTLV-1カンレンセキズイショウ
別名 HAM
熱帯性痙攣性不全対麻痺(TSP)
臓器区分 神経・筋疾患
英疾患名 HTLV-1 Associated Myelopathy
ICD10 A85.8
疾患の概念 HTLV-1キャリアに発症する慢性進行性の脊髄症で、主として胸髄が侵されるため、下肢の進行性運動麻痺、痙性対麻痺、排尿障害を来すが、脳神経障害は稀であり認知機能は保持される。発症率は、HTLV-1血清抗体陽性者の1%以下である。1985年鹿児島大の納らにより発見された。
診断の手掛 走るスピードが遅くなる、つまずき易いなどの下肢の痙性対麻痺や歩行障害、排尿障害、感覚障害を訴える主として九州在住の患者を診たら本症を疑う。特に排尿障害は、約90%の患者に認められるが、初発症状は歩行障害(83%)、排尿障害(28%)、シビレ感(12%)である。その他の障害として、病初期より便秘を認める。また、下半身の発汗障害、起立性低血圧、勃起不全などの自律神経障害も認められる。女性の発症が圧倒的に多数であるため、多発性硬化症の症状を呈した女性を見たら本症を疑う必要がある。
【診断基準:2015年厚労省】
1.膀胱直腸障害を伴う両下肢の痙性麻痺 2.抗HTLV-1抗体が血清及び髄液で陽性 3.遺伝性痙性脊髄麻痺、脊髄炎、圧迫性脊髄障害、脊髄腫瘍、多発性硬化症、視神経脊髄炎、亜急性連合性脊髄変性症、脊髄小脳変性症、スモンなどが除外できる。
*上記の1~3を満たすものをHAMと診断する。
主訴 インポテンツ|Impotence
運動失調|Ataxia
感覚障害|Sensory disturbance
痙性麻痺|Spastic paralysis
しびれ|Numbness
排尿障害|Urinary disturbance/Dysuria
便秘|Constipation
歩行障害|Gait disturbance
鑑別疾患 多発性硬化症|Multiple Sclerosis(MS)
頸椎症性脊髄症
筋萎縮性側索硬化症|Amyotrophic Lateral Sclerosis(ALS)
痙性脊髄麻痺
脊髄症
脊髄小脳変性症
スクリーニング検査 Calcium|カルシウム [/S]
Leukocytes|白血球数 [/B]
Lymphocytes|リンパ球 [/CSF]
Platelets|血小板 [/S]
異常値を示す検査 Antinuclear Antibodies|抗核抗体 [/S]
Human T Lymphotropic Virus 1 Antibody|HTLV-1 抗体/ATLA抗体/ヒトT細胞好性1型抗体/抗HTLV-1抗体 [/S]
HTLV-1 DNA [/S]
HTLV-1 Provirus DNA|HTLV-1 プロウイルスDNA [/S]
Monoclonal Proliferation of Human T-Lymphotropic Virus 1 Infected Cells|単クローン性HTLV-1感染細胞/HTLV-1感染細胞のモノクローナリティ [/Blood]
Natural Killer Cell Activity|ナチュラルキラー細胞活性/NK細胞活性 [/B]
Neopterin|ネオプテリン [/S]
Oligoclonal Banding|オリゴクローナルバンド [Positive/CSF]
関連する検査の読み方 【CBC】
30%の症例で白血球と血小板が減少する。ATL様リンパ球を認めることがある。
【ATL細胞】
血中と髄液中のリンパ球に核がクローバー状に分葉したATL細胞を認める。
【CD4:CD8比】
高値を示す傾向がある。
【HTLV-1抗体】
成人T細胞性白血病(ATL)、HTLV-1関連脊髄症(HAM)、ブドウ膜炎などのHTLV-1関連疾患の原因ウイルスであるHTLV-1の対する抗体を検出する検査で、本抗体の存在は感染の既往だけでなく、体内にHTLV-1感染細胞が存在し続けるキャリア状態であることを示唆している。血清中の抗体陽性は診断上必須の所見である。抗体価が高いと運動障害が高度になる。PA法による抗体価が4,096倍以上の場合は86%の確率でHAMと診断される。HTLV-1抗体の脳脊髄液:血清比は1を超える。また、PCR検査でHCLV-1抗原が検出されれば確定診断の可能性が高い。
【HTLV-1抗体の脳脊髄液:血清比】
1を超えていれば本症の可能性が高い。
【HTLV-1 DNA】
我が国には約108万人のヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)キャリアが存在し、約5%にATLが発症するとされている。HTLV-1の感染経路は主に母乳を介した垂直感染であり、HTLV-1キャリアの同定が感染予防の大きな課題となっている。HTLV-1の感染診断は、スクリーニング陽性者に対するウエスタンブロット法で確認する方法で行うが、判定保留の比率が10~20%と高いことが問題である。この検査はリアルタイムPCR法によるHTLV-1の定性検査で、ウエスタンブロット法で判定保留となった妊婦の感染診断に有用である。
【HTLV-1プロウイルスDNA】
末梢血単核球中のHTLV-1プロウイルス量の測定は、HTLV-1キャリアとの鑑別や病勢把握に有用である。190コピー/10万末梢単核球(PBMC)以上なら88%の確率でHAMと診断される。HTLV-1型に感染すると、一生涯生涯体内に感染細胞を保有し続けキャリアの状態になる。感染細胞はプロウイルスとしてHTLV-1DNAを組み込んでいるので、HTLV-1プロウイルスDNAが検出されれば体内にHTLV-1感染細胞の存在が推測できる。臨床的には成人T細胞性白血病やHTLV-1関連疾患が疑われる場合、感染者が多い地方の妊婦健診、輸血・移植ドナーのスクリーニングなどに用いる。また、HTLV-1の抗体検査は偽陽性反応が避けられないので、疑わしい場合の確認検査としても有用である。
【NK細胞活性】
低下傾向を示す。
【オリゴクローナルバンド】
しばしば出現する。
【髄液IgG】
細胞質に存在するサイトゾル型が増加する。
【髄液一般検査】
蛋白と細胞数の増加が認められる。50%の患者でリンパ球性の細胞が増加しATL様リンパ球を認める。
【髄液ネオプテリン】
ネオプテリンはTリンパ球由来のγ-INFである。活性化された単球、マクロファージから放出され細胞免疫の活性度を反映し、HAMでは増加する。
【髄液リンパ球】
50%の患者で増加する。
検体検査以外の検査計画 頭部・脊髄MRI検査、CT検査、脳波検査、体性感覚誘発電位測定、傍脊柱筋筋電図検査、末梢神経電導検査

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