疾患解説
フリガナ | ジンジョウミャクケッセンショウ |
別名 | |
臓器区分 | 腎・泌尿器疾患 |
英疾患名 | Renal Vein Thrombosis |
ICD10 | I82.3 |
疾患の概念 | 主要腎静脈の一側または両側の閉塞により、急性または慢性の腎不全を発症する疾患である。腎静脈血栓症は、膜性腎症、微小変化群、膜性増殖性糸球体腎炎に関連するネフローゼ症候群が原因の凝固亢進により発症する事が多い。その他の原因として、移植片拒絶、アミロイドーシス、糖尿病性腎症、妊娠、腎血管炎、SLE、アンチトロンビンIII欠乏症、プロテインC、プロテインS欠乏症、エストロゲン療法が知られている。 |
診断の手掛 | 慢性の場合は、発症は潜行性であるが、急性では悪心、嘔吐、側腹部痛、肉眼的血尿、尿量減少が主症状である。ネフローゼ症候群で腎機能が悪化し、その原因が不明な場合は本症を疑う。原因が凝固亢進性疾患の場合は、深部静脈血栓症、肺塞栓症などの静脈血栓塞栓性疾患の徴候が見られることがある。また、原因が腎癌の場合は、血尿、体重減少が見られる。この他、血管異常、腫瘍、後腹膜疾患、下大静脈の結紮、大動脈瘤腎静脈または下大静脈の外因性の圧迫、経口避妊薬、外傷、脱水も原因となるので注意する。 |
主訴 |
嘔吐|Vomiting 悪心|Nausea 血尿|Hematuria 腫瘤|Tumor 側腹部痛|Lateroabdominal pain 蛋白尿|Proteinuria 腹痛|Abdominal pain 乏尿|Oliguria 無尿|Anuria 腰痛|Low back pain/Lumbago |
鑑別疾患 |
血栓症 肺塞栓症|Pulmonary Embolism(PE) 腎細胞癌|Renal Cell Carcinoma(RCC) 後腹膜疾患 腹部大動脈瘤 妊娠 ネフローゼ症候群|Nephrotic Syndrome 全身性エリテマトーデス|Systemic Lupus Erythematosus(SLE) アミロイドーシス|Amyloidosis 糖尿病性腎症|Diabetic Nephropathy 腎血管炎 薬剤(エストロゲン、経口避妊薬) 外傷 下大静脈圧迫 腎静脈圧迫 |
スクリーニング検査 |
Chloride|クロール [/S] Glucose|グルコース/血糖/ブドウ糖 [/U] Phosphate|無機リン [/S] Potassium|カリウム [/S] Uric Acid|尿酸 [/S] |
異常値を示す検査 |
Ammonium Ions|アンモニウムイオン [/U] Anion Gap|アニオンギャップ [/U] Bicarbonate|血漿HCO3-濃度/重炭酸イオン [/S] eGFR|推算GFR [/Specimen] Osmolal Gap|浸透圧ギャップ [/U] pH|尿pH [/U] |
関連する検査の読み方 |
【尿検査】 腎機能の評価のために行う、顕微鏡的血尿、ネフローゼ域の蛋白尿が見られることがある。 【eGFR】 60mL/分/1.73m²未満の低値になる。eGFRは日本腎臓学会が示したCKDガイドラインに記載されているGFRの算定法で、イヌリンクリアランスで求めたGFRと酵素法で測定した血清クレアチニン値から計算式で求められる。eGFRは簡便な方法であるが、スクリーニングや疫学研究を目的に作成されているので、実際の臨床の場で個々の患者を評価するためにはイヌリンクリアランスやクレアチニンクリアランスを用いることが薦められている。臨床的には糸球体濾過量の推定とCKDの病期分類に用いる。個々の患者評価:eGFR=0.719×Ccr(実測クレアチニンクリアランス。薬物投与調節:eGFR=0.719×Cin(実測イヌリンクリアランス) 【イヌリンクリアランス】 低値になることがある。イヌリンは生体内で合成されず、糸球体で100%濾過され尿細管で再吸収されないことから、Cinは真の糸球体濾過量(GFR)を表す最良のマーカーとされている。 【血液凝固検査】 原因が明確でない場合は、血栓形成を疑い検査すべきである。 |
検体検査以外の検査計画 | 腹部造影CT検査、磁気共鳴静脈造影法、腎静脈造影法、ドップラ超音波検査 |