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疾患解説

フリガナ タハツセイノウホウジン
別名 多発性嚢胞腎疾患
常染色体優性多発性嚢胞腎
臓器区分 腎・泌尿器疾患
英疾患名 Polycystic Kidney Disease(PKD)
ICD10 Q61.9
疾患の概念 両側の腎に嚢胞が多数発生し、腎機能障害を来す遺伝性疾患で、数千人に一人の頻度で見られる。日常診療では、常染色体優性遺伝型多発性腎嚢胞(ADPKD)を見る機会が最も多い。ADPKD症例の86~96%の原因は蛋白ポリシスチン1をコードする16番染色体のPKD1遺伝子の突然変異で、その他の症例はポリシスチン2をコードする4番染色体のPKD2遺伝子の突然変異である。この疾患は、早期に尿細管が拡張し、糸球体からの濾液で満たされ、最終的に、尿細管はネフロンから分離し、濾液ではなく分泌液によって満たされ、嚢胞を形成する。患者は急性腎盂腎炎、嚢胞感染、尿路結石を発症するリスクが高い。最終的には血管硬化と間質線維化が起こり、腎不全が発症する。合併症は、肝嚢胞、膵のう胞、腸管の嚢胞、大腸憩室、鼠径部および腹壁ヘルニア、心臓弁膜症、冠動脈瘤、脳動脈瘤などである。
診断の手掛 原因不明の側腹部痛、腹痛、血尿(64%)、高血圧(50%)などを訴える患者を診たら本症を疑う。腹痛は嚢胞への出血と結石の排出が原因である。患者の1/2は、無症状のまま推移し腎機能障害を起こさないので、診断されることはない。症候性の患者の大部分は、20代末までに血尿、高血圧とネフローゼに達しない程度の蛋白尿など非特異的な症状が出現する。貧血はその他の慢性腎臓病と比較して少ない。疾患が進行すると、腎臓が腫大して触知できる場合もあり、上腹部および側腹部の膨満をもたらす。
主訴 嘔吐|Vomiting
悪心|Nausea
血尿|Hematuria
高血圧|Hypertension
頭痛|Headache/Cephalalgia
疝痛|Colic
側腹部痛|Lateroabdominal pain
背部痛|Backache
発熱|Pyrexia/Fervescence/Fever
腹痛|Abdominal pain
腹部腫瘤|Abdominal tumor/Abdominal mass
腹部膨満感|Sense of Abdominal fullness
腰痛|Low back pain/Lumbago
鑑別疾患 腎嚢胞
水腎症|Hydronephrosis
単純性腎嚢胞
多房性腎嚢胞
後天性腎嚢胞
肝嚢胞
膵嚢胞|Pancreatic Cyst
憩室症|Diverticulosis
鼠径ヘルニア
腹壁ヘルニア
心臓弁膜症
脳動脈瘤
スクリーニング検査 Albumin|アルブミン [/U]
Calcium|カルシウム [/U]
Creatinine|クレアチニン [/S]
Erythrocytes|赤血球数 [/U]
Hematocrit|ヘマトクリット/赤血球容積率 [/B]
Hemoglobin|ヘモグロビン/血色素量 [/B]
Neutrophils|好中球 [/U]
Protein-Total|総蛋白/血清総蛋白/血清蛋白定量 [/U]
Sodium|ナトリウム [/S]
Urea Nitrogen|尿素窒素 [/S]
異常値を示す検査 Amino Acids|アミノ酸分析/アミノ酸41分画 [/P]
Ammonia|アンモニア [/B]
Creatinine Clearance|クレアチニンクリアランス [/U]
Tyrosine|チロシン [/P]
Volume [/RBC, /U]
関連する検査の読み方 【eGFR】
60mL/分未満に低下する。eGFRは日本腎臓学会が示したCKDガイドラインに記載されているGFRの算定法で、イヌリンクリアランスで求めたGFRと酵素法で測定した血清クレアチニン値から計算式で求められる。eGFRは簡便な方法であるが、スクリーニングや疫学研究を目的に作成されているので、実際の臨床の場で個々の患者を評価するためにはイヌリンクリアランスやクレアチニンクリアランスを用いることが薦められている。臨床的には糸球体濾過量の推定とCKDの病期分類に用いる。個々の患者評価:eGFR=0.719×Ccr(実測クレアチニンクリアランス。薬物投与調節:eGFR=0.719×Cin(実測イヌリンクリアランス)
【イヌリンクリアランス】
低値である。イヌリンは生体内で合成されず、糸球体で100%濾過され尿細管で再吸収されないことから、Cinは真の糸球体濾過量(GFR)を表す最良のマーカーとされている。臨床的にはGFRのゴールドスタンダードとして慢性腎疾患(CKD)のステージ分類や血液透析導入時の正確な腎機能評価に用いられる。
【クレアチニン】
高値であるが腎嚢胞の大きさや数とは必ずしも相関しない。
【染色体分析】
症例の殆どは16番染色体のPKD1遺伝子の突然変異である。
【尿一般検査】
多尿がよくみられる。患者の約半数に血尿(肉眼的と顕微鏡的)を認める。肉眼的血尿は嚢胞が腎盂に破裂したことによる場合が最も多い。軽度の蛋白尿が1/3の患者に認められる。細菌性感染が伴わない場合でも、膿尿が認められる。
【羊水細胞・絨毛細胞のDNA検査】
出生前診断は羊水穿刺や絨毛細胞のDNA検査で可能である。
【徴候は非特異的で,血尿および高血圧(それぞれ約40~50%の患者で),ならびに20%の患者でネフローゼに達しない範囲のタンパク尿(成人で3.5g/24時間未満)などがある。貧血はその他の種類の慢性腎臓病と比較して少なく,おそらくエリスロポエチン産生が保存されているためである。疾患が進行すると,腎臓が著しく腫大して触知できる場合があり,上腹部および側腹部の膨満をもたらす。
【遺伝子検査】
遺伝子検査はPKDが疑われるが、既知の家族歴を有していない患者、画像検査の結果が確定的でない患者、30歳未満の若年の患者に行う。
【合併する疾患】
腎結石、尿路感染症、高血圧、痛風がしばしば合併する。常染色体優位型では肝、卵巣、膵、脾、中枢神経系に嚢胞を認めるが、脳内動脈瘤や弁膜性心疾患も確認しておくべきである。
【予後と腎不全】
患者の45%以上で65歳までに腎不全の徴候が現れ、UNが50mg/dL以上になると予後が悪い。
検体検査以外の検査計画 超音波検査、CT検査、高解像度CT検査、MRI検査

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