疾患解説
フリガナ | ヒアルコールセイシボウカンエン |
別名 | 非アルコール性脂肪性肝疾患 |
臓器区分 | 消化器疾患 |
英疾患名 | Nonalcoholic Steatohepatitis(NASH) |
ICD10 | K76.0 |
疾患の概念 | 非飲酒者に生じる脂肪肝で、画像診断や血液検査では脂肪肝と鑑別できない。高血圧、肥満、2型糖尿病、高脂血症を有する40~60歳の女性に好発する。肝に脂肪の蓄積(脂肪変性)、炎症、線維症が見られる。脂肪変性は、肝に中性脂肪が蓄積することで、機序として超低比重リポタンパク(VLDL)の合成低下と肝での中性脂肪合成促進が考えられている。炎症は脂質過酸化反応による細胞膜損傷の結果と考えられる。脂肪変性と炎症が、肝星細胞を刺激し、線維化を引き起こす。 |
診断の手掛 | 殆どの患者は無症状であるが、一部の患者で疲労、倦怠感、右上腹部の不快感を訴えることがあり、約75%の患者は肝腫大が見られる。健診などでAST<ALT(1未満)を指摘された患者は、NASHの可能性を念頭に置き診断を進める。また、BMIが30を超え、過去数年で3~5kg以上の体重増加がある患者、高血圧、脂質異常、耐糖能異常や閉経期以降の女性はリスクが高い。診断には、過度の飲酒がない(1日20g未満)ことの確固たる証拠とB型およびC型肝炎を除外する必要がある。 |
主訴 |
易疲労感|Fatigue 肝腫大|Hepatomegaly 体重増加|Obesity 肥満|Obesity/Adiposity |
鑑別疾患 |
脂肪肝|Fatty Liver B型肝炎|Hepatitis B C型慢性肝炎 アルコール性肝炎 アルコール性肝障害|Alcoholic Liver Disease 薬剤性肝障害|Drug-induced Liver Injury(DILI) 門脈圧亢進症 脾腫|Splenomegaly 肝細胞癌|Hepatocellular Carcinoma/Hepatoma 転移性肝癌|Metastatic Neoplasm to Liver/Secondary Cancer of Liver ウィルソン病/肝レンズ核変性症|Wilson's disease/Hepatolenticular Degeneration |
スクリーニング検査 |
Alanine Aminotransferase|アラニンアミノトランスフェラーゼ/グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ [/S] Alkaline Phosphatase|アルカリホスファターゼ/アルカリ性ホスファターゼ [/S] Aspartate Aminotransferase|アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ/グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ [/S] Bilirubin-Total|総ビリルビン/ビリルビン [/S] γ-Glutamyltranspeptidase|γ-グルタミルトランスペプチダーゼ/γ-グルタミルトランスフェラーゼ [/S] |
異常値を示す検査 | Tissue Inhibitor of Metalloproteinase-1|組織メタプロテアーゼインヒビター/コラゲナーゼインヒビター1 [/S] |
関連する検査の読み方 |
【ヒアルロン酸】 線維化を伴えば高値になる。ヒアルロン酸は高分子のムコ多糖体で細胞間質にゼリー状溶液の状態で存在し潤滑作用や組織保持作用があり、関節液や眼球硝子体に分布している。ヒアルロン酸は胸腔や腹腔の中皮で作られ、血中の半減期は2.5~5.5分で肝の類洞内皮細胞で分解される。この物質は炎症の回復過程で産生が増加し血中濃度が上昇する。臨床的には関節組織での合成亢進、肝線維化に伴う線維芽細胞による合成亢進、肝類洞内皮細胞障害による分解能低下が疑われる病態で測定される。肝線維化マーカーとしてのカットオフ値は50ng/mLであり、慢性肝炎と肝硬変のカットオフ値は130ng/mLであるが、50歳以上の患者では加齢により増加するので、判定は慎重に行う。 【Ⅳ型コラーゲン】 線維化マーカーとして有用である。IV型コラーゲンは生体各組織の基底膜でラミニンと結合して基底膜層を形成している。このため組織破壊や修復に伴う基底膜の分解や再生の際に変動する。 【AST】【ALT】 AST<ALTであるが肝硬変に進展するとAST>ALTになる。ASTとALTが基準値の2倍以上の場合は、隔壁の架橋や線維化が予想される。 【確定診断】 生検はゴールドスタンダードである。NASHと単純な脂肪変性の鑑別は肝生検以外は信頼性がない。肝生検に代わる方法が検討されている。Hepatology 2009;49:306 |
検体検査以外の検査計画 | 腹部超音波検査、腹部CT検査、MEI検査 |