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疾患解説

フリガナ ヤクザイセイカンショウガイ
別名 中毒性肝炎
薬物性肝炎
臓器区分 消化器疾患
英疾患名 Drug-induced Liver Injury(DILI)
ICD10 K71.9
疾患の概念 肝細胞毒を持つ薬物、あるいはその代謝産物が、直接肝細胞に作用して肝障害を引き起こすタイプと特異体質により特定の人のみに発症するタイプがあるが、大多数は特異体質性である。病型は肝細胞壊死(直接毒性、特異体質)、胆汁うっ滞(フェノチアジン型、ステロイド型)と急性反応に分けられる。また、イソニアチド、メチルドパ、ニトロフラントインは慢性肝疾患を引き起こすことがある。DILIの病態生理は、薬物で異なり、その多くは完全には解明されていない。リスクとしては、18歳以上、肥満、妊娠、薬剤服用と同時の飲酒、遺伝子多型がある。
診断の手掛 薬剤服用後に発熱、発疹、皮膚掻痒感などのアレルギー症状を発症する患者を診たら本症を疑う。また、全身倦怠感、食欲不振、悪心、嘔吐などの肝障害による症状は診断の手掛かりになる。薬剤服用後、症状出現までの時間は4週以内が多いが、8週以内には80%が発症する。アセトアミノフェン、ハロセン、メチルドパ、抗てんかん薬、フェニトイン、クロロプロマジン、アミオダロン、エリスロマイシン、経口避妊薬、スタチンなどの服用患者は特に注意する。生化学的な分類では、肝細胞障害型、胆汁うっ滞型、混合型の3種に分けられる。肝細胞障害型は、全身倦怠感と右上腹部痛として発症し、アミノトランスフェラーゼ値の著明な上昇を伴い、重症例では高ビリルビン血症を見る。胆汁うっ滞型は、血清アルカリホスファターゼ値の著明な上昇を伴うそう痒および黄疸を特徴とする。混合型は、アミノトランスフェラーゼ値とアルカリホスファターゼ値のどちらにも明らかな優位性が認められず、症状も混在することがある。
主訴 黄疸|Jaundice
嘔吐|Vomiting
悪心|Nausea
かゆみ|Itching
関節痛|Arthralgia
食欲不振|Anorexia
全身倦怠感|General malaise/Fatigue
発熱|Pyrexia/Fervescence/Fever
皮膚掻痒感|Itch sensation of skin
発疹|Eruption/Exanthema
鑑別疾患 急性ウイルス性肝炎
ウイルス性肝障害
アルコール性肝障害|Alcoholic Liver Disease
自己免疫性肝炎|Autoimmune Hepatitis
閉塞性黄疸
原発性胆汁性肝硬変|Primary Biliary Cirrhosis(PBC)
原発性硬化性胆管炎|Primary Sclerosing Cholangitis(PSC)
脂肪肝|Fatty Liver
ウィルソン病/肝レンズ核変性症|Wilson's disease/Hepatolenticular Degeneration
スクリーニング検査 Albumin|アルブミン [/S]
Alkaline Phosphatase|アルカリホスファターゼ/アルカリ性ホスファターゼ [/S]
Alanine Aminotransferase|アラニンアミノトランスフェラーゼ/グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ [/S]
Amylase|アミラーゼ [/S]
Aspartate Aminotransferase|アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ/グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ [/S]
Bilirubin-Direct|直接ビリルビン/抱合型ビリルビン [/S]
Bilirubin-Indirect|間接ビリルビン/非抱合型ビリルビン [/S]
Bilirubin-Total|総ビリルビン/ビリルビン [/S]
Cholesterol|総コレステロール/コレステロール/コレステリン [/S]
Glucose|グルコース/血糖/ブドウ糖 [/S]
Lactate Dehydrogenase|乳酸デヒドロゲナーゼ [/S]
Protein-Total|総蛋白/血清総蛋白/血清蛋白定量 [/S]
Prothrombin Time|プロトロンビン時間 [/P]
Urea Nitrogen|尿素窒素 [/S]
γ-Glutamyltranspeptidase|γ-グルタミルトランスペプチダーゼ/γ-グルタミルトランスフェラーゼ [/S]
異常値を示す検査 5'-Nucleotidase|5'-ヌクレオチダーゼ [/S]
Aldolase|アルドラーゼ/アルドラーゼアイソザイム [/S]
Anti-Mitochondrial Antibodies|抗ミトコンドリア抗体 [/S]
Anti-Mitochondrial M6 Antibodies [/S]
Antithrombin III|アンチトロンビンIII/アンチトロンビン [/P]
Glucose-6-Phosphatase [/S]
Hyaluronic Acid|ヒアルロン酸 [/S]
Isocitrate Dehydrogenase|イソクエン酸脱水素酵素/イソクエン酸デヒドロゲナーゼ [/S]
Lactate Dehydrogenase Isoenzyme-5|乳酸デヒドロゲナーゼアイソザイム/LDアイソザイム [/S]
Lactate Dehydrogenase Isoenzymes|乳酸デヒドロゲナーゼアイソザイム/LDアイソザイム [/S]
Nickel|ニッケル [/S]
Thyroxine Binding Globulin|サイロキシン結合グロブリン/チロキシン結合グロブリン [/S]
Urobilinogen|ウロビリノゲン定性(尿) [/U]
VLDL-Cholesterol [/S]
α1-Acid Glycoprotein|α1-酸性糖蛋白/オロソムコイド/α1アシドグリコプロテイン [/S]
α1-Antitrypsin|α1-アンチトリプシン [/S]
α2-Macroglobulin|α2-マクログロブリン [/S]
β-Glucuronidase|β-グルクロニダーゼ [/S]
β2-Macroglobulin [/S]
関連する検査の読み方 【CBC】
診断基準では好酸球増多は6%以上である。
【PT】
延長したら重症化を考える。PT-INRはプロトロンビン時間の表記方法の一つで、WHOの標準PT試薬を基準とし、各メーカーのPT試薬をISI(Interntional normalized ratio)で標準化し、国際的に互換性のある表記法にしたものである。INR=(被検血漿の測定値/正常対照)
【AST】【ALT】
肝細胞障害型で基準値上限の2倍程度上昇する。
【ALP】
胆汁うっ滞型で軽度~中等度に増加する。アイソザイムはALP2(肝性ALP)が優位である。
【直接ビリルビン】
胆汁うっ滞型で増加する。
【ウロビリノゲン】
ビリルビンとともに増加する。ビリルビン尿ではしばしば大量の黄染した尿細管上皮を認める。
【リンパ球刺激試験】
原因薬物の特定に用いる。
【自己抗体】
薬物によっては抗核抗体、抗ミトコンドリア抗体、抗平滑筋抗体などの自己抗体が出現する。
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