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疾患解説

フリガナ アルコールセイカンショウガイ
別名 アルコール性肝炎
臓器区分 消化器疾患
英疾患名 Alcoholic Liver Disease
ICD10 K70.9
疾患の概念 アルコールの長期・過剰摂取による肝細胞障害と栄養摂取障害が合併した疾患で、組織学的にはMallory小体(アルコール硝子体)の存在、肝静脈周辺の好中球浸潤と肝細胞壊死が特徴的である。患者の10~20%は、最終的に肝硬変に進展する。不飽和脂肪酸の多い食事、肝への鉄沈着、C型肝炎ウイルス感染、遺伝因子などが危険因子である。アルコール性肝障害の病型は、脂肪肝(>90%)、アルコール性肝炎(10~35%)、肝硬変(10~20%)の3型に分けられる。脂肪肝は、過度の飲酒で最初にみられる最も頻度が高い病態で、可逆的な場合もある。脂肪がトリグリセリドの大きな液滴として蓄積し、肝細胞の核を圧排する所見が、細静脈周辺の肝細胞に見られ肝臓は腫大する。アルコール性肝炎は脂肪肝、びまん性炎症および巣状の肝壊死が、複合的に発生する病態で、様々な重症度を呈する。傷害された肝細胞には、顆粒性細胞質を伴う腫大(バルーン変性)と細胞質に線維性蛋白であるMallory小体またはアルコール性のヒアリン小体が見られ、重度に傷害された肝細胞は壊死に至る。アルコール性肝硬変は、肝組織を崩壊させる広範な線維化が特徴である肝再生時の代償反応で、比較的小さな結節が生じ小結節性肝硬変となり肝臓は萎縮する。やがて、線維化が幅の広い帯状になり肝組織を複数の大きな結節に分割し大結節性肝硬変となる。
診断の手掛 5年以上にわたる常習性の飲酒者が、全身倦怠感、食欲不振、悪心、嘔吐、上腹部痛、右季肋部痛、発熱を訴えたら本症を疑う。また、入院後にせん妄などのアルコール離脱によると思われる症状を呈する患者に注意する。問診で一日当たりのアルコール摂取量が、80gを超える患者は定期的な肝機能検査が必須である。この疾患は多様であり一人の患者が脂肪肝、アルコール性肝炎、アルコール性肝硬変などの複数の病態を示すことがあるが、脂肪肝が最もよく見られる。慢性アルコール中毒は、肝疾患よりもむしろ手掌筋膜のDupuytren拘縮、くも状血管腫、ミオパチー、末梢神経障害などを引き起こすので注意する。男性では性腺機能低下症および女性化の徴候(滑らかな肌、男性型脱毛症の欠如、女性化乳房、精巣萎縮、陰毛の変化)が見られる。低栄養の結果としてビタミン欠乏症(葉酸やチアミンの欠乏)、耳下腺腫大、白色爪が見られることもある。チアミンの欠乏はウェルニッケ脳症やコルサコフ精神病を発症する。また、しばしば膵炎を発症することも忘れてはいけない。
主訴 意識障害|Memory impaiment
黄疸|Jaundice
嘔吐|Vomiting
悪心|Nausea
肝腫大|Hepatomegaly
季肋部痛|Hypochondralgia
くも状血管腫|Vascular spider/Spider angioma
血管腫|Hemangioma
下血|Melena
下痢|Diarrhea
手掌紅斑|Palmer erythema
消化管出血|Gastrointestinal bleeding
食欲不振|Anorexia
上腹部痛|Upper abdominal pain
女性化乳房|Gynecomastia
全身倦怠感|General malaise/Fatigue
吐血|Hematemesis
発熱|Pyrexia/Fervescence/Fever
腹水|Ascites
腹痛|Abdominal pain
門脈圧亢進症状|Portal hypertension
鑑別疾患 ウイルス性肝炎|Viral Hepatitis
感染症
急性出血性胃炎
筋炎
原発性胆汁性肝硬変|Primary Biliary Cirrhosis(PBC)
心筋炎|Myocarditis
膵炎
大球性貧血
多発ニューロパチー
内分泌障害
Mallory-Weiss症候群
薬剤性肝障害|Drug-induced Liver Injury(DILI)
非アルコール性脂肪肝炎|Nonalcoholic Steatohepatitis(NASH)
慢性肝炎|Chronic Hepatitis
自己免疫性肝炎|Autoimmune Hepatitis
肝硬変|Cirrhosis of Liver
脂肪肝|Fatty Liver
スクリーニング検査 Albumin|アルブミン [/S]
Alanine Aminotransferase|アラニンアミノトランスフェラーゼ/グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ [/S]
ALP|アルカリホスファターゼ/アルカリ性ホスファターゼ [/S]
Amylase|アミラーゼ [/S]
Aspartate Aminotransferase|アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ/グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ [/S]
Aspartate Aminotransferase:Alanine Aminotransferase Ratio|AST:ALT比 [/S]
Bilirubin-Total|総ビリルビン/ビリルビン [/S]
Cholesterol|総コレステロール/コレステロール/コレステリン [/S]
C-reactive Protein|C反応性蛋白 [/S]
Erythrocytes|赤血球数 [/B]
Erythrocyte Sedimentation Rate|赤血球沈降速度 [/B]
Ferritin|フェリチン [/S]
HDL-Cholesterol|HDL-コレステロール/高比重リポ蛋白コレステロール [/S]
Immunoglobulin A|免疫グロブリンA [/S]
Immunoglobulin G|免疫グロブリンG [/S]
Leukocytes|白血球数 [/B]
MCV|平均赤血球容積 [/B]
Platelets|血小板 [/B]
Prothrombin Time|プロトロンビン時間 [/P]
PT-INR|プロトロンビン-INR [/P]
Triglycerides|トリグリセリド/中性脂肪/トリグリセライド/トリアシルグリセロール [/S]
γ-Glutamyltranspeptidase|γ-グルタミルトランスペプチダーゼ/γ-グルタミルトランスフェラーゼ [/S]
異常値を示す検査 5-Hydroxytryptophol [/U]
Adenosine Deaminase|アデノシンデアミナーゼ [/S]
Ammonia|アンモニア [/B]
Amylase, Salivary Isoenzyme [/S]
Apolipoprotein A-I|アポリポ蛋白A-I [/S]
Aspartate Aminotransferase:Alanine Aminotransferase Ratio|AST:ALT比 [/S]
CDT:Transferrin Ratio|糖鎖欠損トランスフェリン:トランスフェリン比 [/S]
Coproporphyrin|コプロポルフィリン [/U]
Folate|葉酸/プテロイルモノグルタミル酸/ビタミンM/乳酸菌発育因子 [/S]
Globulin|グロブリン [/S]
Hyaluronic Acid|ヒアルロン酸 [/S]
Interleukin-1α [/S]
Interleukin-6|インターロイキン-6 [/S]
Interleukin-8|インターロイキン-8 [/S]
International Normalized Ratio|プロトロンビン-INR [/P]
Laminin|ラミニン [/S]
Neopterin|ネオプテリン [/S]
Procollagen Type III Peptide|プロコラーゲンIIIペプチド [/S]
Prothrombin Time|プロトロンビン時間 [/P]
Soluble Intercellular Adhesion Molecule-1|可溶性ICAM-1/可溶性CD54/細胞接着分子-1 [/S]
Superoxide Dismutase|スーパーオキサイドディスムターゼ/スーパーオキサイドジスムターゼ [/S]
Tumor Necrosis Factor-α|腫瘍壊死因子-α [/S]
Type IV Collagen 7S Domain [/S]
Type IV Collagen, Triple-helix Domain [/S]
Vitamin B12|ビタミンB12/コバラミン/シアノコバラミン [/S]
β-Chorionic Gonadotropin|ヒト絨毛性ゴナドトロピンβサブユニット [/P]
関連する検査の読み方 【AST】【ALT】
AST300IU/L以下でAST:ALT比が1以上なら患者の90%が確定できる。AST>ALTである。
【ASTアイソエンザイム】
ミトコンドリアASTが増加する。
【γ-GT】
γ-GT増加とMCVが100fL以上あれば強く本症を疑う。基準値上限の2倍以上に上昇する。禁酒を4週続けると前値の40%以下、または基準範囲の1.5倍程度に低下する。
【ALP」
基準値上限の1.5倍以上に上昇する。
【CDT:Transferrin Ratio】
高値になる。
【ビリルビン】
直接ビリルビンが増加し、高ビリルビン血症を見ることがある。多くの患者で胆汁うっ滞の所見がみられる。
【直接ビリルビン】
5mg/dL程度まで増加することがある。
【尿ビリルビン】【尿ウロビリノゲン】
増加する。ビリルビン尿ではしばしば大量の黄染した尿細管上皮細胞を認める。
【アデノシンデアミナーゼ】
増加する。ADAはリンパ節、脾、肝、腎、肺などに広く分布するプリン代謝系の酵素で、特にリンパ組織の分化、成熟に関与している。この酵素は2種のアイソザイムがあり血中のADAの80%はADA2でリンパ球と単球由来である。ADA活性の上昇はプリン体代謝経路の亢進、腫瘍性増殖による代謝亢進、代謝亢進の結果としての細胞外へのADAの流出による。臨床的には組織壊死、炎症とリンパ球の活性を反映し、肝疾患、悪性腫瘍、感染症などで活性が増加する。
【蛋白分画】
アルブミンの低下とグロブリンが認められる。
【プレアルブミン】
禁酒直後に増加する。
【CBC】
50%以上の患者で見られる貧血は葉酸かビタミンB12の欠乏による大球性貧血である。MCVが100fLを超える大赤血球症を認める。白血球は30%の患者で15,000/μL以上に増加する。
【血小板】
血小板は減少する。原因はアルコールが骨髄に直接及ぼす毒性と門脈圧亢進症に伴う脾腫での破壊亢進よる。
【PT】
10mgのビタミンKの非経口投与で延長が改善されなければ重症である。
【アンモニア】
重症例では高値である。
【グアナーゼ】
軽度に増加することがある。
【スーパーオキサイドディスムターゼ】
増加する。SODは組織障害性を持つスーパーオキサイドを除去する反応を触媒する酵素で様々な金属と結合している。スーパーオキサイドは極めて組織障害性が強く、脂質の過酸化、酵素の失活、DNAの不活化、メトヘモグロビンの生成や生体膜の破壊などを起こす。
【動脈血pH】
pHが7.2以下になれば末期に近付いている証拠である。
【プロリンヒドロキシラーゼ】
増加する。
【ASTアイソエンザイム】
ミトコンドリアASTが増加する。
【レムナント様リポ蛋白コレステロール】
増加する。
【肝生検】
アルコール硝子体、好中球浸潤を伴う巣状壊死、肝細胞壊死、肝細胞周囲の線維化、脂肪変性が認められる。
【リスク評価】
discriminant function(DF)=4.6×(患者PT-標準PT)+血清ビリルビン値 スコアが32未満の時の1ヶ月生存率は93%、9より大きいときは68%である。また同様の評価スコアにはGlasgow alcoholic Hepatitis Score(GAHS)やJapan Alcoholic Hepatitis Score(JAHS)がある。これ等は、年齢、白血球数、UN、PT-INR、総ビリルビン値から算定する。
検体検査以外の検査計画 腹部超音波検査、腹部CT検査、MRI検査、肝シンチグラフィー、Glasgow Alcoholic Hepatitis Score(GAHS)の算定、Japan Alcoholic Hepatitis Score(JAHS)の算定
疾患

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