疾患解説
フリガナ | シボウカン |
別名 |
肝脂肪変性 妊娠性急性脂肪肝 |
臓器区分 | 消化器疾患 |
英疾患名 | Fatty Liver |
ICD10 | K76.0 |
疾患の概念 | 脂肪肝は、肝細胞内に脂質が過度に蓄積した状態である。正常の肝臓は、湿重量で2~4%の脂肪(主として中性脂肪)を含んでいるが、この量が10%以上になった状態を脂肪肝と呼ぶ。3大原因は肥満、2型糖尿病と大量飲酒であるが、副腎皮質ホルモン、テトラサイクリン系抗菌薬などの薬剤性やReye症候群によるものも知られている。肝細胞内の脂肪滴が大滴性か小滴性化によって2種に分けられる。 |
診断の手掛 | BMI25以上の肥満者、AST<ALT、C型慢性肝炎患者、2型糖尿病患者、アルコール多飲者は常に本症の発症を疑う。C型慢性肝炎患者の30%は、脂肪肝が見られるので注意する。非アルコール性脂肪肝炎は臨床上重要な脂肪肝の1病型である。 |
主訴 |
肝腫大|Hepatomegaly 体重増加|Obesity 肥満|Obesity/Adiposity |
鑑別疾患 |
2型糖尿病 アルコール依存症|Alcoholism C型慢性肝炎 慢性肝炎|Chronic Hepatitis 薬剤性肝障害|Drug-induced Liver Injury(DILI) 肝細胞癌|Hepatocellular Carcinoma/Hepatoma 肝血管腫 転移性肝癌|Metastatic Neoplasm to Liver/Secondary Cancer of Liver 非アルコール性脂肪肝炎|Nonalcoholic Steatohepatitis(NASH) ウィルソン病/肝レンズ核変性症|Wilson's disease/Hepatolenticular Degeneration |
スクリーニング検査 |
Alkaline Phosphatase|アルカリホスファターゼ/アルカリ性ホスファターゼ [/S] Alanine Aminotransferase|アラニンアミノトランスフェラーゼ/グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ [/S] Aspartate Aminotransferase|アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ/グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ [/S] Bilirubin-Direct|直接ビリルビン/抱合型ビリルビン [/S] Bilirubin-Total|総ビリルビン/ビリルビン [/S] Glucose|グルコース/血糖/ブドウ糖 [/S] Leukocytes|白血球数 [/B] Uric Acid|尿酸 [/S] γ-GT|γ-グルタミルトランスペプチダーゼ/γ-グルタミルトランスフェラーゼ [/S] |
異常値を示す検査 |
7α-Hydroperoxycholest-5-en-3β-ol [/Liver] 7α-Hydroperoxycholest-5-en-3β-ol:Cholesterol Ratio [/Liver] 7β-Hydroperoxycholest-5-en-3β-ol [/Liver] 7β-Hydroperoxycholest-5-en-3β-ol:Cholesterol Ratio [/Liver] Ammonia|アンモニア [/P] Remnant Like Particles-Cholesterol|レムナント様リポ蛋白コレステロール/RLP-コレステロール [/S] Retinol-Binding Protein|レチノール結合蛋白 [/S] Sulfated Bile Acids|硫酸抱合型胆汁酸(尿) [/U] Vitamin A|ビタミンA/レチノール [/S] |
関連する検査の読み方 |
【ビタミンA】 過栄養性脂肪肝で高値になる。ビタミンAは別名レチノールと呼ばれる脂溶性ビタミンの一種で動物の成長、視覚、生殖機能、骨形成、免疫機能などに関係し、ヒトでは眼と肝に存在している。血中ではレチノール結合蛋白と結合して標的臓器に運ばれる。 【レチノール結合蛋白】 過栄養性脂肪肝で高値になる。RBPは肝で合成される糖蛋白でビタミンA(レチノール)と結合し運搬する機能がある。臨床的には半減期が16時間と短いこと、アルブミンやコリンエステラーゼと良く相関することから、肝の蛋白合成能や栄養状態の評価に用いる。 【AST:ALT比】 AST/ALT比を算定することにより肝の病態評価に用いる。1.急性肝炎:大量の肝細胞が破壊されるためAST,ALTは500U/L以上になるが、肝細胞の含有量を反映し初期はAST>ALTとなる。極期を過ぎると半減期の長いALTが残るためAST<ALTとなる 2.劇症肝炎:肝細胞壊死が高度であるためAST,ALTは2,000U/Lを超える。肝含有量とAST-mの逸脱でAST>ALTとなる 3.慢性肝炎、脂肪肝:AST,ALTは中等度に上昇するが半減期の差によりAST<ALTとなる 4.肝硬変:肝細胞が減少するのでAST,ALTの上昇は軽度であり、更に細胞内のALT活性が低下するためAST>ALTになる 5.アルコール性肝障害:障害がミトコンドリアにも及ぶためAST>ALTとなる。 【レムナント様リポ蛋白コレステロール】 7.5mg/dL以上に増加する。RLP-CはカイロミクロンやVLDLがリポ蛋白リパーゼによって分解され生じる中間代謝物の総称で、トリグリセリド、アポ蛋白B、C-II、C-III、Eと正の相関がある。動脈硬化の基礎病変の一つである粥状硬化症の原因物質の一つとされているため、レムナント粒子の動態は動脈硬化性疾患の病態解析に有用とされる。 【過酸化脂質】 アルコール性脂肪肝で増加する。LPOは不飽和脂肪酸が活性酸素で酸化されて生成される。血中には脂質二重層で構成された細胞膜が障害を受けると、細胞膜の不飽和脂肪酸が酸化されて出現する。LPOは低比重リポ蛋白(LDL)にも多量に存在し、酸化されたLDL(酸化LDL)は動脈硬化と深く関係している。 【硫酸抱合型胆汁酸】 尿中の値は軽度上昇する。ヒトの胆汁酸はコール酸、ケノデオキシコール酸、デオキシコール酸、リトコール酸、ウルソデオキシコール酸の5種類に分けられる。肝実質細胞障害や胆汁うっ滞では肝細胞内での胆汁酸濃度が上昇し硫酸抱合反応が促進される。硫酸抱合胆汁酸は水溶性のため抱合を受けない胆汁酸に比べ速やかに腎から排泄される。臨床的には肝実質性細胞障害や胆汁うっ滞で尿中硫酸抱合胆汁酸画増加し、尿中ビリルビンやウロビリノーゲン測定に比べ感度、特異度ともに優れている為、これら疾患のスクリーニングに有用である。 |
検体検査以外の検査計画 | 腹部超音波検査、腹部CT検査 |