疾患解説
フリガナ | フンセンチュウショウ |
別名 | 糞線虫感染症 |
臓器区分 | 寄生動物疾患 |
英疾患名 | Strongyloidiasis |
ICD10 | B78.9 |
疾患の概念 | 熱帯から亜熱帯地域の土壌中に生息している糞線虫(Strongyloides stercoralis)による感染症で、我が国では南西諸島から九州、本州南部の沿岸地域の住民で保虫率が高い。ATLキャリアは、特に保虫率が高く、治療抵抗例や重症化が見られる。幼虫は、皮膚を貫通し、血流を介して肺に移行し、気道を上行して消化管に入り、成虫になり空腸の粘膜、粘膜下に寄生し産卵する。産卵された虫卵は、腸管内腔で孵化し、ラブジチス型幼虫となり、大部分は便中に排出され土壌中で数日経た後、感染性のフィラリア型幼虫に発育する。感染性のフィラリア型幼虫は、体外自家感染または体内自家感染を引き起こし、サイクルを永久的に繰り返し、宿主であるヒトの体中で増殖能力を持つ点が、他の蠕虫と異なり特徴的である。 |
診断の手掛 | 皮膚に入った幼虫に対するアレルギー反応である蛇行性移動性じんま疹を訴える患者を診たら本症を疑う。最も頻度の高い皮膚症状は、殿部と手首に見られる反復性の蕁麻疹である。胃腸症状としては、圧痛、下痢、悪心、嘔吐が見られる。肺症状は、稀であるが、重症感染ではLoeffler症候群を発症する。幼虫跛行症は、糞線虫感染に特異的な皮膚幼虫移行症の一型であり、自家感染に起因する。コルチコステロイド服用中または細胞性免疫不全の患者は、致死的な過剰感染症候群として、肺、腸管、皮膚、中枢神経系、肝、心臓を侵す播種性疾患を発症することがあるので注意する。HTLV-1との重複感染やAIDSとの合併にも注意する。 |
主訴 |
嘔吐|Vomiting 悪心|Nausea 丘疹|Papule 下痢|Diarrhea 食欲不振|Anorexia 上腹部痛|Upper abdominal pain 咳|Cough 喘鳴|Wheeze/Stridor 体重減少|Weight loss 痰|Sputum 発疹|Eruption/Exanthema やせ|Weight loss |
鑑別疾患 |
肺炎|Pneumonia 肺胞出血 敗血症|Sepsis 麻痺性イレウス 髄膜炎|Meningitis 腸管感染症 腸閉塞|Intestinal Obstruction 皮膚幼虫移行症 アメーバ赤痢|Amebic Dysentery |
スクリーニング検査 |
Albumin|アルブミン [/S] Eosinophils|好酸球 [/B] Hematocrit|ヘマトクリット/赤血球容積率 [/B] Hemoglobin|ヘモグロビン/血色素量 [/B] Immunoglobulin M|免疫グロブリンM/マクログロブリン [/S] Iron|鉄/血清鉄 [/S] Leukocytes|白血球数 [/B] MCH|平均赤血球ヘモグロビン量 [/B] MCHC|平均赤血球ヘモグロビン濃度 [/B] MCV|平均赤血球容積 [/B] Platelets|血小板 [/B] Protein-Total|総蛋白/血清総蛋白/血清蛋白定量 [/U] TIBC|総鉄結合能 [/S] γ-Globulin|γ-グロブリン [/S] |
異常値を示す検査 |
Creatinine Clearance|クレアチニンクリアランス [/U] Histamine|ヒスタミン [/P] Immunoglobulin E|免疫グロブリンE/非特異的IgE/レアギン抗体 [/S] Iron Saturation|鉄飽和度 [/S] Occult Blood|潜血反応(便)/グアヤック法/o-トリジン法/ラテックス凝集法 [/F] |
関連する検査の読み方 |
【糞便一般検査】 一つの糞便標本から顕微鏡的にラブジチス型幼虫を発見できる確率は25%であるが、濃縮便を反復検査すると感度は85%以上に向上する。 【喀痰】 過剰感染患者では幼虫が喀痰中で同定されることがある。 【虫体】 便塊を室温で数時間放置すると、ラブジチス型幼虫がより長いフィラリア型幼虫に変わる。 【抗体】 抗糞線虫抗体を調べるELISAの感度は90%を超えるが、フィラリア症や他の腸管寄生線虫感染者では偽陽性になることがある。 【好酸球】 しばしば増加するが、コルチコステロイドなどの薬物で抑制されるので注意する。 【尿沈渣】 免疫不全患者では尿中に糞線虫が出現する。 |
検体検査以外の検査計画 | 内視鏡検査、胸部X線検査 |