疾患解説
フリガナ | レジオネラショウ/ザイゴウグンジンビョウ |
別名 | レジオネラ感染症 |
臓器区分 | 感染性疾患 |
英疾患名 | Legionnaires' Disease |
ICD10 | A48.1 |
疾患の概念 | ブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌であるLegionella pneumophilaによる感染症で、4類感染症に指定されている。本症はLegionella肺炎と肺炎を伴わないPontiac熱の2つの病型に分類されている。レジオネラ感染症は、1歳未満の患者、高齢者、糖尿病、COPD患者、喫煙者および易感染性患者で発症頻度が高くより重症となる。Pontiac熱は重症化しないがLegionella肺炎は急速進行性の重症肺炎の代表であり市中肺炎および院内肺炎の起炎菌の一つとして注目されている。レジオネラ菌は、土壌や淡水中に分布しているので、温泉施設などでの汚染された水滴の吸入による感染が最も多い。ヒトからヒトへの感染はない。全体の死亡率は約5%と低いが、院内感染患者、高齢者、易感染性患者では40%に達することもある。4類感染症である。 |
診断の手掛 | 急性に発症する発熱、咳、痰、悪寒、全身倦怠感、筋肉痛、頭痛、軟便、水様便、腹痛、関節痛、呼吸困難、胸膜痛等のインフルエンザ様症状を訴える患者を診たら本症を疑う。肺症状として呼吸困難、胸膜痛、喀血などが起こる。発熱時には徐脈傾向となることがあり、特に重症例では顕著である。最近の温泉、循環式浴槽、ジェット風呂などの利用歴があれば、感染の可能性が高い。また、ペニシリン系、セフェム系の抗菌薬が無効の重症肺炎は、常にレジオネラ症を疑い慎重に検査を進める。 |
主訴 |
意識障害|Memory impaiment 悪寒戦慄|Chill with shivening 関節痛|Arthralgia 胸痛|Chest pain 筋肉痛|Myalgia 傾眠|Drowsiness/Somonolency 血圧低下|Blood pressure decreased 下痢|Diarrhea 呼吸困難|Dyspnea 昏睡|Coma 昏迷|Stupor 錯乱|Confusion 紫斑|Purpura 出血傾向|Bleeding tendency/Hemorrhagic diathesis 食欲不振|Anorexia 頭痛|Headache/Cephalalgia 咳|Cough 全身倦怠感|General malaise/Fatigue 痰|Sputum チアノーゼ|Cyanosis/Cyanopathy 発熱|Pyrexia/Fervescence/Fever 腹痛|Abdominal pain |
鑑別疾患 |
オウム病|Psittacosis 間質性肺炎 心内膜炎 心不全|Heart Failure 心膜炎 肺炎球菌肺炎 肺気腫|Pulmonary Emphysema 肺水腫|Pulmonary Edema 肺胞蛋白症|Pulmonary Alveolar Proteinosis マイコプラズマ肺炎 薬剤性肺炎 |
スクリーニング検査 |
Alanine Aminotransferase|アラニンアミノトランスフェラーゼ/グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ [/S] Aspartate Aminotransferase|アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ/グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ [/S] Creatine Kinase|クレアチンキナーゼ/クレアチンホスホキナーゼ [/S] Leukocytes|白血球数 [/B] Phosphate|無機リン [/S] Sodium|ナトリウム [/S] |
異常値を示す検査 |
Legionella Antibody|レジオネラ抗体/抗レジオネラ抗体 [Positive/S] Urinary Antigen of Legionella|レジオネラ尿中抗原/レジオネラ尿中特異抗原 [Positive/U] |
関連する検査の読み方 |
【CBC】 白血球は 症例の75%が10,000~20,000/μL程度の増加。低下すれば予後不良である。 【肝機能検査】 症例の50%でAST、ALT、LD、ビリルビンが軽度~中等度に増加する。アルブミンは2.5g/dL以下のことがある。 【電解質】 肺炎型ではNaが50~70%で低下する。無機リンも低下することが多い。 【喀痰グラム染色】 多核白血球の中等度増加を認める。レジオネラ菌体確認はヒメネス染色が必要である。 【喀痰細菌培養】 BCYE-α培地で分離・培養する。菌の染色はグラム染色性が弱いのでヒメネス染色を行う。 【喀痰蛍光免疫染色】 喀痰、胸水、肺組織の蛍光免疫顕微鏡検査が特異性が最も高い診断法。エリスロマイシン投与後は陰性になるのでPCR法か遺伝子プローブ法を用いる。 【レジオネラ抗体】 ペア血清で4倍以上の上昇、単一血清は256倍以上を陽性とする。 抗レジオネラ抗体はレジオネラ症を疑わせる臨床症状 1.肺炎像があるが喀痰のグラム染色で菌が染色されない 2.一般細菌培養検査で起炎菌の発育がない 3.急速に進行する高度の低酸素血症がみられる 4.ベータラクタム系、アミノ配糖体系抗生剤が無効 5.肝機能検査でLDやCKが高値となる患者を見た場合に測定する。レジオネラ症は4類感染症に属するため診断した医師は直ちに最寄りの保健所に届け出る必要がある。 【レジオネラ抗原】 尿中で陽性であれば感染確認の有用な指標である。症状発現の3日後で感度70%、特異度100%であるが、検出できるのはL.pneumophilaのみである。レジオネラ尿中抗原は尿中の可溶性の特異抗原を検出するもので、レジオネラ症の迅速診断に用いる。臨床的には1.明らかに肺炎像を呈するが、グラム染色、一般細菌培養で起炎菌が検出されない 2.進行性の高度な低酸素血症を発症している 3.Β-ラクタム剤やアミノ配糖体系抗菌剤が無効 4.肝機能障害、高LD値、高CK値が見られるなどのレジオネラ肺炎を疑う症状を見た場合に測定する。 【レジオネラ遺伝子検査】 陽性になれば診断は確定する。 【胸水一般検査】 両側性の胸水(浸出液)が50%程度の患者にみられ、病原体が存在する。 【動脈血ガス分析】 肺炎型では低酸素血症を呈する。 |
検体検査以外の検査計画 | 胸部X線検査、呼吸機能検査 |