疾患解説
フリガナ | ジャクネンセイトクハツセイカンセツエン |
別名 | |
臓器区分 | 膠原病・免疫疾患 |
英疾患名 | Juvenile Idiopathic Arthritis(JIA) |
ICD10 | M08.0 |
疾患の概念 | 16歳未満に発症し、6週間以上持続するリウマチ性疾患の総称で、原因は遺伝的素因と自己免疫性と考えられている。WHOの分類で1.全身型(スチル病) 2.小関節型(4つ以下の関節に障害) 3.リウマトイド因子(RF)陰性多関節型 4.RF陽性多関節型(5つ以上の関節に障害) 5.乾癬性関節炎 6.付着部炎関連関節炎 7.分類不能に分けられる。全身型(スチル病)は最も稀な病型で、発熱と全身症状を伴う。少関節型は、最もよくみられる病型で、通常幼い女児が罹患する。患部が発症6カ月間で4関節以下であることが特徴である。多関節型は2番目に多い病型で、発症時に5カ所以上の関節を侵し、RF陰性型とRF陽性型に分けられる。通常、幼い女児はRF陰性型で、予後は良好である。RF陽性型は青年期の女子に発症し成人のRAに類似している。両方の病型はともに関節炎は対称性で、小関節が侵されることが多い。乾癬性は幼い女児に発症し、乾癬、指の腫脹、爪の点状陥凹、または第1度近親者の乾癬の家族歴と関連している。付着部炎関連関節炎は、関節炎と付着部炎を伴い、より年長の男児に発症することが多く、強直性脊椎炎または反応性関節炎などの特徴を示すことがある。関節炎は下肢に起こり非対称性の傾向がある。分類不能は、患者がいずれの病型の基準も満たさない場合、または複数の病型の基準を満たす症例が該当する。 |
診断の手掛 | 日差が3~4℃と大きい弛張熱、発疹、朝のこわばり、関節炎、脾腫、虹彩網様体炎などを訴える患者を診たら本症を疑う。発熱時に直径数mmのサーモンピンク色のリウマトイド疹が四肢、体幹に出現するので見逃さない。症状は関節、眼、皮膚に現れるが、全身型では、複数の器官を侵すことがある。患者は、関節のこわばり、腫脹、液貯留、疼痛および圧痛を訴えるが、一部の患者では疼痛がみられない。関節症状は、対称性または非対称性のことがあり、大関節または小関節を侵す。付着部炎により、腸骨稜および脊椎、大腿骨大転子、膝蓋骨、脛骨粗面、アキレス腱、足底筋膜付着部の圧痛が引き起こされる。眼異常は虹彩毛様体炎で、通常は無症状であるが、時に霧視および縮瞳を引き起こす。乾癬性では、乾癬皮膚病変、指炎、爪の点状陥凹などの皮膚の異常がみられる。全身型では、高熱、発疹、脾腫、全身性のリンパ節腫脹、心膜炎または胸膜炎を伴う漿膜炎などが見られ、症状は、関節炎の発症に先行することがある。発熱が毎日起こり、しばしば午後または夕方に最も高熱になり、数週間繰り返すことがあるので見逃さない。 |
主訴 |
関節痛|Arthralgia 高熱|High fever/Hyperthermia こわばり|Stiffness 弛張熱|Remittent fever 発熱|Pyrexia/Fervescence/Fever 皮下結節|Subcutaneous nodule 脾腫|Splenomegaly 発疹|Eruption/Exanthema リウマトイド疹|Rheumatid リンパ節腫脹|Lymphadenopathy |
鑑別疾患 |
造血器悪性腫瘍 炎症性腸疾患 乾癬性関節炎 強直性脊椎炎|Ankylosing Spondylitis 全身性硬化症/強皮症|Systemic Sclerosis/Scleroderma(SSc) シェーグレン症候群|Sjogren's Syndrome 全身性エリテマトーデス|Systemic Lupus Erythematosus(SLE) 反応性関節炎|Reactive Arthritis 変形性関節症|Osteoarthritis(OA) 虹彩毛様体炎 小顎症 |
スクリーニング検査 |
Albumin|アルブミン [/S] Alanine Aminotransferase|アラニンアミノトランスフェラーゼ/グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ [/S] Anti-Streptolysin O|抗ストレプトリジンO価/抗ストレプトリジン抗体 [/S] Aspartate Aminotransferase|アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ/グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ [/S] C-reactive Protein|C反応性蛋白 [/S] Erythrocyte Sedimentation Rate|赤血球沈降速度 [/B] Ferritin|フェリチン [/S] Glucose|グルコース/血糖/ブドウ糖 [/Synovial Fluid] Hematocrit|ヘマトクリット/赤血球容積率 [/B] Hemoglobin|ヘモグロビン/血色素量 [/B] Immunoglobulin G|免疫グロブリンG [/S] Iron|鉄/血清鉄 [/S] Leukocytes|白血球数 [/B] Lymphocytes|リンパ球 [/Synovial Fluid] Rheumatoid Factor|リウマチ因子測定/RAゼラチン凝集反応/リウマチ因子定量 [/S] TIBC|総鉄結合能 [/S] |
異常値を示す検査 |
25-Hydroxy Vitamin D|25-ヒドロキシビタミンD/25OHビタミンD [/S] Anti-ds DNA Antibodies|抗ds-DNA抗体 [/S] Anti-ss DNA Antibodies|抗ss-DNA抗体 [/S] Anti-U1RNP Antibodies|抗U1-RNP抗体/抗RNP抗体 [/S] Antinuclear Antibodies|抗核抗体 [/S] Complement C3|補体第3成分/β1C・β1Aグロブリン/C3 [/Synovial Fluid, /S] Complement C4|補体第4成分/β1Eグロブリン/C4 [/Synovial Fluid, /S] Complement, Total|補体価/CH50 [/S, /Synovial Fluid, /S] HLA-B27|HLA-B27 [Positive/B] Hyaluronic Acid|ヒアルロン酸 [/S] Interleukin-1α [/S] Interleukin-2|インターロイキン-2 [/S] Interleukin-6|インターロイキン-6 [/S, /Synovial Fluid] Leukotriene E4|ロイコトリエンE4 [/U] Soluble Interleukin-2 Receptor|可溶性 IL-2レセプター/IL-2レセプター/可溶性 IL-2受容体 [/S] Thrombomodulin|トロンボモジュリン [/P] α2-Macroglobulin|α2-マクログロブリン [/S] |
関連する検査の読み方 |
【関節液一般検査】 炎症性関節液の所見で、白血球は2,000~50,000/μLである。 【抗核抗体】 多関節型で30%、小関節型で75%、全身型では8%程度の陽性率である。ANAは膠原病やその類縁疾患で出現する自己抗体で、抗ヒストン抗体、抗DNA抗体、抗ENA抗体、抗RNA抗体、抗セントロメア抗体など種々の抗体が含まれる。個々の抗体は細胞核の蛍光染色パターンで分類する。この検査はあくまでもスクリーニング検査であり、陽性になった場合は疾患特異的な抗体検査を選択し定量測定する。 【HLA-B27】 付着部関節炎で陽性になる。HLA-B27抗原は関節リウマチと強直性脊椎炎で高率に陽性となることから、これら疾患の診断に有用である。また、この抗原は高い家族集積性を示し、遺伝因子としての重要性が示唆されている。 【ヒアルロン酸】 関節症状に対応して増加する。ヒアルロン酸は高分子のムコ多糖体で細胞間質にゼリー状溶液の状態で存在し潤滑作用や組織保持作用があり、関節液や眼球硝子体に分布している。ヒアルロン酸は胸腔や腹腔の中皮で作られ、血中の半減期は2.5~5.5分で肝の類洞内皮細胞で分解される。この物質は炎症の回復過程で産生が増加し血中濃度が上昇する。臨床的には関節組織での合成亢進、肝線維化に伴う線維芽細胞による合成亢進、肝類洞内皮細胞障害による分解能低下が疑われる病態で測定される。 【リウマチ因子】 多関節型では50%が陽性であるが、他の型では10%程度の陽性率である。RFは変性ヒトIgGのFcレセプター部分と反応する自己抗体でIgA、IgG、IgM型の3種がある。関節リウマチの80~85%で陽性となるが、健常者の2~4%、健常高齢者の10%で陽性になることが知られている。臨床的には関節リウマチや膠原病類縁疾患を疑う場合のスクリーニング検査として用いる。ただし、慢性肝疾患、慢性感染症や健常人でも陽性になる場合があり、疾患特異性は高くない。異常値を見た場合はIgGクラスRF、抗ガラクトース欠損IgG抗体、免疫複合体を測定し、RAが疑われたら、抗CCP抗体を測定する。 【ESR】 RF,ANAとともに必ず測定する。 |
検体検査以外の検査計画 | 細隙灯検査、単純X線検査、MRI検査 |