疾患解説
| フリガナ | ソクトウドウミャクエン | 
| 別名 | 巨細胞性動脈炎 頭蓋動脈炎 Horton病 | 
| 臓器区分 | 神経・筋疾患 | 
| 英疾患名 | Temporal Arteritis | 
| ICD10 | M31.6 | 
| 疾患の概念 | 頭蓋周囲の動脈、特に頸動脈とその分枝の慢性炎症性疾患で、50~55歳以上(平均年齢は72歳)の女性に多く、男女比は1:1.6である。動脈に巨細胞の浸潤が認められることから、巨細胞動脈炎の一型と考えられている。約半数にリウマチ性多発筋痛症を合併する。血管炎は、限局性、多病巣性または広範性など様々である。この疾患は弾性組織を含む動脈を侵す傾向があり、殆どの場合侵される血管は、側頭部、頭蓋または頸動脈系の動脈である。高齢者に多くみられることから、発症の原因は、加齢変化に基づく自己免疫学的機序が考えられている。 | 
| 診断の手掛 | 症状は数週間にわたって徐々に発現することもあれば、突然現れることもある。50歳以上の高齢者が、徐々に発症する全身倦怠感、易疲労感、体重減少、発熱(37~39℃で反復性)などの症状に加え、片側性の激しい頭痛、側頭部痛を訴えたら本症を疑う。側頭動脈の索状あるいは結節性肥厚が触知されれば本症が強く疑われる。重篤な合併症として虚血性視神経症による眼病変があるので見逃さない。最もよく見られる症状は、側頭部、後頭部、前頭部の重度で、拍動性の頭痛であるが、頭皮に触れたり髪をとかすことにより誘発される頭皮痛を伴うこともある。複視、暗点、眼瞼下垂、霧視、視力喪失などの視覚障害を来すこともあるので、注意する。 【診断基準:1990年ACR】 1.50歳以上。 2.新たな頭痛:初めて経験する、あるいは経験したことがない局所性頭痛。 3.側頭動脈異常:頚動脈の動脈硬化と関係のない側頭動脈に沿った圧痛あるいは脈拍減弱。 4.赤沈値50mm/hr以上。 5.動脈生検の異常:単核細胞浸潤あるいは肉芽腫性炎症が著明、通常巨細胞を伴う血管炎症所見。 *3項目以上で診断する。 | 
| 主訴 | 易疲労感|Fatigue 下顎痛|Mandibular pain 関節痛|Arthralgia 顎跛行|Jaw claudication 眼瞼下垂|Blepharoptosis/Ptosis 筋肉痛|Myalgia 咬筋痛|Masseter pain 食欲不振|Anorexia 視力障害|Blurred vision/Visual impairment 頭痛|Headache/Cephalalgia 舌痛|Glossodynia/Glossalgia 全身倦怠感|General malaise/Fatigue 側頭部痛|Temporal region of head pain 体重減少|Weight loss 発熱|Pyrexia/Fervescence/Fever 複視|Diplopia やせ|Weight loss | 
| 鑑別疾患 | 感染症 頸椎症 膠原病 全身性血管炎 アミロイドーシス|Amyloidosis 悪性腫瘍 三叉神経痛|Trigeminal Neuralgia 副鼻腔炎 結節性多発動脈炎|Polyarteritis Nodosa(PAN) ウェゲナー肉芽腫症 高安動脈炎|Takayasu's Arteritis 大動脈炎 脈なし病 血管性頭痛 Tolosa-Hunt症候群 リウマチ性多発筋痛症|Polymyalgia Rheumatica 手根管症候群 | 
| スクリーニング検査 | Albumin|アルブミン [  /S] Alkaline Phosphatase|アルカリホスファターゼ/アルカリ性ホスファターゼ [  /S] Creatinine|クレアチニン [  /S] C-reactive Protein|C反応性蛋白 [  /S] Erythrocyte Sedimentation Rate|赤血球沈降速度 [  /B] Fibrinogen|フィブリノゲン/凝固第I因子 [  /P] Hematocrit|ヘマトクリット/赤血球容積率 [  /B] Hemoglobin|ヘモグロビン/血色素量 [  /B] Immunoglobulin G|免疫グロブリンG [  /S] Leukocytes|白血球数 [  /B] Monocytes|単球 [  /B] Neutrophils|好中球 [  /B] Protein-Total|総蛋白/血清総蛋白/血清蛋白定量 [  /CSF] Rheumatoid Factor|リウマチ因子測定/RAゼラチン凝集反応/リウマチ因子定量 [  /S] α2-Globulin|α2-グロブリン [  /S] γ-Globulin|γ-グロブリン [  /S] | 
| 異常値を示す検査 | Anticardiolipin Antibodies|抗リン脂質抗体/抗PL抗体/抗カルジオリピン(CL)抗体/ループスアンチコアグラント(LA)/リン脂質抗体 [  /S] Complement, Total|補体価/CH50 [  /S] Haptoglobin|ハプトグロビン [  /S] HLA Antigens|HLA抗原 [Present/B] Interleukin-6|インターロイキン-6 [  /S] Leukemia Inhibitory Factor [  /S] Soluble CD23 [  /S] Soluble Intercellular Adhesion Molecule-1|可溶性ICAM-1/可溶性CD54/細胞接着分子-1 [  /S] α1-Acid Glycoprotein|α1-酸性糖蛋白/オロソムコイド/α1アシドグリコプロテイン [  /S] | 
| 関連する検査の読み方 | 【ESR】 通常50mm/時以上になり、活動期にはしばしば100mm/時を超えるが患者の1%は基準範囲内である。CRPも高値となる。 【CBC】 正色素性あるいは軽度の低色素性貧血が見られる。白血球増加もみられるが非特異的である。 【肝機能検査】 高頻度に見られ、特にALP値が上昇する。ポリクロナール高グロブリン血症が見られることがある。 【インターロイキン-6】 ESRと共に疾患活動性をよく反映する。CRPは上昇するが指標にはならない。IL-6はTリンパ球、Bリンパ球、マクロファージ、線維芽細胞、血管内皮細胞、腎メザンギウム細胞などで産生される糖蛋白で多彩な生理作用を持つ。その生理作用はBリンパ球の抗体産生促進、Tリンパ球の分化や活性化促進、肝細胞によるCRP産生誘導、巨核球や血小板の産生促進、体温上昇、神経細胞の分化などである。 【生検】 側頭動脈の生検は確定診断に有用である。中膜と外膜にリンパ球、組織球、形質細胞および巨細胞の炎症性浸潤が見られる。病変部では、炎症性の部分と正常な部分がしばしば交互に存在するので、可能であれば異常にみえる部分を採取すべきである。通常は側頭動脈の生検を症状のある側から行う。採取する側頭動脈の長さは、最長で5cmまでの長めの検体を採取した場合は、より診断率が向上する | 
| 検体検査以外の検査計画 | 蛍光眼底血管造影検査、血管造影検査、超音波検査、MRA検査 | 
