疾患解説
フリガナ | ニョウサイカンカンシツセイジンエン |
別名 | 間質性腎炎 |
臓器区分 | 腎・泌尿器疾患 |
英疾患名 | Tubulointerstitial Disease |
ICD10 | N12 |
疾患の概念 | 原発性の尿細管と間質の障害で、腎機能低下をもたらす。急性型はアレルギー性の薬物反応または感染症が原因で、慢性型は遺伝性、代謝性、鎮痛薬・漢方薬、閉塞性尿路疾患などが原因となる。急性尿細管間質性腎炎(ATIN)は炎症性の細胞浸潤と浮腫が腎間質に認められ、数日から数カ月で発症し、95%以上が感染または薬物アレルギー反応が原因である。また、急性尿細管間質性腎炎とぶどう膜炎を併発する腎眼症候群を発症することもある。慢性尿細管間質性腎炎(CTIN)は慢性の尿細管障害により間質の浸潤と線維化、尿細管萎縮と機能障害および腎機能の悪化が、数年に亘って徐々に進行し発症する。原因は免疫介在性疾患。感染、逆流性または閉塞性腎症、薬物、代謝障害、高血圧などが挙げられる。 |
診断の手掛 | 感冒様症状や全身倦怠感と共に食欲不振、悪心、嘔吐などの腎不全症状を訴える患者を診たら本症を疑う。古典的な3主徴である発熱、発疹、好酸球増加は信頼性に欠ける。ATINの症状は非特異的で、腎不全が発生するまで認められないことが多い。多くの患者では、尿濃縮能およびNa再吸収能の欠損が原因の多尿および夜間頻尿が見られる。薬剤性ATINの古典的な三主徴とされる発熱、発疹、好酸球増多が全て揃う患者は10%未満とされている。CTINは、腎不全が発生するまで症状は認められない。浮腫は認められず、血圧は正常であるか、早期に軽度に上昇するのみである。多尿および夜間頻尿が生じることがある。 |
主訴 |
嘔吐|Vomiting 悪心|Nausea 関節痛|Arthralgia 感冒様症状|Symptomes of common cold 羞明|Photophobia/Photosensitibity 食欲不振|Anorexia 視力障害|Blurred vision/Visual impairment 全身倦怠感|General malaise/Fatigue 体重減少|Weight loss 多尿|Polyuria 発熱|Pyrexia/Fervescence/Fever 皮疹|Eruption/Exanthema 腹痛|Abdominal pain 発疹|Eruption/Exanthema 夜間頻尿|Nocturia やせ|Weight loss |
鑑別疾患 |
ジフテリア|Diphtheria 溶血連鎖球菌感染症 高シュウ酸尿症 高尿酸尿症 クリオグロブリン血症|Cryoglobulinemia IgA腎症|IgA Nephropathy シェーグレン症候群|Sjogren's Syndrome 悪性リンパ腫|Malignant Lymphoma 多発性骨髄腫|Multiple Myeloma 腎実質感染症 サルコイドーシス|Sarcoidosis Behcet病 ウェゲナー肉芽腫症 薬剤(抗生物質、抗痙攣剤、利尿薬、NSAIDs) |
スクリーニング検査 |
Chloride|クロール [/S] Creatinine|クレアチニン [/S] Potassium|カリウム [/S] Protein-Total|総蛋白/血清総蛋白/血清蛋白定量 [/U] |
異常値を示す検査 |
Ammonium Ions|アンモニウムイオン [/U] CD45 Leukocytes|CD45 [/Tissue] Creatinine Clearance|クレアチニンクリアランス [/U] Intercellular Adhesion Molecule-1|CD54 [/Tissue] Inulin Clearance|イヌリンクリアランス [/U] pH|尿pH [/U] Phenolsulfonphthalein Test|フェノールスルホンフタレイン試験/PSP試験 [/U] Soluble Intercellular Adhesion Molecule-1|可溶性ICAM-1/可溶性CD54/細胞接着分子-1 [/S] |
関連する検査の読み方 |
【尿沈渣】 白血球、赤血球、尿細管上皮細胞、白血球円柱、顆粒円柱、塩類円柱、大食細胞円柱がみられる。好酸球を含む無菌性膿尿が特異的所見である。 【尿中好酸球】 尿中の好酸球は50%の陽性予測値と90%の陰性予測値を有し、欠如していれば本疾患を除外できる。 【チオ硫酸ナトリウムクリアランス】 軽度に低下する。 【パラアミノ馬尿酸クリアランス】 基準範囲以下になることがある。 【eGFR】 低値になることがある。 【クレアチニンクリアランス】 低値になる。クレアチニンは筋量に比例し、ほぼ一定の割合で産生され、腎糸球体から濾過され、尿細管で再吸収や分泌が殆んどない物質で、そのクリアランスは糸球体濾過量(GFR)とほぼ近似した値となるため、GFRの近似指標として用いられる。臨床的には腎糸球体や尿細管の障害が疑われる糖尿病腎症などの早期発見に用いられる。 【イヌリンクリアランス】 低値になる。イヌリンは生体内で合成されず、糸球体で100%濾過され尿細管で再吸収されないことから、Cinは真の糸球体濾過量(GFR)を表す最良のマーカーとされている。臨床的にはGFRのゴールドスタンダードとして慢性腎疾患(CKD)のステージ分類や血液透析導入時の正確な腎機能評価に用いられる。 【Fishberg濃縮試験】 尿濃縮力障害のため尿比重1.022以下、尿浸透圧850Osm/kg以下になる。尿の濃縮には血清浸透圧の上昇、ADH分泌亢進、腎集合管の水チャンネルの正常な反応が必要である。フィッシュバーグ濃縮試験は水分制限を行いADHの分泌が正常であったと仮定して、腎髄質の尿濃縮能を評価するもので尿細管機能の改善度を知る目的で行う。検査は中程度の腎機能低下症例に行い、腎不全の症例ではGFRの低下を増悪させるので禁忌である。 【PSP試験】 20~25%になる。PSPは体内で代謝されずに靜注量の6%が糸球体から、残り94%は近位尿細管から排泄される色素である。近位尿細管のPSP排泄極量は靜注時のPSP血中濃度よりも高いため、PSPの尿中排泄量は尿細管周囲の血管に到達したPSPの量に規定されることになり、腎血漿流量を反映している。臨床的にはPSP15分値は腎血漿流量と近位尿細管分泌機能の指標として有用性が高い。また、15、30、60、120分の分画排泄曲線から、尿路通過障害が推定できる。ネフローゼ症候群や肝硬変などで低蛋白血症がある時は、蛋白との結合量が減少し、遊離型が増加するため、15分値が高値となるので注意する。 【腎生検】 確定診断と進行度の把握には有用である。 |
検体検査以外の検査計画 | 眼科検査、超音波検査 |