疾患解説
フリガナ | ツウフウ |
別名 | 痛風関節炎 |
臓器区分 | 代謝性疾患 |
英疾患名 | Gout |
ICD10 | M10.9 |
疾患の概念 | 高尿酸血症を基礎に発症する関節炎を含む様々な障害を来す病態で、30歳以降の男性で肥満、大食家に好発する。関節内外の組織へ尿酸-Na結晶が析出する。尿酸は、プリン体から生成され尿中に排泄されるが、尿酸産生過剰、尿酸排泄低下、両者の混合により高尿酸血症を来す。痛風は、女性より男性でより多くみられ、男性では中年期に、女性では閉経後に発症する。痛風は、高尿酸血症がより重度で長引くほど発症の可能性が高いが、痛風が高尿酸血症の一部の人達だけに発症する原因は不明である。尿酸の腎排泄の減少は、遺伝、利尿薬投与、GFRを低下させる疾患の患者で見られる。尿酸の産生増加は、悪性リンパ腫、白血病、溶血性貧血などの細胞増殖および細胞死の速度が増加した状態や乾癬、癌治療、放射線療法による核蛋白代謝亢進が原因である。尿酸産生量は体表面積と相関するため、肥満と関係する。また、肝臓、アンチョビ、アスパラガス、ニシン、キノコ、ムール貝などプリン体を多く含む食品の多量摂取が高尿酸血症の一因となるが、厳格な低プリン体の食事療法をしても血清尿酸値を1mg/dL下げるに過ぎない。尿酸塩は、尿酸1Naの針状結晶として、軟骨、腱、腱鞘、靱帯、滑液包壁や関節および耳などに沈着する。急性痛風性関節炎は、外傷、感染症、手術、サイアザイド系利尿薬もしくは尿酸低下作用を有する薬剤の使用、プリンの豊富な食品やアルコールの過剰摂取によって発症することがあり、発作は、血清尿酸値の急増や急減によって誘発されることが多い。 |
診断の手掛 |
単関節性で拇指の中足趾節関節に急性の疼痛(しばしば夜間に発症)、圧痛、熱感、発赤や腫脹を訴える患者を診たら本症を疑う。患部の皮膚は緊張し、熱を持ち、光沢があり、赤色または紫色を示し、痛みは耐え難いほどと訴える。 【診断基準:米国リウマチ学会】 1.尿酸塩結晶が関節液中に存在すること。2.痛風結節の証明。3.以下の項目のうち6項目以上を満たす。a)2回以上の急性関節炎の既往がある。b)24時間以内に炎症がピークに達する。c)単関節炎である。d)関節の発赤がある。 e)第1中足趾節関節の疼痛または腫脹がある。f)片側の第1中足趾関節の病変である。g)片側の足関節の病変である。h)痛風結節がある。i)血清尿酸値の上昇がある。j)X線上の非対称性腫脹がある。k)発作の完全な寛解がある。 |
主訴 |
圧痛|Tenderness 関節圧痛|Joint tenderness 関節腫脹|Articular swelling 関節痛|Arthralgia 関節発赤|Rubor of joint 腫脹|Swelling/Tumor 疼痛|Pain/Ache 発熱|Pyrexia/Fervescence/Fever 皮膚潮紅|Skin flush/Rubedo 歩行困難|Dysbasia 発赤|Flare/Rubor |
鑑別疾患 |
回帰性リウマチ 外傷性関節炎 外反拇祉 化膿性関節炎 乾癬性関節炎 関節リウマチ|Rheumatoid Arthritis 偽痛風|Pseudogout 急性石灰沈着性関節周囲炎 結晶性関節炎 サルコイドーシス|Sarcoidosis 爪周囲炎 変形性関節症|Osteoarthritis(OA) 蜂窩織炎 毛包炎 Reiter症候群 |
スクリーニング検査 |
Aspartate Aminotransferase|アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ/グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ [/S] Cholesterol|総コレステロール/コレステロール/コレステリン [/S] Creatinine|クレアチニン [/S] C-reactive Protein|C反応性蛋白 [/S] Erythrocyte Sedimentation Rate|赤血球沈降速度 [/B] GFR|糸球体濾過量 [/U] Glucose|グルコース/血糖/ブドウ糖 [/Synovial Fluid] HDL-Cholesterol|HDL-コレステロール/高比重リポ蛋白コレステロール [/S] Leukocytes|白血球数 [/B, /Synovial Fluid] Neutrophils|好中球 [/B, /Synovial Fluid] Phosphate|無機リン [/S] Protein-Total|総蛋白/血清総蛋白/血清蛋白定量 [/Synovial Fluid, /U] Rheumatoid Factor|リウマチ因子測定/RAゼラチン凝集反応/リウマチ因子定量 [/S] Triglycerides|トリグリセリド/中性脂肪/トリグリセライド/トリアシルグリセロール [/S] Thyroid Stimulating Hormone|甲状腺刺激ホルモン [/S] Urea Nitrogen|尿素窒素 [/S] Uric Acid|尿酸 [/Synovial Fluid, /U] α1-Globulin|α1-グロブリン [/S] α2-Globulin|α2-グロブリン [/S] |
異常値を示す検査 |
1,25-Dihydroxy Vitamin D3|1,25-ジヒドロキシビタミンD3/1α,25-ジヒドロキシビタミンD/活性型ビタミンD [/S] 17-Ketosteroids|17-ケトステロイド [/U] Adenosine Deaminase|アデノシンデアミナーゼ [/S] Alanine|アラニン [/P] Apolipoprotein A-II|アポリポ蛋白A-II [/S] Apolipoprotein B|アポリポ蛋白B [/S] Apolipoprotein C-II|アポリポ蛋白C-II [/S] Apolipoprotein C-III|アポリポ蛋白C-III [/S] Apolipoprotein E|アポリポ蛋白E [/S] Complement, Total|補体価/CH50 [/S, /S, /Synovial Fluid] Creatinine|クレアチニン [/S] Creatinine Clearance|クレアチニンクリアランス [/U] Erythrocyte Sedimentation Rate|赤血球沈降速度 [/B] Gelatinase|ゼラチナーセ/IV型コラゲナーゼ [/S] Glutamic Acid|グルタミン酸 [/P, /RBC] Glycine|グリシン [/P] Interleukin-11|インターロイキン-11 [/Synovial Fluid] Interleukin-6|インターロイキン-6 [/S, /Synovial Fluid] Inulin Clearance|イヌリンクリアランス [/U] Lipoprotein Lp (a)|リポ蛋白(a)/リポプロテイン(a) [/S] pH|尿pH [/U] Prostaglandin E2|プロスタグランジンE2 [/Synovial Fluid] Serine|セリン [/P] Soluble Interleukin-6 Receptor-α [/Synovial Fluid] Stromelysin [/P] Tissue Plasminogen Activator|組織プラスミノゲンアクチベータ [/U] |
関連する検査の読み方 |
【CBC】 急性発作時に中等度の白血球増多を認め、好中球が増加する。 【関節液一般検査】 関節液に尿酸ナトリウム結晶が認められれば診断が確定する。白血球は2,000~1000,000/μLに増加し、多核白血球が50%を超え混濁している。また、結晶成分が増加するとチョーク状の白濁が見られる。 【クレアチニンクリアランス】 低下する。 【結石分析】 治療方針の決定に有用である。 【α1-マイクログロブリン】【β2-マイクログロブリン】 増加していれば尿細管障害を考える。α1-MGは肝で産生される糖蛋白で、糸球体で濾過され近位尿細管で再吸収される分子量約3万の低分子蛋白である。血中では遊離マイクログロブリンと、IgAと結合した高分子マイクログロブリンが半々の割合で存在する。血中濃度は糸球体の濾過と尿細管の再吸収で左右され、GFRを良く反映するため、尿細管機能の評価に用いられる。β2mは全ての有核細胞の膜抗原を構成しているが、細胞から遊離すると糸球体を通過し近位尿細管で再吸収され分解される。この蛋白の異化経路の大部分は腎を経由するため、腎の排泄機能が低下すると、他の低分子蛋白よりも著しく血中濃度が増加する。また、血中濃度はGFRと良く相関するので、GFRに代用されることもある。臨床的には腎障害部位の推測や腎疾患活動性の推定に用いる。 【尿酸】 95%の患者に血清尿酸値>7.5mg/dLを認めるが、尿酸値からは痛風の診断をつけることはできない。急性発作の30%は基準範囲内、多くの患者は尿酸値が高くならない。高尿酸血症のうち1~3%だけが痛風を発症する。 【尿中尿酸値】 尿中尿酸は排泄低下型痛風では排泄量が0.3g/日以下に低下する。24時間蓄尿の尿酸排泄量が800mg以上の場合はプリン体の産生過剰を考える。 【尿浸透圧】 尿細管障害のため低下する。 【尿沈渣】 尿酸塩、尿酸結晶が認められる。 |
検体検査以外の検査計画 | 関節単純X線検査 |