疾患解説
フリガナ | ニョウロカンセンショウ |
別名 | |
臓器区分 | 腎・泌尿器疾患 |
英疾患名 | Urinary Tract Infection(UTI) |
ICD10 | N39.0 |
疾患の概念 | 腎、腎盂、尿管、膀胱、尿道や前立腺を含む領域の感染症で、基礎疾患の無い単純性と基礎疾患が存在する複雑性に分けられる。カテーテル尿検体中に5×10⁴コロニー/mL以上、また排尿検体では10⁵コロニー/mL以上が反復して認められる場合を尿路感染症と呼ぶ。ただし、女性の半数は、これよりも低値である。原因菌は、グラム陰性好気性菌が大部分(75%)を占める。単純性UTIは、20~50歳の成人では、女性が男性に比べ約50倍多く、殆どが膀胱炎または腎盂腎炎である。同じ年齢層の男性は、殆どのUTIが尿道炎または前立腺炎である。ただし、男性の殆どのUTIは小児または高齢患者で発症する。複雑性UTIは、尿路の構造的または機能的異常および尿流の閉塞、コントロール不良の糖尿病、慢性腎臓病、易感染状態、尿路に対する器具操作または手術の最近の既往が原因で発症する。健常者にUTIを引き起こす頻度が高い細菌は、グラム陰性好気性の腸内細菌が最も多く、膀胱と尿管の移行上皮に特異的な接着因子を持つ大腸菌株が全症例の75~95%を占める。入院患者では、大腸菌が全症例の約50%を占め、Klebsiella属、Proteus属などのグラム陰性菌が約40%、残りはグラム陽性球菌である。 |
診断の手掛 | 患者は頻尿、尿意切迫、排尿障害、下腹部痛、側腹部痛などを訴えるので、診断は比較的容易である。ただし、高齢者は無症候性の場合があるので注意する。20~50歳の成人患者のうち女性は男性の50倍多くみられる。50歳を過ぎると男女比は前立腺疾患の増加に伴い縮小する。尿道炎の主な症状は、排尿困難と男性では尿道分泌物で、分泌物は膿性、白色調または粘液性を呈する。膀胱炎は、突然発症し、頻尿、尿意切迫、灼熱感または疼痛を伴う少量の排尿が見られる。夜間頻尿もよく見られ、恥骨上部痛や腰痛を伴うことがある。尿は混濁し、顕微鏡的血尿が見られることがある。急性腎盂腎炎の1/3の患者には、頻尿と排尿困難が見られるが、典型的な症状は悪寒、発熱、側腹部痛、腹部仙痛、悪心、嘔吐などである。 |
主訴 |
嘔吐|Vomiting 悪寒戦慄|Chill with shivening 悪心|Nausea 下腹部痛|Hypogastric pain 血尿|Hematuria 下痢|Diarrhea 側腹部痛|Lateroabdominal pain 排尿障害|Urinary disturbance/Dysuria 排尿痛|Scalding/Micturition pain 発熱|Pyrexia/Fervescence/Fever 頻尿|Pollakiuria/Pollakisuria 腹痛|Abdominal pain 腰痛|Low back pain/Lumbago |
鑑別疾患 |
急性腎盂腎炎|Acute Pyelonephritis 子宮頸管炎 腎周囲膿瘍 腎乳頭壊死 腎膿瘍 性感染症 精巣上体炎 前立腺炎 糖尿病|Diabetes Mellitus 尿道炎|Urethritis 尿路結核 妊娠 膀胱炎 慢性腎盂腎炎|Chronic Pyelonephritis 膣炎 尿路結石症|Urinary Calculi 急性前立腺炎|Acute Prostatitis Reiter症候群 |
スクリーニング検査 |
C-reactive Protein|C反応性蛋白 [/S, /U] Erythrocytes|赤血球数 [/U] Immunoglobulin A|免疫グロブリンA [/U] Leukocytes|白血球数 [/U] Neutrophils|好中球 [/U] Protein-Total|総蛋白/血清総蛋白/血清蛋白定量 [/U] |
異常値を示す検査 |
Amyloid A Protein|血清アミロイドA蛋白/アポSAA/アミロイドA蛋白 [/S] Angiotensin-converting Enzyme|アンギオテンシン変換酵素 [/U] Casts|円柱 [/U] Fibrin and Fibrinogen Degradation Products|フィブリン・フィブリノゲン分解産物/線維素分解産物 [/P] Interleukin-6|インターロイキン-6 [/U] Interleukin-8|インターロイキン-8 [/U] Leukocytes,Nitrate (Urine)|亜硝酸塩試験/尿白血球反応/尿エステラーゼ反応 [Positive/U] Myeloperoxidase|ミエロペルオキシダーゼ抗原/MPO抗原 [/U] α1-Acid Glycoprotein|α1-酸性糖蛋白/オロソムコイド/α1アシドグリコプロテイン [/S] α1-Antichymotrypsin|α1-アンチキモトリプシン [/S] α2-Macroglobulin|α2-マクログロブリン [/U] β-Glucuronidase|β-グルクロニダーゼ [/U] |
関連する検査の読み方 |
【CBC】 白血球が上部尿路感染で増加する。 【CRP】 上部尿路感染で高値である。 【尿細菌培養】 起炎菌の75%は大腸菌である。定量培養で1,000CFU/mL以上あることが必要。中間尿検体の採取は、外尿道口を低刺激性消毒薬で洗ってから、空気乾燥させる。粘膜と尿流の接触を最小限に抑えるため、女性では陰唇を広げ、男性では包皮を引き上げる。尿の最初の5mLは採取せず、次の5~10mLを無菌容器に採取する。高齢女性と性器出血や帯下がみられる女性は、カテーテル採取が望ましい。 【尿沈渣】 白血球(好中球)が強拡大で1視野5個以上認められる。大食細胞、細菌を認める。結晶成分としてリン酸アンモニウムMg結晶が認められる。 【亜硝酸塩試験】 尿中に排泄される蛋白質由来の硝酸塩は尿中細菌の持つ亜硝酸還元酵素の働きで亜硝酸塩になる。この亜硝酸塩をGriess反応で検出する方法を尿亜硝酸試験と呼ぶ。主として大腸菌などのグラム陰性桿菌の菌数が10⁵CFU/mL以上で陽性となる。 |
検体検査以外の検査計画 | |