疾患解説
フリガナ | リウマチセイタハツキンツウショウ |
別名 | |
臓器区分 | 膠原病・免疫疾患 |
英疾患名 | Polymyalgia Rheumatica |
ICD10 | M35.3 |
疾患の概念 | 高齢者に発症する四肢近位部のこわばりと疼痛を主徴とする疾患で、しばしば側頭動脈炎と合併(40~60%)することから側頭動脈炎の類縁疾患と考えられている。通常は60歳を超えると発症し、男女比は、2:1である。リウマチ性多発筋痛症は、巨細胞性動脈炎と密接に関連するため、2つの疾患を同じ過程の異なる段階とする説もある。リウマチ性多発筋痛症患者のうちの少数が、巨細胞性動脈炎を発症するが、リウマチ性多発筋痛症は、40~60%の巨細胞性動脈炎患者にみられる。この疾患の病因と発生機序は不明である。 |
診断の手掛 |
急性または亜急性に発症する頸部、肩帯、骨盤帯の激痛とこわばりを訴える患者を診たら本症を疑う。時に寝返り困難を訴えることもある。側頭動脈では、脈拍の減弱と消失を伴う圧痛があり結節が触知される。殆どの患者は、60歳以上なので、50歳以下ではこの疾患を考えなくてよい。鑑別が必要な疾患は、1.RA:リウマチ性多発筋痛症は、小関節の慢性滑膜炎、びらん性または破壊性の病変、リウマチ結節、リウマトイド因子が、約80%の患者で見られない。残りの20%の患者ではRAとの鑑別が困難なことがある。2.多発性筋炎:リウマチ性多発筋痛症は、筋力低下よりも痛みが優勢であり、筋肉関連の酵素レベル、筋電図検査、筋生検は正常である。3.甲状腺機能低下症:リウマチ性多発筋痛症は、甲状腺機能検査と筋肉関連の酵素レベルは正常である。4.多発性骨髄腫:リウマチ性多発筋痛症は、単クローン性免疫グロブリン血症はみられない。5.線維筋痛症:リウマチ性多発筋痛症は、症状がより限局しており、赤沈が亢進し、肩の触診と可動域検査で、痛み訴える。 【診断基準:1985年本邦PMR研究会】 1.赤沈の亢進(40mm以上) 2.両側大腿部筋痛 3.食欲減退、体重減少 4.発熱(37℃以上) 5.全身倦怠感 6.朝のこわばり 7.両側上腕部筋痛 *60歳以上、3項目以上でdefiniteとする 【診断基準:2012年ACR/EULAR】 前提条件:50歳以上、両側の肩の痛み、CRPまたはESR亢進 1.朝のこわばり(45分を超える)加点(USなし):2(USあり):2 2.臀部痛または動きの制限 加点(USなし)1(USあり)1 3.RF陰性、ACPA陰性 加点(USなし)2(USあり)2 4.肩と腰以外の関節痛がない 加点(USなし)1(USあり)15.関節エコー(US)で、肩及び股関節の滑液包炎 加点(USあり)1 6.関節エコーで、両側の肩の滑液包炎 加点(USあり)1 *スコア4点以上(USなし)、5点以上(USあり)で分類する *USでは三角筋下滑膜包炎、二頭筋の腱鞘滑膜炎、肩甲上腕筋の滑膜炎、股関節滑膜炎、転子部の滑液包炎を確認する |
主訴 |
関節痛|Arthralgia 筋肉痛|Myalgia こわばり|Stiffness 食欲不振|Anorexia 全身倦怠感|General malaise/Fatigue 体重減少|Weight loss 発熱|Pyrexia/Fervescence/Fever やせ|Weight loss 抑うつ状態|Depressive state |
鑑別疾患 |
関節リウマチ|Rheumatoid Arthritis 多発性筋炎/皮膚筋炎|Polymyositis/Dermatomyositis ウイルス感染症 感染性心内膜炎|Infective Endocarditis トリキネラ感染 甲状腺機能低下症|Hypothyroidism 悪性腫瘍 白血病 線維筋痛症候群 脊椎関節症 肩関節周囲炎 腫瘍随伴症候群 |
スクリーニング検査 |
C-reactive Protein|C反応性蛋白 [/S] Erythrocyte Sedimentation Rate|赤血球沈降速度 [/B] Immunoglobulin A|免疫グロブリンA [/S] Immunoglobulin G|免疫グロブリンG [/S] Immunoglobulin M|免疫グロブリンM/マクログロブリン [/S] γ-Globulin|γ-グロブリン [/S] |
異常値を示す検査 |
C-terminal Propeptide of Type I Procollagen|Ⅰ型プロコラーゲンC末端プロペプチド [/S] Deoxypyridinoline|デオキシピリジノリン [/U] Haptoglobin|ハプトグロビン [/S] Matrix Metalloproteinase-3|マトリックスメタロプロテイナーゼ-3 [/S] Pyridinoline|ピリジノリン [/U] Soluble CD4+ [/S] Soluble CD8+ [/S] Soluble Intercellular Adhesion Molecule-1|可溶性ICAM-1/可溶性CD54/細胞接着分子-1 [/S] Soluble Interleukin-2 Receptor|可溶性 IL-2レセプター/IL-2レセプター/可溶性 IL-2受容体 [/S] α1-Acid Glycoprotein|α1-酸性糖蛋白/オロソムコイド/α1アシドグリコプロテイン [/S] |
関連する検査の読み方 |
【CBC】 多くの患者に軽度の低色素性あるいは正色素性貧血を認める。血小板は減少する。 【ESR】【CRP】 著明に亢進し(70mm/時以上)診断に有用である。しばしば100mm/時に達する。90%の患者は中央値が約65mm/時程度の高値を示す。CRPなどの急性相反応物質が高値になる。 【AST】【ALT】 30%程度の患者で増加する。 【CK】【アルドラーゼ】 筋原性酵素は基準範囲内である。 【抗核抗体】 陰性で、除外診断に有用である。 【マトリックスメタプロテイナーゼ-3】 高値を示し、軟骨・骨破壊の指標になる。関節リウマチでは滑膜表層細胞、線維芽細胞や浸潤好中球からマトリックスメタプロテイナーゼ(MMP)1、2、3、8、9などが関節液中に分泌され、膜性MMPやセリンプロテアーゼにより活性化され、関節軟骨を破壊する。MMP-3は関節リウマチでは早期から進行期に至るまで、80~90%に見られる。臨床的には関節リウマチ患者を診た場合、急性相反応物質で活動性の評価を行うが、滑膜増殖や関節破壊の程度や予後推定にはMMP-3を測定する。 【リウマチ因子】 本症では認められないが、除外診断のために実施する。 【IL-6】 活動性を示す指標として最も感受性が高い。 |
検体検査以外の検査計画 | 筋電図検査、MRI検査、超音波検査 |