疾患解説
フリガナ | カンセンセイシンナイマクエン |
別名 | 細菌性心内膜炎 |
臓器区分 | 循環器疾患 |
英疾患名 | Infective Endocarditis |
ICD10 | I33.0 |
疾患の概念 | 敗血症が原因の弁や心内膜の感染症で、病巣部には疣贅や膿瘍形成が見られる。疣贅は、弁の機能不全、閉塞、心筋膿瘍や真菌性動脈瘤を引き起こす。起炎菌は、緑色連鎖球菌が多く、E.faecalis、黄色ブドウ球菌、肺炎球菌などがこれに次ぐ。年齢を問わず発症するが、男性は女性の2倍の割合で多い。この疾患は、亜急性細菌性心内膜炎(SBE)、急性細菌性心内膜炎(ABE)と人工弁心内膜炎(PVE)の3種に分けられる。亜急性細菌性心内膜炎は、潜行性に発症し数週間から数カ月かけて緩徐に進行し、しばしば、感染源や侵入門戸が見つからない。起因菌は緑色レンサ球菌、微好気性レンサ球菌、嫌気性レンサ球菌、非腸球菌D群レンサ球菌および腸球菌である。急性細菌性心内膜炎は、突然発生して急速に進行するが、感染源や侵入門戸は明らかなことが多い。起因菌は黄色ブドウ球菌、A群溶血性レンサ球菌、肺炎球菌または淋菌などである。人工弁心内膜炎は、弁置換術施行後1年以内に2~3%の患者で発生し、その後は年0.5%の率で発症する。僧帽弁置換術後よりも大動脈弁置換術後で頻度が高く、機械弁と生体弁の発症率は同じである。全身的な影響として、糸球体腎炎と敗血症性塞栓よるものがあり、あらゆる臓器に影響を及ぼす。右心系心内膜炎の場合は肺が、また、左心系心内膜炎の場合は腎臓、脾臓、中枢神経系、皮膚および網膜が影響を受けやすい。 |
診断の手掛 |
SBEは、症状や徴候に特徴が無く、症状が変わりやすいため診断は容易ではない。発熱があり感染源が不明の患者に、心雑音がある場合は本症を疑う。ABEは、突然発症し数日間で進行する。PVEは、弁置換術、特に大動脈弁の置換術後に起こり易い。診断は血液培養とDuke診断基準による。 【診断基準:改訂Dukeの臨床的診断基準】 A:【IE確診例】 Ⅰ。臨床的基準:大基準2つ、または大基準1つと小基準3つ、または小基準5つ (大基準) 1.IEに対する血液培養陽性 A.2回の血液培養で以下のいずれかが認められた場合(ⅰ)Streptococcus viridans,Streptococcus bovis,HACEKグループ,Streptococcus aureus (ⅱ)Enterococcusが検出され(市中感染)、他に感染巣がない場合 B.次のように定義される持続性のIEに合致する血液培養陽性 (ⅰ)12時間以上間隔をあけて採取した血液検体の培養が2回以上陽性 (ⅱ)3回の血液培養すべてあるいは4回以上の血液培養の大半が陽性(最初と最後の採血間隔が1時間以上) C.1回の血液培養でもCoxiella burnettiが検出された場合、あるいは抗phase1 IgG抗体価800倍以上。 2.心内膜が侵されている所見でAまたはBの場合 A.IEの心エコー図所見で以下のいずれかの場合 (ⅰ)弁あるいはその支持組織の上、または逆流ジェット通路、または人工物の上に見られる解剖学的に説明のできない振動性の心臓内腫瘤 (ⅱ)膿瘍 (ⅲ)人工弁の新たな部分的開裂 B.新規の弁閉鎖不全(既存の雑音の悪化または変化のみでは十分でない)。 (小基準) 1.素因:素因となる心疾患または静注薬物常用。 2.発熱:38℃以上 3.血管現象:主要血管塞栓、敗血症性梗塞、感染性動脈瘤、頭蓋内出血、眼球結膜出血、Janeway発疹 4.免疫学的現象:糸球体腎炎、Osler結節、Roth斑、リウマチ因子 5.微生物学的所見:血液培養陽性であるが上記の大基準を満たさない場合、またはIEとして矛盾のない活動性炎症の血清学的証拠。 Ⅱ。病理学的基準 菌:培養または組織検査により疣腫、側線化した疣腫、心内膜において証明、あるいは病変部位における検索:組織学的に活動性を呈する疣贅や心筋膿瘍を認める。 B:【IE可能性】 大基準1つまたは、小基準3つ C:【否定的】 心内膜炎症状に対する別の確実な診断、または心内膜炎症状が4日以内の抗菌薬により消退、または4日以内の抗菌薬投与後の手術時または剖検時にIEの病理学的所見なし。 |
主訴 |
嘔吐|Vomiting 悪寒戦慄|Chill with shivening 悪心|Nausea オスラー結節|Osler nodule/Osler sign 関節痛|Arthralgia 筋肉痛|Myalgia 呼吸困難|Dyspnea 弛張熱|Remittent fever 食欲不振|Anorexia ジェーンウエー斑点|Janeway spot 頭痛|Headache/Cephalalgia 咳|Cough 全身倦怠感|General malaise/Fatigue 体重減少|Weight loss 痰|Sputum 点状出血|Petechiae 発汗異常|Dyshidrosis/Paridrosis 発熱|Pyrexia/Fervescence/Fever 貧血症状|Anemic symptom やせ|Weight loss ロス斑|Roth spot |
鑑別疾患 |
菌血症 混合性結合組織病|Mixed Connective Tissue Disease(MCTD) 心筋炎|Myocarditis 心室中隔欠損症 心臓弁膜症 心不全|Heart Failure 全身性エリテマトーデス|Systemic Lupus Erythematosus(SLE) 大動脈弁狭窄症 動脈管開存症 肺塞栓症|Pulmonary Embolism(PE) Fallot四徴症 リウマチ熱|Rheumatic Fever 流産|Abortion 播種性血管内凝固症候群|Disseminated Intravascular Coagulation(DIC) 一過性脳虚血発作|Transient Ischemic Attack(TIA) 脳卒中|Apoplexy/Stroke 脾塞栓 腎動脈塞栓症 |
スクリーニング検査 |
Albumin|アルブミン [/S, /U] Creatinine|クレアチニン [/S] C-reactive Protein|C反応性蛋白 [/S] Erythrocytes|赤血球数 [/U] Erythrocyte Sedimentation Rate|赤血球沈降速度 [/B] Hematocrit|ヘマトクリット/赤血球容積率 [/B] Hemoglobin|ヘモグロビン/血色素量 [/B] Iron|鉄/血清鉄 [/S] Leukocytes|白血球数 [/B, /B, /CSF] Monocytes|単球 [/B] Neutrophils|好中球 [/B] Platelets|血小板 [/B, /B] Protein-Total|総蛋白/血清総蛋白/血清蛋白定量 [/CSF, /U] Rheumatoid Factor|リウマチ因子測定/RAゼラチン凝集反応/リウマチ因子定量 [/S] Urea Nitrogen|尿素窒素 [/S] γ-Globulin|γ-グロブリン [/S] |
異常値を示す検査 |
Carbon Dioxide Partial Pressure|動脈血CO2分圧/炭酸ガス分圧/CO2分圧/PCO2/PaCO2 [/B] Complement C3|補体第3成分/β1C・β1Aグロブリン/C3 [/S] Complement C4|補体第4成分/β1Eグロブリン/C4 [/S] Complement, Total|補体価/CH50 [/S] Coombs' Test|クームス試験 [Positive/S] Creatinine Clearance|クレアチニンクリアランス [/U] Cryoglobulins|クリオグロブリン [/S] Erythrocyte Casts|円柱 [/U] Immunoglobulin E|免疫グロブリンE/非特異的IgE/レアギン抗体 [/S] pH|尿pH [/B] Procollagen Type II Peptide [/S] Tumor Necrosis Factor-α|腫瘍壊死因子-α [/S] |
関連する検査の読み方 |
【CBC】 白血球は患者の50%は基準範囲内だが、残りは15,000/μL以上の増加、65~86%は好中球である。進行性の正球性正色素性貧血が特徴的で、ヘモグロビンは7g/dL以下である。血小板は時に減少し紫斑病を起こす。 【血液培養】 血液培養は患者の80~90%で陽性。緑色連鎖球菌は40~50%、黄色ブドウ球菌は15~20%、グラム陰性菌は10%程度の原因菌である。Duke診断基準に準拠した方法(24時間以上に亘って、8時間ごとに連続3回以上採血)で採血する。 【ESR】【CRP】【リウマチ因子】【免疫複合体】 多くの症例で陽性所見を示す。 【免疫電気泳動】 γ-グロブリンは高値である。クリオグロブリンやリウマチ因子が出現することがある。 【尿一般検査】 多くの患者に肉眼的、顕微鏡的血尿とアルブミン尿を認める。 |
検体検査以外の検査計画 | 胸部X線検査、経胸壁・経食道心超音波検査、心電図検査、MRI検査 |