疾患解説
フリガナ | イッサンカタンソチュウドク |
別名 | |
臓器区分 | 中毒・環境要因性疾患 |
英疾患名 | Toxic Effects of Carbon Monoxide |
ICD10 | T58 |
疾患の概念 | 一酸化炭素の吸入によって発症する致死性中毒で、頭痛、悪心、筋力低下、狭心症、呼吸困難、意識消失、痙攣発作、昏睡などの急性症状を引き起こすが、CO毒性のメカニズムは完全には分かっていない。原因はHbからの酸素の置換、酸素-Hb解離曲線の左方シフト、ミトコンドリア呼吸の阻害、脳組織への直接の毒性作用が考えられている。 |
診断の手掛 | 症状が非特異的のため診断を誤り易く、軽度の中毒例の多くは、ウイルス症候群と間違われる。一般的には、頭痛、頻呼吸、意識障害、混迷、昏睡が見られる。全身の鮮紅色皮膚を見たら本症の可能性が高いが、見られないこともある。閉鎖空間で中枢神経症状、循環器症状と消化器症状を訴える患者を診たら、本症を強く疑い動脈血液ガス分析を急ぐ。症状は患者の血中一酸化炭素濃度のピーク値によく相関するが、非特異的である。濃度が10~20%の場合は、頭痛および悪心が現れてくることがある。20%を超えると、めまい、全身の筋力低下、集中困難および判断力の低下がみられる。30%を超えると、労作時呼吸困難、胸痛および錯乱がみられ、さらに高濃度になると、失神、痙攣発作および意識障害を来す。濃度が60%を超えた場合は低血圧、昏睡、呼吸不全を来し死に至ることもある。 |
主訴 |
息切れ|Shortness of breath/Breathlessness 意識障害|Memory impaiment 易疲労感|Fatigue 嘔吐|Vomiting 悪心|Nausea 胸痛|Chest pain 見当識障害|Disorientation 昏睡|Coma 昏迷|Stupor 失禁|Incontinence 視力障害|Blurred vision/Visual impairment 頭痛|Headache/Cephalalgia 全身倦怠感|General malaise/Fatigue 脱力感|Weekness 認知障害|Cognitive impaorment/Dementia 皮膚紅潮|Skin flush/Rubedo 頻呼吸|Tachypnea 歩行障害|Gait disturbance めまい|Dizziness |
鑑別疾患 |
心不全|Heart Failure 髄膜炎|Meningitis 低酸素血症|Hypoxia 熱傷 脳外傷 脳血管障害 薬物中毒 消化器疾患 感冒 たこつぼ型心筋症 シアン中毒 くも膜下出血|Subarachnoid Hemorrhage 脳内出血|Cerebral Hemorrhage 脳梗塞|Cerebral Infarction 睡眠薬中毒 硫化水素中毒 |
スクリーニング検査 |
Aspartate Aminotransferase|アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ/グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ [/S] Creatine Kinase|クレアチンキナーゼ/クレアチンホスホキナーゼ [/S] Erythrocytes|赤血球数 [/U] GFR|糸球体濾過量 [/U] Leukocytes|白血球数 [/B] Protein-Total|総蛋白/血清総蛋白/血清蛋白定量 [/U] Urea Nitrogen|尿素窒素 [/S] |
異常値を示す検査 |
Aldolase|アルドラーゼ/アルドラーゼアイソザイム [/S] Carbon Monoxide Hemoglobin|一酸化炭素ヘモグロビン [/B] Lipids|総脂質 [/U] Myoglobin|ミオグロビン [/U] pH|尿pH [/B] Phosphoglucomutase|ホスホグルコムターゼ [/S] |
関連する検査の読み方 |
【LD】【CK】 心筋障害を反映して増加する。 【アルドラーゼ】 著しく増加することがある。ALDは嫌気性解糖系酵素の一つで、A、B、Cの3種のアイソザイムがあり、A型は骨格筋、心筋、脳、赤血球に、B型は肝、腎に、またC型は脳に分布している。血中の半減期は4時間と短いので組織障害を良く反映するとされている。血中の活性増加はこれら組織の代謝障害、壊死・変性、膜透過性亢進、血液中での処理障害の際に見られる。 【一酸化炭素ヘモグロビン】 ヘモグロビン中の一酸化炭素の割合は症状と相関する。50~60%:昏睡・痙攣、60~70%:呼吸抑制・心抑制、70%以上:死亡。一酸化炭素は酸素の300倍もヘモグロビンと結合し易い上に、ヘモグロビンに結合した酸素の末梢での放出を阻害する。ヘモグロビンには4か所の酸素結合部位があるが、このうちの一つが一酸化炭素と結合すると酸素を放出しにくくなり、末梢の酸素分圧が低下する。臨床的には頭痛、耳鳴、嘔気、めまいなどの臨床症状と中毒患者に特有のピンク色の顔色を呈する患者を見たら積極的に測定する。 【PaCO2】【PaO2】【動脈血pH】 PaCO2は基準範囲内かやや低下する。PaO2は基準範囲内である。pHはアシドーシスのため著減する。 |
検体検査以外の検査計画 | 心電図検査、頭部CT検査、頭部MRI検査、パルスオキシメトリー |