疾患解説
フリガナ | ノウコウソク |
別名 |
脳塞栓症 脳血栓症 虚血性脳血管障害 |
臓器区分 | 神経・筋疾患 |
英疾患名 | Cerebral Infarction |
ICD10 | I63.9 |
疾患の概念 | 脳動脈の閉塞による虚血が原因で、脳組織が壊死を来した病態で、発症率は10万人に100~150人、脳卒中全体の約60%を占めている。成人の脳血流量は50mL/100g脳/分であるが、血流量が10~12mL以下になると不可逆的な壊死に陥る。成因は1.主幹脳動脈のアテローム変性による血栓症。2.細動脈硬化によるラクナ梗塞。3.遊離血栓による塞栓症。4.血管攣縮である。 |
診断の手掛 | 塞栓症は突発的に発症し、血栓症は段階的に増悪する神経学的異常が特徴的である。片麻痺、感覚障害、言語障害、構音障害、意識障害が中高年者に見られたら本症を疑う。特に高血圧、糖尿病、脂質異常症等の危険因子や心房細動の有無に注意する。 |
主訴 |
意識障害|Memory impaiment 運動失調|Ataxia 運動麻痺|Motor paralysis 嚥下障害|Dysphagia 片麻痺|Hemiplegia 感覚障害|Sensory disturbance 言語障害|Language disorder/Allophasis 構音障害|Dysarthria 視野障害|Disturbance in visual field 不整脈|Arrhythmia |
鑑別疾患 |
脳アミロイド血管症 高血圧性脳出血 脳血栓症 脳内出血|Cerebral Hemorrhage 脳静脈血栓症 心原性脳塞栓症 脳静脈洞血栓症 大動脈原性脳塞栓 コレステロール塞栓症 てんかん|Epilepsy |
スクリーニング検査 |
Aspartate Aminotransferase|アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ/グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ [/CSF, /S] Cholesterol|総コレステロール/コレステロール/コレステリン [/S] Creatine Kinase|クレアチンキナーゼ/クレアチンホスホキナーゼ [/CSF, /S] Erythrocytes|赤血球数 [/CSF] Fibrinogen|フィブリノゲン/凝固第I因子 [/P] GFR|糸球体濾過量 [/U] Lactate Dehydrogenase|乳酸デヒドロゲナーゼ [/CSF, /S] Leukocytes|白血球数 [/B, /CSF] Monocytes|単球 [/CSF] Neutrophils|好中球 [/CSF] Protein-Total|総蛋白/血清総蛋白/血清蛋白定量 [/CSF, /S] Sodium|ナトリウム [/S, /U] Triglycerides|トリグリセリド/中性脂肪/トリグリセライド/トリアシルグリセロール [/S, /S] Uric Acid|尿酸 [/CSF, /S, /U] |
異常値を示す検査 |
Amyloid β-Protein Precursor|アミロイドβ蛋白質前駆体 [/CSF] Antiphospholipid Antibodies|抗リン脂質抗体/抗PL抗体/抗カルジオリピン(CL)抗体/ループスアンチコアグラント(LA)/リン脂質抗体 [/S] Arginine Vasopressin|アルギニンバゾプレッシン/抗利尿ホルモン/バゾプレシン [/P] Carbonic Anhydrase II [/CSF] Copper|銅 [/CSF, /S] Creatine Kinase BB-Isoenzyme|CK-BB [/S] Factor XIII|第XIII因子活性/フィブリン安定化因子 [/P] Fibrin and Fibrinogen Degradation Products|フィブリン・フィブリノゲン分解産物/線維素分解産物 [/P] Lipids|総脂質 [/RBC] Lipoproteins|リポ蛋白脂質分画 [/S] Lipoproteins, Pre-β [/S] Neuron-specific Enolase|神経特異エノラーゼ [/S] Nickel|ニッケル [/S] Prothrombin Fragment 1+2|プロトロンビンフラグメント1+2 [/P] Remnant Like Particles-Cholesterol|レムナント様リポ蛋白コレステロール/RLP-コレステロール [/S] Superoxide Dismutase|スーパーオキサイドディスムターゼ/スーパーオキサイドジスムターゼ [/CSF] α1-Antichymotrypsin|α1-アンチキモトリプシン [/CSF] α1-Antitrypsin|α1-アンチトリプシン [/S] α1-Microglobulin|α1-ミクログロブリン/α1-マイクログロブリン [/CSF] α2-Macroglobulin|α2-マクログロブリン [/S] |
関連する検査の読み方 |
【血液像】 好中球が増加する。 【von Willebrand Factor】 高度に増加することがある。 【プロトロンビンフラグメント1+2】 基準範囲上限以上である。活性型第X因子と活性型第V因子はプロトロンビンを活性化させ、この時プロトロンビンは切断されフラグメント1および2と呼ばれる部分と、生理活性を持つαプロトロンビンを生じる。このフラグメントはプロトロンビンフラグメントF1+2と呼ばれ、血中の増加量でプロトロンビンからトロンビンが産生された量を推定できる。トロンビンはヘパリン存在下で瞬時にアンチトロンビンIIIで不活化されるため、トロンビン自体の測定は殆ど不可能であり、トロンビン生成の証明としてF1+2を測定する。臨床的にはDICなどの凝固亢進を疑う場合や抗凝固療法の効果判定に用いる。異常値を見た場合は可溶性フィブリン、TATなどを同時に測定する。 【レムナント様リポ蛋白コレステロール】 慢性期の患者で増加する。RLP-CはカイロミクロンやVLDLがリポ蛋白リパーゼによって分解され生じる中間代謝物の総称で、トリグリセリド、アポ蛋白B、C-II、C-III、Eと正の相関がある。動脈硬化の基礎病変の一つである粥状硬化症の原因物質の一つとされているため、レムナント粒子の動態は動脈硬化性疾患の病態解析に有用とされる。臨床的には動脈硬化性疾患の危険因子として、またIII型高脂血症の簡易検査法として測定する。異常値を見た場合はリポ蛋白分画、アポ蛋白の測定を行う。 【抗リン脂質抗体】 血栓症の発生を促進するので、測定する。 抗リン脂質抗体にはループスアンチコアグラント(LA)、抗カルジオリピン抗体が含まれる。1986年に動・静脈血栓、習慣性流産、血小板減少などがあり、この抗体が陽性の症例を抗リン脂質抗体症候群とし、このような疾患での抗体測定の重要性が提唱された。臨床的には自己免疫疾患、動・静脈血栓、脳梗塞、一過性脳虚血、脊髄炎、肺梗塞、習慣性流産、子宮内胎児死亡、血小板減少などを訴える患者を見た場合に積極的に測定する。LAの存在はAPTTのようなリン脂質依存性凝固時間の延長で疑われる。 |
検体検査以外の検査計画 | 頭部CT検査、頭部MRI検査、頭部MRA検査、脳血管造影検査、頸動脈超音波検査、心電図検査、長時間心電図モニター、心超音波検査 |