疾患解説
フリガナ | チョウカンマクキョケツ |
別名 |
急性腸管膜虚血症 虚血性腸管障害 |
臓器区分 | 消化器疾患 |
英疾患名 | Mesenteric Artery Occlusion |
ICD10 | k55.1 |
疾患の概念 | 塞栓症、血栓症または循環血流量の減少により、腸管の血流が阻害された状態で、急性腹症に占める割合は1%程度であるが、診断が遅れると致死的転帰をとる。閉塞は上腸間膜動脈に高頻度に起こり、小腸に広範囲の壊死を起こす。腸管粘膜は代謝率が高いため、心拍出量の20~25%の血液供給を受ける必要があり血流低下に強い影響を受ける。虚血によって粘膜バリアが障害されると、細菌、毒素、血管作動性メディエータが放出され、結果として心筋抑制、敗血症、敗血症性ショック、多臓器不全を発症し、最終的には死に至る。腸間膜血流は静脈または動脈のいずれも阻害される可能性があり、50歳以上で最もリスクが高くなる。 |
診断の手掛 | リスクファクターを持つ50歳以上の患者が、急激に発症する重度の腹痛を訴えたら本症を疑う。発症初期には、腹痛の割りに腹部は柔らかく、腹膜刺激症状も認めない。腹痛は仙痛様に臍周囲に始まり、やがて腹部全体に広がる。突発する疼痛は、動脈塞栓症を示唆するが、診断的ではない。一方、徐々に出現する疼痛は静脈血栓症に典型的な所見である。食後に腹部不快感の既往を持つ患者は、動脈血栓症を有することがある。リスクファクターは50歳以上、冠動脈疾患、全身性粥状動脈硬化症、凝固亢進状態、血流の少ない状態などである。 |
主訴 |
腸雑音消失|Disappearance of intestinal murmur 腹痛|Abdominal pain 腹部圧痛|Abdominal tenderness |
鑑別疾患 |
絞扼性イレウス 消化管穿孔 急性膵炎|Acute Pancreatitis 冠動脈疾患|Coronary Artery Disease(CAD) 心不全|Heart Failure 心臓弁膜症 動脈硬化症|Arteriosclerosis 凝固亢進状態 憩室炎|Diverticulitis 門脈圧亢進症 腎不全 薬剤(血管収縮薬) |
スクリーニング検査 |
Alkaline Phosphatase|アルカリホスファターゼ/アルカリ性ホスファターゼ [/S] Amylase|アミラーゼ [/S] Aspartate Aminotransferase|アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ/グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ [/S] Hematocrit|ヘマトクリット/赤血球容積率 [/B] Lactate Dehydrogenase|乳酸デヒドロゲナーゼ [/S] Leukocytes|白血球数 [/B] Phosphate|無機リン [/S] Urea Nitrogen|尿素窒素 [/S] |
異常値を示す検査 |
Alkaline Phosphatase Isoenzymes|アルカリホスファターゼアイソザイム/ALPアイソザイム [/S] Fat|脂肪(糞便) [/F] I-FABP [/S] Occult Blood|潜血反応(便)/グアヤック法/o-トリジン法/ラテックス凝集法 [/F] pH|尿pH [/B] |
関連する検査の読み方 |
【腸型脂肪酸結合蛋白/I-FABP】 早期マーカーとして有用性がある。I-FABPは小腸粘膜上皮細胞に特異的に発現する蛋白で、組織の損傷時に速やかに血中に漏出するため、腸の虚血性疾患や小腸疾患の診断マーカーとして有用である。 【CK】 壊死と共に上昇するが、非特異的で後期の所見である。 【CBC】 白血球増加がしばしば見られる。 |
検体検査以外の検査計画 | 腹部単純X線検査、選択的腸間膜動脈造影検査、腹部CT検査、MRI検査、ドプラ超音波検査 |